私の魔法
ドオオオオオォン!
凄まじい音がして、閉まっていたドアが吹き飛んだ。
「デイジー、大丈夫か」
「イーライお兄様!アレンお兄様、カラバスお兄様もっ」
魔法でドアを破ったのだろうイーライお兄様のうしろに、アレンお兄様、カラバスお兄様。思わずお兄様たちに駆け寄ろうとする…と、「待ちなさい!」という言葉とともにファリカステ様が手のひらを私の方に向けて何かの呪文を唱えた。ファリカステ様の手のひらに集まった紫色の光が、私の方に飛んでくる。何かわからないが、当たったら絶対まずいやつだ。
イーライお兄様も何かの呪文を唱え、紫の光に向けて杖を振る。お兄様の杖からはエメラルドグリーンの光が飛び、紫の光とぶつかって、どちらも消え去った。イーライお兄様が「デイジーへの攻撃は重罪だ、今すぐやめろ」と低い声でファリカステ様に呼びかける。
「黙りなさいイーライ、それが王族に対する口の利き方か」
そして「ああ、今その緑の魔法を見てようやく気づいたわ」と納得したように呟いた。
「ずっと私の邪魔をしてたのはイーライ、お前だったのね。カラバスが私を愛するよう魔法をかけようとしたのに、魔法で防いでいたのでしょう」
「その通り」
「小賢しい真似を…」
ファリカステ様の怒りは私ではなくイーライお兄様に向き始めたのか、お兄様に向かって目にも止まらぬ速さで攻撃を繰り出す。お兄様は避けたり防いだり、攻撃をくらってはいないが防戦一方だ。王族相手だから遠慮しているのか、それとももしかしてお兄様は攻撃魔法が使えないのか…
「デイジー、こっちへ!先に安全な場所へ」とアレンお兄様とカラバスお兄様が私を開いているドアへ誘導する。しかし「デイジーもカラバスも逃さないわよ」とファリカステ様が手をこちらに向けると、壊れたはずのドアがしっかり直されて私たちの行く手を塞いだ。
その隙をついてイーライお兄様がファリカステ様に杖を向け、何か呪文を唱えた。魔法で捕縛したのだ。動けなくなり悪態をつくファリカステ様に近づき、大きな紫の宝石が付いたネックレスを外そうとする…が、外れない。ここへきて、イーライお兄様がまさかのド不器用なのかと思ったが違うらしい。
「このネックレスがファリカステ様の魔力の源…というか、ファリカステ様を操っているものだ。並の魔法では外せない」
「操ってる!?」
「そうだ。近ごろ急にファリカステ様の性格が変わり、強い魔法が使えるようになったのは、このネックレスのせいだ」
一息ついて気がつくと、ファリカステ様の館の中には、魔術課のメンバーと思しき魔法使いたちがやってきている。魔法が使われていることや騒ぎに気づいて出動したのだろう。捕縛係を別の魔法使いに代わってもらったイーライお兄様を囲んで、みんなで何か相談している。
「見る限り、相当古い呪いだな。かなり腕のいい解魔師でないと外せないだろう」
「しかし昨年ロブロス殿が亡くなってから、我が国に解魔師はいないぞ」
「解魔師が見つかるまで、交代でファリカステ様に捕縛魔法をかけ続けるとなると、かなり労力をとられるな…国王陛下の許可を得て、魔法牢に入っていただくか…」
「しかし姉君だぞ?許可が出るかな?」
「くそ、ロブロス殿さえいれば…」
この国に一人もいないとは、どうやら解魔師というのは相当なレアキャラらしい。でも…何故だか私…
私の中の何かが「できる」と囁いている。
「イーライお兄様、私、外せると思います」
「は?何を言ってる!?」
「お兄様、私には魔力があると言いましたよね。何かのきっかけがあれば魔法が使えるようになるかもしれないと。私、できます。わかるんです。私にやらせてください!」
イーライお兄様が私の両肩に手を置いた。グレーの瞳に真剣な優しさが見て取れる。
「デイジー、これから大切なことを言うからよく考えろ」




