8 「あいつは俺の信頼する仲間なんだ」
獣耳娘「次の街が楽しみですねご主人様」
俺「お前も随分旅に慣れてきたな。…!!あれは!」
??「おいそこの奴ら、止まれ!」(槍チャキ
獣耳娘「武器を持った人がいっぱい…街道にキャンプなんて建てて、なんなんです?この人たち」
俺「『傭兵団』だろう。戦争の時は金で戦場を渡り歩き、戦争がない時は町を略奪して暮らす厄介な連中だ。しかしなんでこんなところに…?」
下っ端傭兵「おいそこの男!こっちの天幕にこい!団長がお呼びだ!そこの獣耳奴隷は来なくていい!」
獣耳娘「ご主人様!どこに行くんですか!大丈夫なんですか!?」
俺「ちょっといいか」
俺(もし俺が…時は……を……して)
獣耳娘(!わかりました)
傭兵「久々だな」
俺「!!……まさかお前が傭兵団長とは」
傭兵「再会を祝して一杯やろうぜ」
俺「俺はいい。勝手に飲めよ。それで何の用だ」
傭兵「お前がこの辺りにいると聞いて待ってたんだぜ。オレの傭兵団に加われよ」
俺「どういうことだ」
傭兵「今この国は混乱してんだろ。オレは傭兵団として名を上げいずれは領主になりたいんだ。そのためにはお前の力がいるって訳だ」
俺「断る。馬鹿馬鹿しい」
傭兵「馬鹿馬鹿しい?お前だって『力がないものがどんな目に合うか』知ってるだろ?」
俺「だから傭兵団の力で略奪を繰り返すのが正しいと?…変わったなお前は」
傭兵「力がなければなにもできねえんだよ。オレが強いからこそ皆オレについてくる。…それにさっきのあの小娘、お前にも金で買った獣耳の奴隷をはべらして支配している同類じゃねえか」
俺「……俺には果たすべきことがある。何を言われても傭兵団には加わらない」
傭兵「そうか…従わないなら力づくでも従わせてやるぜ」
俺「!」
傭兵「『もし道を異にするときは勝った方に従う』…昔約束したよな。抜けよ」(抜剣
俺「おいおい物騒だな」(抜剣
傭兵「くらえっ!」(ブンッ
俺「ちっ」(ギンッ
傭兵「そらそらそらっ!」(ブンブン
俺「くっ…」(キンキンッ
傭兵「やはり、戦場で生きてきた傭兵のオレには冒険者のお前では勝てないようだなあ?」
俺「それはどうかな?お前、手が震えてるぞ」
傭兵「!?バカな!?これは…てめえ旧友のオレに…まさか…さっき酒に毒を…」(ガク
俺「いきなり連行されたからな、念のためだ。冒険者なんてしているとな、保身ばかり得意になるんだよ」
傭兵「く、おい、だ、誰か!」
俺「誰もこないぜ」
傭兵「!?」
獣耳娘「えっと、ここかな?ここでこれを使えば…」(ドッカーン
下っ端傭兵「なんだ今の爆発は!?また火の手が上がったぞ!どうなってるんだ!」
下っ端傭兵「火を消せ!人を呼んでこい!早く!」
俺「ああ、訂正し忘れたな。あいつは俺の奴隷じゃなくて『信頼する仲間』なんだ。俺がしばらくして戻らなかったら、火事を偽装して混乱に乗じて一緒に逃げる事になってる。じゃあな」
傭兵「くっ…覚えてやがれ!」
・・・
・・
・
俺「なんとか逃げられたか」
獣耳娘「そうみたいですね♪」
俺「危機一髪だったのになんでそんなにウキウキなんだ」
獣耳娘「ボクの耳はとでもいいから聞こえちゃったんですよね〜♪ご主人様がボクのこと『信頼する仲間』だって言ってくれたのが〜♪」
俺「あれは、力と上下関係しか信じない奴を考え直させようと思っただけで、お前を認めたわけではない」
獣耳娘「またまた〜♪…それはそうと、あいつは誰なんです?」
俺「奴は昔の同僚だ。昔はあんな奴ではなかったが」
獣耳娘「『昔の同僚』って、ご主人様は昔何をやってたんですか?それとこれも聞こえちゃったんですけど、ご主人様が言ってた『俺には果たすべきことがある』…って?」
俺「それは……すまない。言えない」
獣耳娘「ご主人様…」