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靴屋の娘と三人のお兄様  作者: こじまき
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お兄様たちの婚約事情

「兄上たち、照れてる!」とからかうようなカラバスお兄様。


照れてる?これが?どこが?


よくよく見ると、アレンお兄様もイーライお兄様も耳が赤くなっている。なんだか可愛いと思ってしまい、「あはは」と笑うと、途端にアレンお兄様の声が飛んできた。


「デイジー、淑女はそんな笑い方はしない。明日からは、伯爵令嬢の立ち居振る舞いや話し方を身につける訓練をみっちり受けるように。ジェニンやジヴァ、執事のレオニが指南役だが、私も休みの日には様子を確認するので、そのつもりで」

「はい…」


耳はまだ赤いけれど苦虫噛み潰し顔のままなので、とても怖い。頷くしかない。


カラバスお兄様は「ダンス指導は僕に任せてね!僕ダンス上手いんだよ!」と楽しそうだ。


イーライお兄様の耳は、普段の色に戻っている。


「3ヶ月後にドーバーパム侯爵邸でアスターベル嬢の17歳の誕生パーティーがあり、我々も招待されている。デイジーはそこで社交界デビューを予定しているので、間に合うように励むように。私邸でのパーティーではあるが、アスターベル嬢は王太子妃候補と目される方だから、決して失礼のないように準備しなければ」

「はっ!?…はい」


3ヶ月後には王太子妃候補者のパーティーで実戦だと言われて、心は拒否反応を起こしたけれど、有無を言わせぬアレンお兄様の圧に、従うしかなかった。


「アスターベル嬢のパーティーかぁ、そういえば僕、ステラリリー嬢にエスコート頼まれてたな。デイジーと一緒に行きたいけど、行けないや」

「構わない。デイジーのエスコートは私が担当する」


カラバスお兄様とアレンお兄様で勝手に決めてしまい、私はアレンお兄様にエスコートされることになってしまった。イーライお兄様は知らんぷりなので、多分パーティーには来ないのだろう。そんなタイプな気がする。それにしても、カラバスお兄様なら多少失敗しても「大丈夫大丈夫」と言ってくれそうだけど、アレンお兄様は妥協を許さないタイプっぽいから…死ぬ気で練習せねば。


ところで気になるのは…


「カラバスお兄様。ステラリリー様という方は、お兄様の婚約者かなにかですか?」


するとカラバスお兄様は「あはは、違う違う」と笑う。婚約者がいない独身女性のエスコートはたいてい親族の男性がするのだが、オウルシャム伯爵令嬢ステラリリー様はお父様もお兄様も長期の外国滞在中なのだそうだ。困ったステラリリー様が、肖像画を依頼した縁で知り合ったカラバスお兄様にエスコートを頼んだらしい。


「それにね」とカラバスお兄様は続ける。


「ホークボロー三兄弟は、イケメンで引く手数多なのに、なかなか婚約者が決まらないって評判なんだよ」

「え、全員婚約者いないんですか?」


私が驚くのも当然だと思ってほしい。この国では貴族でも平民でも、男性は20歳、女性は18歳くらいで婚約するのが普通なのだ。貴族や王族の場合は、もっと早くに婚約者が決まっていることも多い。


「お兄様たちこんなに格好いいのに、どうしてですか?」

「三人とも、結婚したいって思える相手に出会ってないってことじゃない?父上も、無理矢理結婚させようってタイプじゃないし。うちは自由なの。僕が画家やってることからもわかるようにね」


「ま、僕は兄上たちが婚約するのを待ってるっていうのもあるんだけどね。末っ子だし」とカラバスお兄様が付け足すと、アレンお兄様が「人のせいにするな。お前は誰にでもいい顔をして、真剣に一人と付き合う気がないだけだろう」と睨む。


「僕より兄上はどうなの。内々にいろんなご令嬢のお家から打診があるのに、全部断ってるじゃん。パーティーにもあんまり行きたがらないし。せめてパーティーで誰かとダンスでもしなきゃ、出会える相手にも出会えないよ」


図星をさされたのかアレンお兄様はムッとして黙り込んだけれど、聞き役に徹していたお父様は「アイリスとデイジーが来てから、食事が賑やかで楽しいね」とニコニコしていた。

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