3話 家族と赤子の詩
サブタイトル考えるのなんか楽しい。
気がつくと、私は知らない場所にいた。
木でできた家みたいな場所だな。
そして私の目の前には私の知らない人が2人、私の方を見て微笑んでいる。
「あ、ユーカが起きたぞ!」
「あら、ほんと。本当に可愛いわねぇ!」
まるで私が赤ちゃんで、2人が私の両親みたいな感じだな。
―あ、そうか。
私、転生したんだっけ。
そっか、転生って赤ちゃんからスタートするんだよね。
じゃあ、つまり、この2人は今の私の両親ってこと?
それにしても、もう1回赤ちゃんかー。
前世(もう私転生してるからね)で生きること16年、自分がもう1回赤ちゃんからスタートするなんて、考えたこともなかったなぁ。
まぁ、前世でもそれなりに幼少期は楽しんだから、「小さい頃に戻りたい!」とかも思ったことないし。
まぁ でも、もう1回楽しめるなら楽しむかな。
それに、学生の頃の記憶はあるから、この世界のシステムを理解するのにそんなに時間はかからないだろうし、多分。
まぁ前世と違って剣とか魔法とかがあるからまた変わってくると思うけど、大体は一緒でしょ、きっと。
文字はもう読めるから6歳ぐらいまでにはこの国の法律とかを一通り理解しておこうかな。
あ、学校とかあったら行ってみたいなぁ。
お城も1回でいいなら見てみたいなぁ。
・・・などと考えていると、いつの間にか笑顔になっていたらしく、
「エマ!ユーカが笑ったぞ!」
「まぁハドソン、本当ね!なんて可愛いのかしら!」
「何言ってるんだエマ、うちの子が可愛くないわけないじゃないか!」
「そうよね!でも、例えそうだとしても、うちの子、ちょっと可愛すぎじゃないかしら?大人になったらモテすぎて困っちゃうんじゃない?」
「うーん、そうだなぁ・・・はっ!それは嫌だ!僕はユーカに男なんて誰も近づかせないぞ!いや、でも孫の顔を見るのも・・・あぁ、こんなの、究極の選択以外の何物でもないじゃないか!」
「まぁまぁハドソン、そのあたりは後でゆっくり悩めばいいじゃないですか、まだユーカが結婚するまでに最低でも15年はありますよ?」
「そ、そうか。それもそうだな。よし、じゃあ僕はユーカと遊ぼうかな!」
・・・なんて会話をしていた。
あぁ、この人たち、典型的な親バカだ。
いや、自分の子どもが生まれたら誰だってそうなるのかな?
何しろ自分の子どもなんて産んだことないからわかんないや。
まぁ、そんなことはいいや。
少し親バカなお母さんのエマと、絶対に親バカだと言えるお父さんのハドソン。
これからよろしくお願いします、と心の中でつぶやくと、ふとお腹がすいていることに気づいた。
「あの・・・」
おぉっと、普通に喋ってしまうところだった。
あれ?赤ちゃんって喋れるの?
いや、これはきっと転生者だからだな。
赤ちゃんだから、それっぽく泣かないと。
「エマ!ユーカの声が聞こえたぞ!きっとお腹が空いてるんじゃないか?」
「まぁ、大変!ハドソン、山羊のミルクを取って来てくれるかしら?」
「わかった!すぐとってくる!」
・・・どうやら泣かなくてもよかったようだ。
「エマ、取ってきたぞ!」
早っ。
「あらハドソン、早かったのね!」
「ユーカのためだからな!」
「うふふ、じゃあ・・・そうねぇ、ハドソン、たまにはあなたがミルクをあげてみたら?」
「僕が?いいのか?」
「えぇ、喉につまらせないようにゆっくり飲ませてあげてね。」
「あ、あぁ・・・よし、ユーカ、今日は父さんが飲ませてやるからなー!」
ん?たまには?・・・そうか、この体は生まれてから少し時間が経っているのか。
しかし、山羊のミルクか。
まさか生まれてからいきなり前世で見たことないものを飲むとは思わなかった。
どんな味なのだろう、楽しみだ。
「よし、頑張るぞ!ゆっくり・・・ゆっくり・・・」
ハドソンさん・・・もといお父さんが、ゆっくり哺乳瓶を私の口に運ぶ。
・・・うん、すごく濃厚だな。
それに、少し青臭い。
クセがあって好き嫌いが別れそうな味だ。
でも私は好きだな、この味。
ミルクの味も含めて、過ごしやすそうな感じの家庭環境でよかった。
そんなことを考えているうちに、私はいつの間にか寝てしまった。




