第1話 パパを助けて!
「お願い、パパを助けて」
お店に入ってきたのは10歳くらいの女の子。
切羽詰まった表情をしている。
「パパが病気なの。はやくなんとかしないと・・・」
「まずはここに座って」
カウンターの1席を勧める。
座った女の子は、さらに言う。
「どうしたらいいの?」
「それなら、まずは何が食べたい?」
「えっと・・・ナポリタン!」
「了解」
ケチャップが焼ける匂いが食欲をそそる。
「あ、おいしそう。いただきます」
「今は悩み事を忘れて、おいしく召し上がれ」
《SSS級チートスキル:説得を手に入れました》
「ごちそうさまでした」
「はい、お粗末さま」
そういうと、小さなお客様は扉から戻っていった。
「ただいま。パパっ」
熱が高くて意識も途切れがちなパパ。
「駄目よ、パパ、死んじゃだ駄目」
《SSS級チートスキル:説得を起動しました》
パパの説得に成功ししました。
「わかった。パパは絶対、死なないよ」
「パパぁ~」
だけど、残念ながら、どんなに死なないと覚悟を持っていても、病気はそれでは治らない。
そんなことを知らない女の子は、「死なない」と言いつつ衰弱していくパパを心配そうに見ていた。
もう、パパは意識すらなくなって、もう少しでお迎えがくる。
そんな状況になってしまった。
「ひどいわ。病気の悪魔!パパから出て行ってよ」
《SSS級チートスキル:説得を起動しました》
病気ウイルスの説得に成功しました。
「わ、わかりました。この人間からは撤退します」
その日からパパは快方に向かった。
全ては良い方向に向かうとみえた。
ひとつのことを除いては。
「はやく宿題しなさい」
「えー、後でいいでしょ」
《SSS級チートスキル:説得を起動しました》
ママの説得に成功しました。
「そうね。後でいいわね」
この女の子、きっと、とんでもないワガママに育ってしまうだろう。
でもそれは、別のお話です。