1話 終わりと始まりの詩
どーも、折りたたみ傘の柄って短くね?です。
「折りたたみ傘の柄って」が苗字で「短くね?」が名前です。
初めて小説書きます。
連載ペースめっちゃ遅いです。
なるべく早く更新できるように、いい文章が書けるように頑張るのでよろしくお願いします。
―私は、多分、死んだ。
最期の記憶は、宙を舞う自分。
その少し前の記憶は、思い出せない。
そこの記憶が無いと自分がなぜ宙を舞っているのか、なぜ死んだのかがわからない。
そもそも、こうやって考えることができている以上、本当に死んでいるのかすら定かではない。
―あれ、そういえば・・・ここは、どこ?
私は周りを見渡すが、見覚えのあるものや目印になりそうなものは一切無い。
私が周りを見て、唯一目に入ったものは、黒。
そう、今私がいる所は、どこを見ても真っ暗、あるいは部屋自体が黒いのだ。
「ここはどこ?どうして私はここにいるの?誰か他にいないの?」
どこからか声がすることを期待し、何もない空間に向かって語りかける。
きっと誰もいないのだろう、自分の声以外の音は聞こえない。
予想はしていたが、少しガッカリする。
・・・本当に、どうなってるの?
私、このままどうなっちゃうんだろう。
このままずっとここから出られないのかな?
もしそうだったらどうしよう。
膨大な量の不安が私を襲う。
・・・と、とりあえず、誰かいないか探し回ってみよう!
もしかしたらどこかに誰かいるかもしれないし。
誰かに気づいてもらえるように、声をだしながら行こうかな。
べ、別に、ここがすごく怖いとか、そんなことはないから!
「誰かー、いませんかー!私、怖くないから出ておいでー!今なら怒らないから!一緒にお話ししよう!ねぇ、誰かいないの?一緒に遊ぼうよ!」
私は声をあげながら辺りを歩き回るが、一向に返事がない。
「あ、もしかして知らない人とは話さないようにって言われた?私、七瀬優香!ね、私の名前知ったからもう知らない人じゃないでしょ!一緒にお話しよう!」
うーん、やっぱり返事がないなぁ・・・
あ、もしかしてここにいるのって結構な大人だったり?
「あのー、さっきはすいませんでした!誰かいませんかー?私、七瀬優香と言います!多分ここに来たばかりで、1人では心細いので、一緒にいて頂けませんかー?」
やっぱり返事がないなぁ。
・・・もしかして、本当にここには私しかいないの?
もしそうだったら、これから本当にどうしよう。
さっきは誰か1人ぐらいいると思っていたからまだ大丈夫だったけど、多分ここには私しかいない。
だって私結構大声出したのに反応してくれないし。
何とかしてここから脱出したいけど私1人の力だけじゃどうしようもない。
あーもう!考えてもしかたない!
ここで誰か来るのを待っててもいいけど、いつ来るか分からないし、もしかしたらずっと来ないかもしれない。
これからのことを考えて悩むより、ここから脱出する方法を考えた方がエネルギーも無駄にならないし。
よし、もう迷わない!
私はここから絶対に脱出してみせる!
そのためにも、まずはここが何かを突き止めなきゃ。
もう少し歩き回ってみたら、何か見つかるかな?
「ふふふふふ、面白いね、君。」
もう、私のどこが面白いの!
ってか、そんなこと言ってる暇があるなら手伝いなさいよ!
「えー、面倒くさいなぁ・・・まぁいいよ。で、何をすればいいの?」
「じゃあ、何かここを脱出するためのヒントになるようなものがあったら持ってきて欲しいかな。お願いしていい?」
「うーんと・・・多分ここには何も無いよ?」
「え?なんでそんなこと知って・・・あれ?え?私、今、誰と喋って・・・え?」
慌てて周りを見回すが、そこには私以外誰もいない。
おかしい、だってさっき私は絶対に誰かと喋っていた。
声を聞く限り、少年のような気がする。
「え?誰もいない?なんで?」
「ふふふ、やっぱり君、面白い!」
「え?あれ?あなたは誰?どこにいるの?ここはどこ?どうやったら脱出できるの?」
「あのさー!一気に聞かないでよ!そんなに一気に聞かれても全部答えられる訳ないじゃん!」
「ご、ごめん・・・」
「別にいいよ。でも、うーん・・・今ここで質問に答えるのは二度手間だこから、こっち来てくんない?」
「あなたのいる所に?でも、ここからの出口もないのにどうやって・・・」
「え、出口がない?・・・あ、そっか。ちょっと待ってねー・・・ほいっ!」
ドン!
「うわぁっ!」
「そんなに驚かなくても・・・まぁいいや。後ろ向いて?」
「え?後ろ・・・えぇ!?さっきまでなかったのに!」
後ろを向くと、さっきまで何も無かったはずの空間に、ドアがあった。
白くて四角いそのドアは、この真っ黒な空間で異彩を放っていた。
「それ通ってこっち来てくれる?」
「う、うん・・・」
私は言われるがままに、ドアノブに手をかけた。
ガチャッ。
あれ、案外簡単に開いたぞ。
これ、今更だけどどういう仕組みなんだろう。
ま、いっか。
ここを脱出しない事には何も始まらないし。
声の主さんがどんな人なのかは分からないけど、ここから出してくれるからいい人そうだし。
そんなことを考えながら、私はドアを開けた。
途端、眩しい光が私を襲った。
「ようこそ、僕の部屋へ!」
気がつくと、私の前に1人の少年が立っていた。
「え、あれ?」
辺りを見回すと、そこは先程までいた真っ黒の空間とは違い、壁も床も、全て真っ白だった。
それに、ソファーやベッドなど、いくつかの家具が置いてある。
その家具も白で統一されていた。
「ごめんねー、こっちに来てもらっちゃって。僕はアル。よろしくね!アル、とかアルるん、って呼んでね☆」
「え、あ、うん、よろしく?」
アルと名乗った少年は、雪のように白い肌に、栗色の髪と瞳を持つ、可愛らしい少年だった。
アルの服も部屋と同じ、白だった。
「えーっと、まずはここがどこなのか話すね。ここは死後の世界なんだ。それで、僕はそこの天使みたいなものかな。」
「死後の世界?あの世ってこと?」
やっぱり、私死んでたんだ。
気づいてはいたけど、はっきり言われるとショックだな。
「うん。まぁそうなるかな。あ、でも、死後の世界って言っても君が思ってるのとは違くて、ここは『リナーシェ』って呼ばれてるんだ。さっき君がいた黒い部屋もリナーシェの1部だよ。この部屋と黒い部屋は繋がってて、僕はさっきこの部屋から君にマイクを通して声をかけてたんだ。」
「へ、へぇ・・・」
「で、なんで君がここにいるかって言うのも聞きたい?」
「え、死んだからじゃないの?」
それ以外に何か理由があるのだろうか。
「うーんとね、それも理由の1つなんだけど、もう1つ理由があるんだ。」
「もう1つ?」
「そう。それはね、君の死因なんだけど、覚えてる?君、お父さんに刺されて死んじゃったでしょ?」
「え?」
私がお父さんに刺されて死んだ?
それは絶対にありえない。
確かに、私は自分がどうやって死んだのか覚えていないが、最期に自分が宙を舞っていたのは覚えている。
あの時、私は家の外にいたはずだ。
それ以前に、私の父は今海外出張で家はおろか、日本にすらいないはず。
「あー、もしかして死ぬ前の記憶が残ってないのかな?たまにいるんだよねー、そういう人。」
「あのさ」
「ん、何?記憶が戻ったの?」
「んーと、そうじゃなくて・・・私のこと、誰かと勘違いしてない?」
「・・・え?」
「だって、私のお父さん、今は海外出張でいないし。」
「え?」
「それに、死ぬ間際の記憶は確かに無いけど、私が覚えてる1番最後の記憶で、私家の外にいたし。」
「え、嘘でしょ?」
「本当だよ。だってもう死んでるのにわざわざ嘘つく理由なんてないし。」
「うーん、それはそうなんだけど・・・まさかね。」
「え、まさかって?」
「あー、えーと、なんでもない。こっちの話。・・・それより、僕、君の名前が知りたいな!」
「私の名前?」
「うん、本名、フルネームで!」
「フルネーム?七瀬 優香だけど、それがどうしたの?」
「・・・えーと、えーと、ちょっと待ってね。ナナセが苗字でユーカが名前だよね?」
「うん。」
「・・・ごめん。今すぐ確認するから待ってて。メル!」
アルがそういうと1人の少女が部屋に入ってきた。
年齢はアルと同じぐらいに見える。
アルと同じ白い肌、栗色の髪と瞳。
おろしている髪は腰まであり、緩くウェーブがかかっている。
「メル」と言うのは状況から察するに、この子の名前だろう。
アルも美少年だが、この子もかなりの美少女である。
「どうしましたか、お兄様?」
アルはこの子の兄なのか。
「メル、君が黒の部屋に送った子の名前、僕が聞いてたのと違うんだけど、どうなってるの?」
「え?そ、そんなはずは・・・本当ですか?」
「本当。彼女、ナナセ ユーカ って名乗った。」
「え、そ、それは・・・そこの女が嘘ついてるとかじゃないですか?」
「それはないよ。最初はペンネームか何かだと思ってたけど、僕が本名聞いても黒の部屋にいた時と同じ名前名乗ってるから。」
「そ、そんな、まさか・・・」
「メル、今すぐ資料持ってきてこの場で照合して。」
「え、でも・・・」
「メル」
「・・・分かりました。失礼します。」
え?何?今「資料」とか「しょうごう」って言ってなかった?
「しょうごう」ってなんの事かわからないけど、何だろう?
というかさっきから会話が丸聞こえしてるんだけど大丈夫なのかな?
「ねぇ、アル・・・」
「ん?あぁ、あの子はメルって言って、僕の双子の妹だよ。メルにはここの仕事を手伝ってもらってるんだ。」
双子の妹さんなのか。
「へー、兄妹でここの仕事を・・・まだそんな歳じゃないのに、偉いなぁ・・・」
「え、ぼくたちはもう10歳だよ?・・・あぁ、えっとね、僕達の世界では8歳から仕事につかなきゃいけないんだ。」
「そっか、大変だね。頑張って!」
「うん、ありがとう!」
あれ?アルに何か聞こうと思ってたんだけど。
まぁいっか、そんなに重要なことじゃないだろうし。
「お兄様、資料をお持ちしました。」
「48ページ開いてみて。今日の日付けの所、なんて書いてある?」
「少々お待ちください。えぇと、・・・っ!」
「見せて。」
「えと、あの、これは・・・」
「メル」
「しかし・・・!」
「いいから。それとも君は僕の指示が聞こえないの?」
「・・・かしこまりました。」
「・・・あぁ、やっぱり。メル、やっぱり間違えていたのか。これは謝って済む問題じゃないよ。」
「ごめんなさいお兄様、でもこの程度のミス、私1人でも・・・」
「メル、君にとっては『この程度』かもしれない。でも間違えられた人にとっては重大なことだって前にも言ったよね?」
「う・・・。も、申し訳ありません。」
「謝るのは僕にじゃないでしょ。メル、自分から彼女に説明出来るよね?」
「そ、そんな・・・!」
「さっき『この程度のミス、私1人で』って言ってたの、忘れたわけじゃないよね?ほら、早く言ってきてよ。」
そう言われたメルさんが渋々と言った感じでこちらに来た。
さっき「重大」とか「ミス」とか言ってたな。
何を間違えたのかはわからないけど、アルがさっき言ってた「間違えられた人」っていうのはこの場合、十中八九私だろうな。
ま、多分書類のミスとかでしょ。
というか、思ったんだけどアル、メルさんに対して少し厳しくない?
まぁ、仕事の世界はそんなに甘くはないってことなのかな。
「え、えっと、まず、そこの女!」
「え、わ、私?」
ビックリしたー。
今、メルさん結構な大声出してたよね!?
というかアルに接する時との態度の差、激しくない!?
「そうよ!ここにいる女って言ったらアンタしかいないでしょ!?」
「え!?あの、メルさんも、女の子なのでは・・・?」
「へ、わ、私?そうよ!・・・てかそんなことよりどうして私の名前知ってるのよ!」
「え、だってさっきの会話丸聞こえだったし・・・」
「え、嘘!?」
「本当。・・・っていうかさ、なんで私のこと呼んだの?」
「それは、その・・・私が連れてくる人を間違えちゃって、だからあアンタがそのせいで死んだから・・・」
「へー・・・って、え?」
「だからー、アンタは本来ここに来るべきじゃなかったってこと!何度も言わせないでよ、理解力とかないわけ?」
「え?え?えーーー!」