第2話 修学旅行代はパチンコで消えました
「俺は生きている資格がないんだよ、マスター」
このお店に来る客は全くしゃべらないか、やたらとしゃべるか。
どっちかの場合が多い。
この方は、よくしゃべる系ですね。
「うちに帰ったらさ。たまたまタンスの奥にさ、修学旅行代って書いた封筒みつけてしまってさ」
たまたまでタンスの奥はみませんよね、普通は。
「開けてみたら、なんと。2万円も入っていたんだよ。そりゃ、ちょっと借りておこうと思うじゃない」
普通のお父さんはそんなこと思わないはずですが。
「パチンコで10倍にする自信があった訳よ。どうなったと思う」
言いたくありません。
「それがさ。一瞬で消えちゃってさ。不思議だな」
・・・・
「料理は何を食べますか?」
「えっ、そうだな。次こそは勝つということで、かつ丼にするか」
次はない、けど。かつ丼はある。
「はい、かつ丼です」
「お、来た来た。好きなんだよね。かつ丼」
ががかーっと、一気食いした。
《SSSチートスキル:物忘れを手に入れました》
「ふぅ、うまかった。ごっそさん」
もう来るな。
お客さんは扉から出て行った。
「あなた。タンスの中にあった娘の修学旅行代、どうしたの?」
やばい。すでにばれている。何もかも、忘れてしまいたい。
《SSSチートスキル:物忘れを起動しました》
修学旅行代のことを完璧に忘れることができました。
「えっ、タンスの中って何のこと?」
「とぼけないでよ。あんたしかいないでしょ」
「だから、何のことだって聞いているだろう」
その日、その家には血の雨が降ったとか、降らなかったとか。
その後の話は、R15規制の関係上、書けません・・・あしからず。