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靴屋の娘と三人のお兄様  作者: こじまき
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伯爵令嬢になりました

「奥様、お嬢様、お待ちしておりました」


立派な玄関の前にずらりと使用人が並び、私と母を出迎える。今日からここ、王都セトにあるホークボロー伯爵邸が私たちの家になるのだ。


「アイリス!僕のハニー!それにデイジー!よく来たね、待ってたよ!」と見るからに人の良い笑顔で出迎えてくれたのが、母の再婚相手であるホークボロー伯爵。


ホークボロー伯爵領の中心都市パルバラで、亡夫から受け継いだ靴屋を切り盛りしながら、一人娘である私を育てていた母は、お客として靴屋を訪れた伯爵様と出会い、愛を育み、再婚したのだ。


伯爵様と再婚するなんて予想外すぎたけど、一緒にいる時の二人は本当に幸せそうだし、伯爵様は私にもとても良くしてくださるので、私が母の再婚に反対する理由はひとつもなかった。住み慣れたパルバラを離れ、伯爵様が普段生活している王都に引っ越すことになったとしても。


内装もこれまた立派なお屋敷の中に通されると「早速、息子たちに紹介してもいいかな。私の大切なアイリスを早く紹介したくて、ウズウズしていたんだよ」と伯爵様。あ、アイリスは母の名前です。


うちの靴屋が丸ごと十個くらい入りそうな広い広いリビングには、見たこともない高そうな置物や壺が並べられている。触って壊さないように気をつけないと…それに"あの二人"にもよく言い聞かせておかないと…


リビングには若い男性が三人、私たちを待っていた。


「紹介するね!長男のアレン、24歳だよ」


伯爵様と同じ金髪碧眼を持つ男性が会釈して「アレンです。王都治安部隊の副隊長をしています」と挨拶する。王都治安部隊は軍の部隊のひとつで、王都の犯罪を取り締まるお仕事だと伯爵様が補足してくれた。髪と目の色は同じだけど伯爵様とは違うクールな顔立ちで、厳しく怖そうな印象だ。怒ったらめっちゃ怖そう…怒らせないようにしよう。


「こっちが次男のイーライだよ。彼は21歳」


紫の髪にグレーの目をしたミステリアスな男性が無言で頭を下げる。この髪と目は母譲りなのかな?顔立ちはアレン様とよく似ている。そして、言われなくても、身につけているローブで職業は一目瞭然…イーライ様は魔法使いだ。「王宮の魔術課に所属しているんだよ」と伯爵様。私のほうをじっと見ているが、無表情なので、何を考えているか全然わからない。アレン様とは違う感じで怖い。とりあえず怒らせないようにしよう。


「そして、三男のカラバス20歳」


少し長めの金髪の男性が「よろしくね!僕は画家をしていて、専門は王族や貴族の肖像画だよ!きれいなお母様と可愛い妹ができて嬉しいよ!」とウインクした。目も伯爵様やアレン様と同じ碧眼だ。顔立ちは伯爵様に似て、大きな目に上がった口角が男性にしては可愛らしい。フレンドリーだけど見るからにチャラそう。


タイプは違うけれど三人揃ってイケメンの兄弟。しかも身なりも良くて、キラキラ度数がすごい。栗色の髪に茶色の目、パルバラでは「靴屋の看板娘」だったとはいえ、見た目も地味で平凡な私が、このキラキラ三兄弟の妹になるなんて…


キラキラオーラに圧倒されながら、母に続いて「アイリスの娘、デイジーです。16歳です。今日からよろしくお願いします」と挨拶する。


と、カラバス様が「16歳なの!?もっと年下かと思ったよ。普段あんまりお化粧はしないほう?興味があればお化粧とかドレスアップ、僕が指南してあげる!職業柄、王族貴族の最新流行には敏感なんだ」とまたウインクする。


おぼこくてすいません、田舎の町娘なもんで…と思いながら「ありがとうございますカラバス様」と返事すると「やだな、お兄様って呼んで」と軽く返される。ほんとこの人フレンドリーだなぁ。ありがたいけど。


「はいカラバスお兄様」

「やーん、うれしー!」


「ところで…」とそれまで一言も喋らなかったイーライ様が口を開いた。イーライ様が喋るのがよほど珍しいのか、伯爵様、アレン様、カラバス様も驚いた顔をしている。


「妹殿、肩に乗っている"それ"は何だ?」

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