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Oh! My 将軍!  作者: スッパみかん
9/14

姉と弟#3(後編)

前回に引き続き、エナの弟、隼人を一人前の漢にしてやる!と意気込み、そのためにはまず邪魔者を一掃せねば、と張り切るゼグンド将軍のお話。森沖高の不良グループと対面し、隼人の自由を勝ち取るために頑張る、健気な姉の姿を演じ――――るわけではなかった!どこまで行ってもマイペースな将軍に振り回される哀れな人々のお話でもあります。少しでも楽しんで頂けたら幸いです!




 「は?」


 ブッブー、と着信を報せる鈍い振動音に気づいて、尻ポケットからスマホを抜き取り、何気なく画面に指先を滑らせた少年、安藤茂は思わず冒頭の、「は?」という、間抜けな声を上げてしまった。


 送信元は、今現在、安藤ら森沖高校のグループが、舎弟と見なしている三名の中学生のうちの一人からだった。


 さらにその三名がイジメている、霧島隼人という大人しい少年からは、小遣いやら漫画などを取り上げているので、バイトせずとも、今現在足繁く通っているレトロゲーム専門のゲーセンカフェ、「クラブ・ミスト」で遊ぶには十分な小金が手に入る。


 今日も今日とて、自分達が遊ぶ店まで来いと呼んでいたため、LINEが入っても驚くことは何もない。


 そのはずだった。


 だが、この時「柳瀬」という少年が寄越したメッセージには、思わず二度見してしまった。


 ――――隼人を連れてきました。先に「根城」で待ってます。


 この「根城」とは、「クラブ・ミスト」の隣の敷地にある、何年も前につぶれ、次のテナントが見つからないまま何年も放置されていた、小さな喫茶店跡の事である。


 そこは、不動産業を営んでいる安藤の叔父が所有している土地だ。

 甥っ子に甘い叔父から、しばらく好きに使っていてもよい、と言われたのをいいことに、安藤は同じ年ごろの少年たちと連れ立って「秘密基地」――――そう呼ぶのは恥ずかしかったので「根城」と呼び――――放課後は毎日のように屯って、タバコを吸ったり、ダラダラ雑談をするのに使っていた。


 安藤は、待てど暮らせど順番が回ってきそうにもない、レンタルゲームコーナーの長蛇の列をチラリと見て、ため息をついた。


 時間は18時45分。19時にクラブ・ミストまで来い、と指示を出したはずだったが。これはどうしたことだろう?


 いつもなら、自分達が飼っているこの舎弟、中学生の少年らは決して混雑した「クラブ・ミスト」店内に入るどころか、居心地悪そうにキョロキョロしながら、店外の道端の隅っこに並んで立っているはずだ。


 それが、今日は


 「根城」で待ってます、と来た。


 何かおかしくないか?この短いメッセージは、普段下ばかり向いている暗い柳瀬の印象とそぐわず、違和感がある。


 「おい、シゲル。どうした?」


 どうせレンタルプレイコーナーは順番が回ってこないから、と早々と他の客のプレイ画面を観るため、ソフトドリンク片手にブラブラしていた友人の一人、三栖良一が近づいて来て、ヒョイと安藤の手元を覗き見た。


 アフリカ系アメリカ人の血を引いているこの三栖良一という少年はとにかく体格がよく、幼い頃から退役軍人だという祖父からミリタリー式の格闘技を習っており、そのおかげで喧嘩で負けたことがない。


 そんな三栖を差し置いて、森沖高校随一の不良グループのボス的ポジションにいるのは、安藤だったが、もちろんそれは実力によるものではない。


 三栖は性格的に多少気難しく、口数も多い方ではない。

 安藤は高校に入ってすぐ、高校生らしからぬ立派な体格で誰からも一目置かれる三栖に目を付け、言葉巧みにすり寄り、決して敵対しないという姿勢を貫いている。


 三栖の風体と、中学時代から轟かせてきた喧嘩の強さは、すぐに森高内に広まり、高校デビューしたての、にわか不良達が勝手に周りに集まるようになり、あっと言う間にグループが出来上がってしまった。


 もちろん、三栖は何もしていない。

 いつも三栖に張り付いている安藤が、裏で上手く立ち回り、三栖は自分の子分なのだ、と集まって来る舎弟志願者たちに触れ回り、三栖は俺のボディガードなのだ、とすらうそぶいてみせたのである。


 三栖とてバカではない。そういう経緯を、取り巻きから告げ口されることもあったが、別段腹を立てるわけでも、安藤を諫めることもしなかった。むしろ、その方が楽だ、と考え安藤の好きなようにさせている。


 安堵は小賢しく、計算高いぶん、身の程をわきまえており、いち集団のボスとしての地位を確立してからは、決して無茶をせず、無闇に他校生と関わって、勢力を伸ばそうという野心は抱かなかったので、周りの大人からも「比較的無害な不良グループ」として認識されているくらいだった。


 三栖良一は、ぬるくなってしまったペプシの最後の一口を飲み込んでから、アメリカ人の母親譲りの大きな目をギョロリと動かし、安藤のスマホ画面に映された、LINEの文字を読み取るなり、器用に片眉を持ち上げた。


 「へー、柳瀬のやつ、どうしたんだろう?いつも、早く帰りたいですって顔して、貝谷達の後ろに控えている感じだったのに。


 今日はやけに強気じゃんか。自ら、「根城」に入るなんて」


 「そうなんだよー」


 言いながら、安藤はへらりと笑って、スマホをポケットにしまった。

 森沖高校内では、いっぱしの不良集団のボスとして、それなりに威張っている安藤だったが。

 怒るかもしれない、という予想を裏切って、安藤はただ不思議そうにしているだけだ。


 リーダーは俺だ、と主張したがるだけあって、すぐに「生意気な!」とカッとしたりしない、妙な落ち着きがある。

 こいつのこういうところは、見習わなくちゃな、と三栖は密かに安藤を評価していた。


 「うーん、ちょっとヤケになってるかもしれないな。10万なんて大金、中坊がそうそう集めてこれるわけないし。俺も、ちょっと吹っ掛けすぎたな~って思ってたんだよ」


 「おいおい・・・そんな事やってたんかよ。無理ゲーすぎだろ」


 「だな。ちょぃと2,3発小突いて、許してやりゃいいだろ」


 「あまり無茶させっと、親とかに相談されるし。家のカーチャンこえーんだから、かんべんしてくれよ」


 と三栖は逞しい肩をヒョイと竦めて目を回す。


 いくら身体を鍛えて、喧嘩に自信があっても、己の母親には頭が上がらないらしい。どこの国でも母は強い、ということか。

 

 安藤は苦笑しながら、店の内外に散っているメンバーに、「根城」に移動する事を伝えるためにスマホ画面に再び指を滑らせた。


 そろそろ仲間を集めて引き上げるか。「集合:」と打ちながらも、チラリと周りを見渡し、近くに三栖以外の仲間の姿が見えないものか、探そうとしたが、すぐに諦めた。


 様々なゲーム機が所せましと並び、ピコピコ、ポチポチ、という操作音と単調な音楽が大音量で流れる店内は、相変わらず混雑しており、バラバラに散っていた仲間の姿は、人ごみに紛れて学生服の裾すら見つけられそうもなかったのだ。


 LINEで呼びかけてみても、ゲーム画面に気を取られ、スマホを鞄に突っ込んだまま、なかなか気が付かない奴もいるだろう。


 「俺らだけで先に行こう。ガキらから言い訳を聞いて、適当に注意するだけだろ?万が一にも、逆らってくるような度胸なんてないだろうし」


 面倒な事が嫌いな三栖は、欠伸をしながら、自分はスマホを取り出そうともしないで、すたすたと店の外に向かって歩き始めてしまう。


 187センチもある長身に、服の上からもわかるほど筋骨逞しく、遠目からもがっしりした顎とエラの張った顔をしているし、チリチリの毛をドレッドヘアスタイルにしているので、その姿はなかなかに迫力がある。


 新たに店内に入って来た、男性客二名も、そんな三栖とすれ違う時には、慌てて身体をよじって道を開けるくらいだった。


 見た目ほど怖いやつでも、悪い奴でもないんだけどな。


 悲しい事に、それを知っているのは、大人達から「プチグレ集団・脅威度判定D」と密かに認定されている、安藤ら小悪党と、三栖良一の家族だけだった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 「お待たせしました!サイア、これでよかったでしょうか?」


 緊張のあまり、若干裏返った声だったが、隼人は姉のエナに向かって一礼してから、ぷるぷる震える手で、恭しく茶色い缶ジュースを差し出した。

 もちろん、エナ(ゼグンド将軍)はそんな事を命じたりしていない。

 なんとかして穏便に一日を終えたいと考えているのだろう、どこか必死の形相で、自ら「飲み物でも」と切り出し、左隣のビル前の自動販売機までダッシュし、飲み物を抱えて戻って来たところだった。


 ――――だから、「サイア」ってなんだよ?


 と貝谷らはツッコミを入れたくなったが、安藤らのたまり場であるこの廃屋に堂々と乗り込んだあげく、「上座」である、崩れたカウンターテーブルの残骸の上にあぐらをかいているエナをちらりと見て、サッと目を逸らした。


 隼人が買って来たのは、中学生のチョイスにしては渋い、ブラック珈琲(缶タイプ)だ。


 いつだったか、姉のエナは甘党だ、と隼人から聞かされていた柳瀬はコッソリ、「砂糖が入ってない!こんなものが飲めるか!」とエナが怒り出すのではないか、とひやひやしたが、ありがたい事にそうはならなかった。


 人格変われば(?)味覚も変わるのだろうか、それとも甘党といえど、コーヒーだけは砂糖ぬきがいい、という主義なのか、エナはえらそうに腕を組み、


 「うむ、苦しゅうない」などと、女子高生にあるまじき妙な口調ではあったが、一応隼人を労い、こっくり頷いてそれを隼人から受け取った。


 つい今朝まで、隼人をいびり倒していた自分達が言うのもナンだが。


 姉に頭が上がらず、何か少しでも間違えば即座に張っ倒される隼人を見ていると、自分達がいかに幼く、次元の低い非行に走っていたのかと思い知らされ、恥ずかしくなってくる。


 本物の「ワル」とはああして、群れることなく、たった一人で堂々とふんぞり返り、「躾」と称して肉親すらをも下僕にして、わけのわからない軍人式ルールに則り、力に物言わせてマウントを取るものなのか。


 それをやっているのが、ぱっと見た感じ、可愛い女の子だというのが非現実さに拍車をかけて不気味だった。


 胸の中でコッソリ「隼人、強く生きろよ・・・」だの「頑張って少しでも長く注意を引きつけてくれ」だの願いつつ、貝谷をはじめとする少年たちはジリジリと後ろへ下がって、触るだけで灰色の塗料カスがボロボロ落ちてくる、汚い壁に背中をこすりつけてしまった。


 そうこうする間にも(実際には5分と経っていなかったのだが)、鍵の壊れたアコーディオン式の引き戸が、ガシャンと音を立てて大きく開かれた。


 歪んだ外枠の隅っこに、20センチ大の蜘蛛の巣が張っており、虫嫌いな安藤は触るのが嫌なので、手で払わず、いつもヒョイと頭を斜めに傾げて避けようとする。


 実際には、蜘蛛の巣がある位置には、頭ひとつぶん届かず、後から入って来る三栖の頭にひっかかり、さらにその後ろについて入って来る、気の利く仲間が慌てて、それを取り払う。


 「おぅ、お前ら。珍しいじゃんか、俺達が招く前にここに入るなんて――――」


 結局店内にいたメンバーは2人しか集まらなかったが、店の外に出てコンビニに行っていた仲間三人が加わり、ゾロゾロと自分に続いて薄暗い廃屋に入って来たのを確認してから、安藤はゆったりと辺りを見回し、ぴたりと口を閉ざしてしまった。


 いつも派手な色の服を着ている貝谷の姿を無意識に探してしまったが、この時16畳ほどのこの廃屋内で一番目を引いたのは、貝谷の服や、髪などではなかった。


 よりにもよって、安藤がいつも「上座」と考えて座っている、斜めに崩れたカウンター台の一角にどっしり腰を下ろしている先客がいたのだ。


 はぁ?と、背後からも声があがったが、安藤はぱちくりと瞬きし、戸惑った。


 そのすぐ横に立った三栖も、蜘蛛の糸に絡まりべとべとになったドレッドヘアのひと房を、忌々しそうにいじくっていたを止め、ぽかんと口を開けてしまった。


 先客が、安藤達にとっては全くの不審者だったからだ。もちろん、これまで一度たりとも招いた覚えもないので、侵入者と呼んでもいいだろうか。


 半ば崩れたカウンター台にあぐらをかいて座っているその「招かざる客」はどう見ても同年代か、それ以下の少女だ。


 くりっとした大きな黒い瞳に、柔らかそうな黒い髪をポニーテールに束ねた、その顔は大変可愛らしい。


 安藤はもちろん、少女が着ている制服に見覚えがある。秋羽高校――――略して秋高のものだ。


 一見ありふれたブレザー制服だが、スカートに特徴がある。プリーツスカートのヒダが少なく、すっきりしたシルエットに、白いラインが二本入っているのが特徴だ。


 男子背生徒の方は、タイに同様のラインが入っていたはずだ。


 底辺というランクづけは免れているが、秋羽高等学校は県内では比較的入りやすい高校なので、この高校を受験し、不合格でした、という事実が発覚すると、憐みの目を向けられることは間違いない。


 たまたまだ!そう、たまたま、受験の日に体調が悪かっただけで!うん、後ろにいるコイツらが滑り止め感覚で受験して、合格してるからといって、何も恥じることはない!不可抗力だし!


 安藤は、その制服に見覚えはあっても、名前までは知らない、という設定で通そう、と心に決めた。


 そんな事に気を取られていたので、安藤はなかなか気づけなかったのだが。


 受験の失敗のひとつやふたつではビクともしない三栖や、モテはしないが流行に敏感だったり、女の子のスカートが「偶然」目の前でまくれるという、「神風現象」が起きますように、と毎日祈っている仲間達は、すぐに目の前の少女がどこかおかしい、ということに気が付いた。


 この頃の初秋はまだまだ暑くて、皆学ランを脱いだり、シャツの袖をまくったりしているくらいだというのに、どうしてこの少女は冬用のジャージをスカートの下に穿いているのだろうか?


 三栖たちは首を傾げた。


 部活で忙しい、というクラスメイトの女子が運動着のまま学校を出るのは、何度も目撃したことがあったので、ジャージそのものに対しては「ダサい」とケチをつける事はしない。なんせ自分たちも、体育の時間等で着用する義務があるのだから。


 ただ、女子のジャージ姿には、もう少しチラ見え要素、萌え要素があればなぁ、とコッソリ思っているだけである。


 それだって、この季節は暑いから、「重ね着」なんて誰もしない。せいぜいが運動着のまま帰るか、ハーフパンツとシャツといったラフな組み合わせで済ませている。


 だが、異様だと思ったのは、何もその奇抜なファッションセンスだけではない。


 少女はまるで男のように足を広げて胡坐をかき、盃か何かを受け取るときのように、近くにいた隼人から受け取ったばかりの缶コーヒーを上から掴んでいる。


 ――――何か、変だ。


 三栖は、何故かこの奇妙な少女を見るうちに、胸がドキドキとうるさく脈打ちだして、知らず知らずのうちに呼吸が浅くなっていくのを感じて、何度も唾を飲み込んだ。


 もちろん、ボーイミーツガール的なトキメキではない――――どちらかと言えば、嫌な予感に近かった。


 不良である彼らが普段見慣れ、たまに一緒に遊ぶ女の子たちの中にも、今目の前にいる少女と同じように、男のように行儀悪い座り方をしたり、乱暴な口を利く子もいるのだが、何かが決定的に違う。


 まさか、女装した男とか?

 男の娘、という単語を思い浮かべ、思わず少女の下半身を凝視しそうになったが、ありがたい事に沈黙を破ったのは、当の少女だった。


 「見ての通り、邪魔しておる。その方らは、ここにいる小僧どもが言っている通り、アンドウとミスミ、以下その仲間、で間違いないかな?」


 「は!?」


 思わず、また間抜けな声があがった。


 誰が、以下その仲間、だよ!?勝手に省略するな!と安藤らの後ろに控えていた5人の少年たちが色めき立ったが、安藤と三栖は思わずお互いの顔を見合わせ、

 「聞き間違いかな?今、このオンナ、俺達のことを呼び捨てにしたか?」

 「いや、俺も聞こえた。てか、なんか喋り方おかしくね?新手の中二病か?」


 と、ヒソヒソやってしまった。


 すると、おほん、とわざとらしい咳払いと共に、少女の口から、見た目とは裏腹に、妙にドスの効いた声が響いた。


 「聞こえなかったのか?お前達は、アンドウとミスミ、というチンピラで間違いないな?」


 ――――今度はガン無視ですか!?


 名前を聞かれもせず、眼中にありません、といったような徹底した少女の塩対応に、思わず涙目になってしまう五人だったが、エナの背後で身を縮め、固唾を飲んで事の成り行きを見守っていた隼人と貝谷らは、別の理由で涙目になっていた。


 少し前までは、金をむしり取られてきた恨みから、酷い目に遭わされればいい、とさえ思っていた隼人だったが、ハラハラしながら安藤を見つめてしまった。


 ――――はやく・・・!早く答えるんだ!即答できないと殺されるぞ!


 安藤は何とかショックから立ち直り、腹に力を籠めて一歩前に出た。


 「な、なんなんだよ、お前!?確かに、俺は安藤だけど、お前こそ誰だよ!?」


 即答に失敗はしたが、一息に全文を言い切ったおかげで、かろうじて死刑判決を免れたらしい。

 ピリピリした危険な空気を醸し出しはじめながらも、エナ(ゼグンド将軍)は安藤に襲いかかることはせず、ゆったりと組んでいた腕を解き、おもむろにため息をついた。


 「うむ。お前らごとき三下に名乗る名などない、と言いたいところだが、立場を明確にするためにも一応名乗っておこうか。


 俺は、霧島エナという。ここにいるハヤトの姉である。ここまで言えば、大体の察しはつくであろう」


 厳めしい口調に気を取られそうになるも、その言葉の意味を理解すると同時に、すっと半眼になって自分達を見据えた少女の目つきに、思わず安藤も三栖も息を飲んだ。


 反射的に、エナの傍らで、どういうわけかピシッと背筋を伸ばしたまま、青い顔をして震えている隼人に目がいくと、ますます訳が分からなくなる。

 保護者同伴でやって来たのなら、もう少し強気になりそうなものなのに、隼人ときたら、まるで強盗に脅されて連行されている人質のような顔をしているのだ。


 家族にチクったな!と後で報復されることを恐れているのだろうか?それとも、家族を巻き込んでしまったことの、後ろめたさを感じているのだろうか?


 それにしては、怯え過ぎじゃないだろうか。ちらりと貝谷を見ると、何故かサッと目を逸らされた。

 貝谷も貝谷で、痛そうに腹を抱えているし、よく見れば衣服のあちこちに汚れが目立つし、いつもはキッチリ整えられた金髪が、遠目からも乱れている。


 「え、ええと、な、何か誤解してないかな?そこにいる隼人――――君や、貝谷君らとは、ただのゲーム仲間で」


 「そ、そうそう!隣のゲーセンカフェで知り合って、時々一緒に遊んでいるだけだって」


 状況が掴めず、ポカンとしてしまった安藤と三栖だったが、「隼人の姉」と名乗ったエナの言葉を何度も反芻するうち、「言い訳しなくては」と思いついた。


 対し、エナは相変わらずマイペースに、「ふぅん」と小さく鼻を鳴らし、持っていた缶コーヒーを持ち上げ、次の瞬間、さらなる衝撃が二名を、否、その場にいた全ての者を襲った。


 エナはなんと、片手で上から飲料缶を掴み取り、その手の人差し指をクイとプルタブの上らへんに乗せ――――、ブスリと突き刺したではないか。


 元々、缶ジュースのてっぺん部分は、和紙のように柔らかく、指先で突くだけで穴を開ける事が可能だ、と錯覚してしまいそうなほど、あっさりと。


 一般的な缶ジュースの開け方ってなんだっけ?プルタブを指先の爪なんかでつまんで、引っ張り、あらかじめ切れ目のはいった、トップパーツの一番薄い部分を持ち上げるはずだ。


 だが今しがた、エナが指一本無造作に突き刺して風穴を空けた箇所は明らかに、プルタブを引く箇所とは真逆だ。


 しかも、障子か何か、柔らかいものを破る時のように、少しの抵抗もなく、アルミを深々と突き破り、すっと引き抜いた白く細い指には、わずかな引っ掻き傷すら出来ていない。


 それだけでも異常な光景だというのに、目玉が落っこちそうなほど目を見開いて、自分を見つめる男達の目線をも歯牙にもかけず、エナは自分の指で作ったばかりのその穴に口をつけ、ごっきゅごっきゅと、白い喉を見せつけるようにのけぞらせ、豪快な仕草でそれを飲みだしたのだ。


 嘘だろう?何かのトリックか?目の錯覚か!?


 混乱した少年達が思わずといったように、目を擦ったり、パカッと口を開けたまま、ボトボトと肩に担いでいたバッグやコンビニの袋を落とした。


 もちろん、パニックに陥っているのは安藤だけではない。エナの傍で、大人しく――――というよりこれから起きるであろう騒ぎに巻き込まれたくない一心で身を縮めて、必死に息すら殺して事の成り行きを見守っていた、隼人、貝谷、立木、柳瀬らは今にも失神しそうなほど顔色を失っていた。


 そしてもう一人、誰一人としてその存在に気づくこともない人物が、エナ(ゼグンド将軍)の中から見守っており、こちらはイライラと歯噛みしていた。


 ――――エナの身体にこんな力はなかった。

 宿ったゼグンド将軍の魂の力が桁違いに大きいせいで、エナの肉体の限界に応じて小さくなるどころか、逆に支配し、肉体の隅々にまで行き渡って、尋常じゃない怪力まで与えているんだわ。


 だけど、今それがわかってもどうしようもない!魂と肉体が離れている間でないと、修正は効かない。メィレン様達だって、混乱しているはずよ。何しろ、世界を跨いだ入れ替わりは、これが初めての事だし、前例がない以上、失敗くらい――――いや、待って。


 はた、とゼグンド将軍の魂がエナの肉体に与えている、驚くべき強化数値を計算し、焦りも顕わに状況を分析していたジェマは、ハタと恐ろしい事に気づいてしまった。


 ――――そうだ、前例がないんだ。必ず上手くいくわけではない、必ず成功するという保証はない。現に今、私だってこのオッサンを制御するどころか、翻弄されっぱなしじゃないの!?

 こんなんで、本当に元に戻るまで無事でいられるの?私、この任務に失敗するんじゃないの?


 勝気で少々気位の高いジェマは、この時珍しく不安を覚えて束の間、自分がどうしてエナの身体の中にいるのか、という事さえ忘れそうになったのだが。


 次の瞬間、すぐ隣にいるゼグンド将軍がエナの身体を使って、飲み干したばかりの缶を、ぐしゃっと握り潰した事によって、ハッと現実に引き戻された。


 ――――ふん、失敗などするものか。この俺が一緒なのだ!俺はなんとしても、故郷に帰り、困窮する人々を守るために、働かねばならぬのだ!


 ジェマよ、お前は一人でこの問題にあたっているのではない、お前の敵は俺の敵。不可抗力とはいえ、今や我らは一心同体なのだ!


 どうやら一つの身体に共存しているうちに、ジェマの考えている事も、ある程度はゼグンド将軍にも伝わるようになったようだ。

 不安を感じ取るやいな、ゼグンド将軍は心の中で、ジェマにだけ聞こえる声で力強く励まし、鼓舞した。


 大戦時代にその名を大陸全土に轟かせた大将軍ディナダン・カル・ゼグンドは、肉体を離れ、自分より一回りも二回りも小さい女の子、エナの身体に入ってもなお、希代の英雄なのだった。


 ――――ゼグンド将軍・・・!


 ゼグンド将軍のことを「座学開始3分で居眠りするダメオヤジ」だの「脳筋バカ」だのと、内心さんざんコケにし、罵ってきたはずのジェマでさえ、つい心動かされ、じーんときてしまって、数秒後には我に返って、思い切り後悔した。


 エナの目を通し、慌てて現実世界に意識を向けてみれば、そこでは既に阿鼻叫喚地獄ショーが始まろうとしていたのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 少女の白い手が、飲み終えた缶をぐしゃっと握り潰したところから、止まっていたかのように見えた時が動き出した。


 ふぅ、と一息つき、ぐいと乱暴に口元を手の甲で拭った少女――――ゼグンド将軍は、ヒョイと崩れかけたカウンターから滑り降りた。


 腰を伸ばし、足をそろえ、音も立てずに滑らかな仕草で埃っぽい床に降り立った少女のその動作を見ただけで、三栖は思わず一歩後ろへ下がってしまい、背後から首を伸ばしてエナを見つめていた仲間にぶつかってしまった。


 「さて、御託を並べるのは、その辺にしてもらおうか。俺は忙しいのだ。早く家に帰って、部下――――もとい、弟を心身共に鍛え上げるため諸々の準備をしなくてはならないのだ。


 そろそろこちらの言い分を述べる番だ」


 ――――ん?てっきり、いきなり殴りかかるのかと思ったけど。意外と真面目に話し合おうとしているのかしら?


 と、ジェマがエナの意識の端っこから、興味津々の顔つきになってジリジリと意識を前方に傾け、ゼグンド将軍が何をするつもりなのか見守ろうとした、その瞬間、エナはつかつかと歩き出した。


 ゆったりと両腕をぶらつかせながら、これから買い物にでも行く、というようにリラックスした仕草だったので、安藤も三栖も警戒するのが遅れた。

 一方、エナ(しつこいようだが、ゼグンド将軍である)の狂暴性を嫌という程思い知らされたばかりの、隼人や貝谷達は、「もう見てられない!」とばかりにぎゅっと目をつぶって咄嗟に顔を背けてしまった。


 何も知らない安藤は、エナが近づくにつれ、その体格が自分達よりもずっと小さく、弱そうだ、と思い、つい先ほどアルミ缶に指一本で穴を開けたり、軽々と握りつぶした事などなかったかのように、安心すらしはじめていた。


 それに対し、三栖はといえば、見た目は小さいが、無表情のままのエナが近づくにつれ、全身から嫌な汗が吹き出し、金縛りに遭ったかのようにそこから動けなくなった。


 幼い頃から元軍人の祖父に鍛えられ、荒んでいた中学時代には毎日のように喧嘩に明け暮れていた経験がある分だけ、三栖には目の前の少女が、見た目通りのか弱い女ではない、という事がわかってしまった。


 ――――真っ向勝負を挑んでいい相手ではない。

 そう判断するまでに、少し時間がかかった。実際には1秒以下での思考だったが、「そんなはずはない」という常識に囚われた分だけ、防衛本能が働くのを妨げ、致命的な遅れを招いてしまった。


 「その1。弟が世話になっていたそうだな」


 安藤の手前三歩まで来ると、少女はそう言い捨てるなり、片足を僅かに引き、ほんの少しだけ頭を下げたかのように見えた。丁度、映画で見かけるような、気取った仕草でスカートの端を摘まんでお辞儀をする――――そう見えた。


 ドスッ!!と次の瞬間、エナが後ろへ引いた足が、目にもとまらぬ速さで安藤の腹めがけて突き刺さった。


 「ふぐっ!!??」


 体を「く」の字に曲げ、安藤の口からくぐもった叫びがあがり、その身体前へと倒れようとする寸前に、エナの手が伸びて、咄嗟にその襟首を乱暴に掴んで、一瞬だけ引き寄せた。


 「その2。この国の法がどうであれ、ここで今、お前達を裁くのはこの俺だ!」と吐き捨てるなり、ブンと音を立てるほど、勢いをつけて安藤の身体を斜め下目掛けて放り投げた。


 「ぅぐっ!」と、くぐもった悲鳴をあげながら、哀れなリーダー、安藤は鈍い音と共に床に叩きつけられた。


 ――――これが話し合い!?一言ごとに一撃入れてくつもりね?


 と、誰よりも早く状況を察したジェマは慌てて止めようとしたが、今エナの身体のコントロールを下手に取り返せば、ゼグンド将軍の力で強化されているエナの身体が、無防備に放り出され、怪我をするかもしれない事に思い至って、思い留まった。


 ゼグンド将軍の攻撃が、貝谷少年を二撃で沈めた時のパターンと同じだったのは、ここまでだった。


 安藤が一撃食らった時点で、驚きつつも、反射的に戦闘態勢に入ろうとした、三栖のほんの僅かな動きを察し、少女は安藤を沈めた直後に、流れるような動作で体の向きを変え、一瞬のうちに地を蹴って三栖の懐に入ってしまった。


 来る!


 瞬きもせず、見開かれた少女の黒い瞳が間近に迫った瞬間、咄嗟に体を捻り片腕を眼前に掲げてガードしつつ、カウンターを狙う格闘技の基本の型を取ろうと、三栖が動いた――――否、動こうとしたのだが。

 エナ(ゼグンド将軍)の右の掌底突きの方が速かった。体勢を入れ替える間にも、後ろへ引いた掌底が、引き絞った弓矢のような勢いで繰り出され、下から上へと突き上げるような形で、三栖の顎に炸裂した。


 ゴッ!と鈍い音が響き、エナよりも10キロ以上は重いであろう三栖の長身が宙に浮き、地面に叩きつけられるのを、背後に突っ立っていた仲間たちは唖然と見つめる事しかできなかった。


 ゼグンド将軍は、エナの身体が、かつての自分のものと比べて格段に小さく脆いことを十分に承知していたので、普段なら正面からカウンターパンチを受け止めるところを、あえて躱し、極力エナの身体が傷つかない方法を選んで戦った。


 並外れた身体能力を誇っていたゼグンド将軍の魂は、肉体の記憶を持ったまま別人の、エナの身体に宿ったその日のうちに、関節の可動域、筋力量などを学習し、エナ本人以上に上手く操縦することができたのだ。


 攻撃が目標に届く寸前に、魂――――生命の核――――から魔力を僅かに捻り出し、エナの身体の要所要所を瞬間的に強化することにより、攻撃の反動でエナの身体が傷つくことはない。


 ジェマは一連の動作をエナの身体の内側から見守っていて、ゼグンド将軍が実にたやすく、己の力を、エナのために「変換」「並列化」「絶対防御」といった3種もの用途にコントロールするのを見て、驚きのあまり、「もっと手加減しろ」と注意するのが遅れてしまった。


 ――――なんて器用なのかしら!この男の技量を目の当たりにする都度、なぜ「彼ら」がこの男をどうにか厄介払いしようと躍起になるのか、わかるような気がする。


 ジェマがそうして度肝を抜かれている間に、無情にもゼグンド将軍は、脳震盪を起こしたのか、白目を剥いて昏倒した三栖のみぞおちの辺りを、乱暴に片足で踏み、両手を腰に当てて高らかに宣言した。


 「最後に。降伏せよ――――命が惜しければな」


 ギリギリの手加減によってか、気絶は免れたが、腹を蹴られた衝撃が全身に行き渡り、痙攣しながら何度も嘔吐し、汚い廃屋の床の上をのたうち回る安藤の姿を眺めるまでもなく。


 いつも向かうところ敵なし、という不動の地位を欲しいままにしてきた、彼らのグループで一番強かった三栖が、あっけなく沈められた時点で、金魚の糞のようにゾロゾロついて回るだけだった「その他の仲間」達は震えあがった。


 時代劇か何かに出てくる、悪役が口にするような台詞だったけども。


 か弱そうな女子高生が言おうものなら、なんの説得力も威力もなく、ただの冗談に聞こえてしまうだろう、その一言だが。


 自分よりも大きい男二人をあっけなく倒してしまったその少女――――霧島エナという少女が無表情のまま、息ひとつ乱さず、そう口にした途端、どうしたらいいのかわからず狼狽えるばかりだった少年たちの背筋に、悪寒が走って、膝がガクガクと震えだして止まらなくなった。


 5名のうち、何人かが緊張と恐怖のあまり、気を失いかけた時、エナの背後に、蜃気楼のように漂う、ゴリラのように筋骨隆々とした中年男の姿がうっすらと見えた、と後日コッソリ話していたという。


 こうして、ゼグンド将軍が自信たっぷりに事前に宣言していたように、邪魔者はこの日のうちに一掃され、隼人はめでたく、高校生の半グレ集団に捕まり、カモられパシリにされる、という奴隷的な身分からは解放されたのだが。


 これはほんの始まりに過ぎなかったのである。


 やけに上機嫌な姉(ゼグンド将軍)に襟首を掴まれ、にこやかに話しかけられ、一気に顔から血の気が引いてしまった。


 「では、早速修行しに帰るぞ。山籠りをしたいところだが、お母上が心配なさるし、学校もあるから、妥協するしかあるまい。実戦経験を積むのも大事だからな。

 ちょうどいい、ホレ、今、あそこの道角で、公共の道にゴミを捨てていった体格のよい男が見えるな?

 ちょっと一発殴って、注意して来い」


 「山籠りの方が百万倍マシなんですけど!?どこが妥協なんですか!?ぎゃっ!!」


 「口答えなど、100年早い!えーい、俺が手本を見せてやるから――――なんだ、ヤナセ、なぜ止める?」


 「あああああ、あのですね、スポーツジムに通って、身体を鍛えることから始めたらいいんじゃないでしょうか!?ぼ、僕も一緒に行って色々お手伝いしますので!!」


 「おおお、俺もエナさんみたいに強くなりたいな!ぜ、ぜひ一緒にジムに連れて行ってください!!あ、あんなオッサン、どうでもいいじゃないですか~!」


 「そ、そうそう!俺もこの頃運動不足でして!いい汗かきたいッス!!」


 と、存在感を極限まで抑えて、一刻もはやくこの場から逃げたい、という一心で大人しく従っていた、隼人の同級生、元イジメっ子たちが一丸となって、今にもシャッターを押し広げて、のしのしと路上に出て行き、タバコをポイ捨てにしていたヤクザ風の男を締め上げに行こうかとしていたエナ(ゼグンド将軍)を、決死の覚悟で止めにかかった。


 ――――隼人が死んでしまう!そして俺達も間違いなく殺人事件に巻き込まれる!!


 ――――冗談じゃねーよ、相手はどう見てもヤクザなオッサンだけど、いきなり社会人に喧嘩売ってタコ殴りになんかしたら、騒ぎが大きくなって、警察呼ばれるかもしれないじゃんか!


 ――――これ以上カオスな状況にされてたまるか!どっちみち逃げようとしたら殺されるし、こうなったら少しでもマシな方向に誘導するしかねーだろ!?


 ちなみに、降伏済みの森沖高校の安藤らの仲間は、降伏したにも関わらず「ケジメはつけんとな」という容赦ない一言の元、ゼグンド将軍の拳が唸りを上げ、全員仲良く一発ずつ食らって地に伏していた。


 あ、あのぅ・・・きゅ、救急車を呼んでください、と訴える呻き声を聞き流し、エナは、ワーワーと「やめましょうよ」とか「スポーツジムへ!」とか何とか言いながら取りすがって来る少年たちを見て、一瞬不思議そうな顔つきになったのだが。


 束の間、考え込む素振りを見せた後、急にパッと顔を輝かせた。そりゃあもう、嬉しそうに。


 「そうか!お前達、つまりは俺の軍門に下り、隼人共々、立派な兵士になりたい、とそう申しておるのだな!?」


 「「「えっ!?」」」


 軍門?兵士!!???


 聞きなれない単語に戸惑い、嫌~な予感に身を震わせた柳瀬、貝谷、立木の三名。


 なんで俺は、普通にエナ(ゼグ)の部下で、立派な兵士志望って事にされているんだろうか?と今更ながらに考えてしまい、途方に暮れる隼人。


 エナの身体の内側で「あちゃ~・・・もうどこから軌道修正したらいいのか、わかんないよ・・」と頭を抱えるジェマ。


 普段、希代の名将として、部下から崇め奉られる事に慣れきってしまっているゼグンド将軍は、いい意味でも、悪い意味でも、思い込みが強く、前向きな性格をしているのであった。


 ――――平和なこの国で、兵役というものが、どの程度重用されるのかは知らんが。


 漢たるもの、強くあらねばならない。

 隼人のみを鍛えるつもりだったが、こんなに慕われては、仕方あるまい。エナの美貌のおかげか?いやいや、俺のように強くなりたいと言っているのだから、俺の雄姿に惚れたのだな!


 ――――絶対に違うと思うんだけど!


 うむうむ、そうであろう。ヒヨッコなどに慕われても嬉しくなんかないが、悪くない気分だ。


 責任をもって、一人前の兵士になれるよう教育してやらねばなるまい。むろん、エナの弟であり、あのお美しいお母上のために、隼人は特別みっちりしごいて、一番強くしてやらねばならんがな!




 ――――ダメだ、このオヤジ!全然人のいう事聞いてない・・・!!メィレン様、お願いです、キャバに通ったり、子供の姿に化けて「ポケ〇ン」の映画観に行ってたこと、アニメDVDフルコンプして職場の棚裏に隠している事、誰にも言いませんから、迎えに来てえぇえええええ!!



 ジェマの苦労は果てしなく続く。


 この後、もちろん思い込みの激しい将軍は、隼人含む四人の少年を引き連れ、機嫌よく「スポーツジム」を見て回り、新たなるトレーニングメニューを考案するのに忙しく、少年達に否応なしに下された、地獄のゼグンド式ブートキャンプ刑には、数日ばかりの執行猶予がつくことになった。

 


to be continued!



 


次回は、やっとエナのターンです。ゼグンド将軍の名を隠し、別人としてファームに迎えられたが、その内情はクウガに聞かされていたものより、ずっと酷い状態だった!タダ飯食わせる余裕などない、と言われていつ追い出されるかもわからないエナは、働くしかなかった~というお話になります。

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