表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/76

31話 盗賊ガルシュ

「補助魔法を解除します!」

 ソフィアさんは、ラナとリーザにそう告げてから魔法を解除し、探知魔法を発動させた。

 そして、彼女はオクトの位置へ向けて魔法を放つ。やはり、目は閉じていない。

 だが、オクトはこれを回避したようだ。


 僕も、オクトに対して攻撃魔法を放った。

 一人の魔法だけならば避けられても、二人同時に魔法を放たれれば避けられないだろう。


 しかし、この魔法も手応えが無かった。

 まさか、躱したのか!


「リーザ、私と同じ場所を狙って!」

 突然、ソフィアさんがそんなことを叫んだ。

 ハッタリか、と僕が思ったのと同時に、ソフィアさんが再び魔法を放つ。

 すると、驚いたことに、リーザも攻撃魔法を放っていた。


 相手の位置が分かっていないリーザの照準は、かなり甘かった。

 しかし、2発の攻撃魔法の射線によって、オクトの動きが制限される。


 僕は、オクトに攻撃魔法を放った。

 抹消者(イレイザー)は、姿を消した状態では、他の魔法が使えない。

 仮に姿を現わしたとしても、他の魔法が苦手な抹消者(イレイザー)の割合は高い。

 つまり、障壁を展開できる可能性は低い、ということだ。


 案の定、オクトは僕の魔法で、左足を貫かれていた。集中が途切れたらしく、姿を現わす。

「ぐっ……!」

「オクト!」

 ガルシュは、逃げようと必死だったが、僕の障壁とラナの牽制に阻まれて、逃げられないでいた。


「くそっ、どけ!」

 ガルシュがラナに突っ込む。

 ラナは、ガルシュの剣を受けた。

 しかし、この二人は精霊の性能も体格も違う。ラナは、大きく体勢を崩した。


「うわっ!」

 ラナが尻もちを付いたので、僕はガルシュとの間に障壁を展開してラナを守る。

「チッ!」

 ガルシュは、やはり障壁に斬り付けたが、弾き返される。


 この状況では、守ることはできても、攻めることは難しい。

 障壁を展開するガルシュ相手に、生半可な攻撃魔法は無意味である。

 かといって、相手の障壁を撃ち抜くほどの魔法を使えば、ガルシュが障壁を展開しなかった場合に、大変なことになってしまう。


「ラナ、私が補助魔法をかけます。自分の剣に集中してください」

 ソフィアさんがそう告げて、ラナに魔法をかける。

 これで、ラナはAランクの精霊を宿している者と、同じような動きが可能なはずだ。


 しかし、戦闘時のような複雑な動きをしている者に、補助魔法を長時間かけておくことは出来ない。

 勝負はすぐに決めなければならないはずだ。


 僕は障壁を解除した。

 それと同時に、ラナがガルシュに突進する。

 ガルシュは、体格差や剣の技術で、ラナの攻撃を捌いてみせた。

 決して余裕は無いようだが、補助魔法が切れる隙を窺っているのだろう。


 このままではラナが危ない!

 そう思い、僕はガルシュの後ろに障壁を展開した。


 ガルシュが呻く。

 いかに元々の実力差があろうと、動きを制限された状態で、今のラナの攻撃を捌くことは不可能だ。

 ラナの剣が、壁際に追い詰められたガルシュの剣を弾き飛ばした。


「あたしの勝ちだな、おっさん!」

 ガルシュに剣を突き付けて、嬉々としてラナが叫んだ。


 その瞬間、ラナにかけられていた補助魔法が、切れた。

 すると、ガルシュは素早くラナの腕を掴み、剣を奪い取った!


「えっ……?」

「詰めが甘いぜ、小娘が!」

 ガルシュは、ラナの身体を後ろから左腕で抱くようにして、右手で喉元に剣を突き付ける。

 とてつもない早業だった。


 凄腕なのはオクトだけではない。

 この男も、かなりの手練れだ。盗賊団を率いているだけのことはある。


「お前ら、動くなよ!」

 ガルシュは、勝ち誇ったように言った。


 ラナは、真っ青な顔で震えている。

 あの状態では、とても反撃は出来ないだろう。


 僕の疲労感は、大分軽くなっていた。

 もう一度、瞬間移動を使うべきか?

 いや、やはりリスクが高すぎる。

 僕達は、ガルシュがラナを引きずるようにして、少しずつ離れていくのを、黙って見ているしかなかった。


 少し距離が開いた、その時。

 唐突に、ガルシュがラナの方に注意を向けた。

 そして、下品な笑みを浮かべ、ラナの胸を左手で鷲掴みにする。


「……っ!」

 ラナの口が動いたが、恐怖のためか声が出なかった。

 ガルシュの外道な行為を見せつけられたことによって、僕は自分の頭に血が上るのを感じた。


 迷いは無かった。僕は、思い付いたことをそのまま実行した。

 瞬間移動の魔法を使う。自分に対してではない。もっと質量の小さな物……ガルシュが持っている剣に対してだ。


 それは成功した。

 剣はガルシュの手から消え失せ、僕とガルシュの中間地点に落ちる。


「何!?」

 武器を失って、ガルシュは動揺した。

 その瞬間、ラナがガルシュを振りほどく。

 そして、リーザが、ラナとガルシュの間に障壁を展開した。

「くそっ!」

 ガルシュは拳を振るった。破壊者(ブレイカー)の能力を使い、拳で障壁を破る。

 それと完全にタイミングを合わせて、ソフィアさんは攻撃魔法で、ガルシュの左腕を撃ち抜いていた。

「ぐっ……!」

 ガルシュが呻く。その隙に、ラナは剣を拾い、ガルシュに向かって突進した。


 今度はガルシュが障壁を展開する。

 しかし、ラナは破壊者(ブレイカー)の魔法で障壁を破り、そのままガルシュの身体を貫いた。

「ぐはっ……!」

 ガルシュは、その場に崩れ落ちた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ