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6 「失敗し、してごご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃぃぃ」「ど、どうしたんだ大丈夫か!?」

俺「起きてるか?入るぞ」(コンコン


獣耳娘「あ、ご主人様」(起き上がり


俺「もう怪我はすっかり良くなったのか」


獣耳娘「はい。獣人は身体の丈夫さが取り柄ですから。こうして…普通に立って歩けます」(トコトコ


俺「無理するな、ほら座ってろ」


獣耳娘「はい」


俺「ところで、なんで俺を庇って魔獣の爪を受けるなんて危険なことをしたんだ。俺はあの程度ではやられはしない」


獣耳娘「それは……身体が勝手に動いたというか…」


俺「もうああいうことはするなよ」


獣耳娘「…」


俺「あと、音を立てたのは失敗だったな。敵に気づかれなければ危険もなかった」


獣耳娘「ボクが失敗、して…ご主人様に…危険が?」


俺「まあ、お前はまだ駆け出し冒険者だし、失敗することもあるから気にするなよ。…っておいどうした?」


獣耳娘「失敗し、してごご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃぃぃ」


俺「ルゥ!?」


獣耳娘「ごめんなさいごめんなさいお仕置きは嫌ぁぁぁぁぁ!」(ガクガクブルブル


俺「ど、どうしたんだ大丈夫か!?」


獣耳娘「ああっ、あああああ・・・」


俺「大丈夫だ、誰もお前を罰したりしない」(抱きしめ


獣耳娘「うわぁぁぁぁん」


・・・

・・


俺「落ち着いたか?」


獣耳娘「は、はい…もう大丈夫です」


俺「どうしたんだ一体」


獣耳娘「昔の…奴隷だった頃のことを思い出したら、震えが止まらなくて…」


俺「何があったんだ?…嫌ならもちろん言わなくてもいい」


獣耳娘「ボクの…最初のご主人は裕福な人で、ボクは同い年くらいの女の子の遊び相手として買われたんです」


獣耳娘「ボクたちは姉妹みたいにとても仲良くしてて、家の人もみんな優しくしてくれたんです。でも」


獣耳娘「二人きりで遊んでいる時に野犬が襲ってきて、女の子は……死んで、しまったんです。ボクは傍にいたのに、何もできなくて」


獣耳娘「それからずっと…ご主人に『お前のせいだ』『奴隷のお前が死ねばよかった』って毎日ぶたれて」


獣耳娘「それで逃げ出したんです…でも捕まってまた奴隷になりました」


獣耳娘「それから失敗が怖くて、何もできるようにならなくて、褒められることなんてなくて、また怒られてまたぶたれて、別の人に売られて……」


獣耳娘「結局ボクは大切な人を守れなかった役に立たない奴隷なんだって思って」


獣耳娘「もう、生きていても仕方ないかなって思っていたときに、貴方に…ご主人様に出会ったんです」


獣耳娘「ご主人様は、ボクの才能を見出してくれて、鍛えてくれて、ボクを人間として扱ってくれて…僕にとって大切な人です」


俺「…」


獣耳娘「だから『ご主人様が魔獣にやられる』って思ったら、その時のことを思い出して、命と引き換えにでも守らなきゃって…あの時と同じになりたくないって思ったんです」


俺「そんなことがあったのか。辛かったんだな……だが、それはちょっと違うんじゃないか」


獣耳娘「え?」


俺「友人が死んで、自分を責める気持ちはわかる。しかし、昔のお前の力では野犬はどうにもならなかった。下手したらお前も一緒に死んでいただろう」


獣耳娘「そうかもしれないですけど!でも、ボクは、あの子を助けたかったんです!」


俺「守りたいものがあるなら、強くなって、自分の命を犠牲にせずに守れるようにならなきゃいけない」


獣耳娘「ご主人様……」


俺「ましてやお前は冒険者だ。自分の命を犠牲にするようなことは二度とするなよ」


獣耳娘「ボクは……」


俺「どうした?」


獣耳娘「ボクは……強く、なりたいです。もっともっと」


俺「前を見て生きるんだ。…過去に、囚われるな」


獣耳娘「はい」





俺(『過去に囚われるな』…俺が言えた口か?)

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