12 「…嘘です」
俺「追い詰めたぞ『魔女』。手負いではこれ以上逃げられないようだな。この『神殿跡』をお前の墓場にしてやる」
獣耳娘「そうですっ!」
魔女「追い詰めただと?フ、時間をかけるのも面倒だから相手をしてやることにしただけのことよ」
俺「…お前と戦う前に1つ聞きたい。なぜ俺の街を破壊した。そして俺を生かした」
魔女「さあねえ、どの街のことやら、おぼえていない…がいずれにしろ理由などはないわ」
俺「『理由はない』…だと?」
魔女「人間は理由のないものに理由を求める。天変地異を『神の怒り』といい、豊作を『神の恵み』などとのう。実に可笑しい」
魔女「我がなんの理由もなく街を破壊しても、人はそれに理由を見出す。ある者は我を崇め、ある者は畏れる」
魔女「我は、ちっぽけな人間がそのように我の行いに意味を求め、足掻くのをみるのが楽しくてたまらないのじゃ。ちょうどそう、人間が蟻の巣を潰して観察するかのごとく」
魔女「それが楽しくて我は、何度も何度も理由なく街を壊してきた。そして、わざと何人かを生かし我のことを語らせることにしていたのだ」
俺「人を…人の命をなんだと思ってやがるこのクズめ!」
魔女「フフフ。力なき人間に我の考えなど理解できまいて」
獣耳娘「…嘘です」
魔女「!?」
獣耳娘「お前は怖いだけです!自分が倒されるのが怖いだけなんですよ!」
魔女「我が…?怖い…だと?」
獣耳娘「ボクは奴隷だったから知ってる。無意味に奴隷を虐める奴は、本当は奴隷が怖いんです」
獣耳娘「理由もなく虐めて恐れさせ、崇めさせなければ、怖くて仕方ないんですよ!お前は人間が怖いんだ!」
獣耳娘「なぜ怖いか!倒されるかもしれないからです!お前がどんなに強くても!結局人間に倒されちゃう存在だからですよ!」
魔女「ほざくな!たかだか人間と獣人風情がっ!死ね!」
俺「誰が死ぬか!」
獣耳娘「死ぬもんですか!」