第3話 裏切者
「マスター、聞いてよ」
「ここ、食堂なんですけど・・・」
お酒はおいてません。
でも、酔っ払いは来ます。
「で、今日の夕方が締め切りでよ」
「どうなりました?」
まぁ、聞かなくてもわかるけどね。
聞いてほしいんでしょ。
「全然、無理無理。裏切り物になっても無理」
「ですか」
まぁだろうな。
繰り返しが多いから、省略すると。
新入社員で入って1年弱。
ほとんどブラック状態。
朝早くから終電まで仕事して。
土日もなく仕事をして。
それなのに、納期に間に合わないことが多い。
極めつけが一週間前。
「これを来週の今日までに終わらせてくれ」
「冗談でしょ。そんなの1カ月あっても終わりませんよ」
「そんなこと聞いていないよ。はい、で答えなさい」
「・・・はい」
結局、予定の1/3にもいかないで締め切りになってしまった。
本当に、これができないから会社がつぶれてしまうかも。
「何にしますか?」
「うーん。海鮮丼」
仕事は悩んでるな青年。て゜も、メニュー選びは即決だな。
「おまたせ」
もぐ「うまっ」もぐもぐ「うまうま」
《SSSチート級スキル:大局答を身に連けました》
「ごちそうさま。帰ります」
翌朝。
「できてるか?」
うわ。課長・・・どう答えたらいいのか?
《SSSチート級スキル:大局答を起動しました》
「すみません」
「すみませんじゃないよ」
まずは、こんな感じか。
次?
《SSSチート級スキル:大局答を起動しました》
「えっと課長も大変なんですよね」
「うー。平社員とは違うよ」
《SSSチート級スキル:大局答を起動しました》
「もしかして、課長、最近、帰ってないんじゃないですか?」
「もう一か月だよ。会社泊りも慣れたな」
《SSSチート級スキル:大局答を起動しました》
「もし、間に合わなかったら、社長になんて言われます?」
「おまえ、会社つぶす気か?、だな」
おまえ、会社つぶす気か?
《SSSチート級スキル:大局答を起動しました》
「よし、会社はつぶしましょう」
「えっ?」
「おまえ、会社つぶす気か?って聞かれるじゃないですか」
「まあな」
「その答えは、『会社つぶしましょう』が正解です」
「・・・そんなこと言っていいのか?」
《SSSチート級スキル:大局答を起動しました》
「今の会社、誰のためにもなっていないと思うんです」
「たしかにな。お前のためにも、私のためにも、お客さんのためにも」
「そして、一番、社長のためにも、ね」
それから1カ月、いろんなことがあったけど、会社は2度目の不渡りを出して倒産した。
「課長、これからどうするんですか?」
「まぁ、なんとかなるよ」
「ですよね。あの地獄のような日々を思えばなんとかなりますよね」
こうして、ふたり、いえいえ三人。
平社員と課長と社長。
大局的に見て、いい方向に行っています。
会社なんてまた作ればいいしね。