作者の奇妙な夢見語り-生と死-
(作者が夢で見たものを小説風に綴った短編です。)
昔から奇妙な夢を見続けており、そろそろ本気で覚えきれないし1人で温めていても退屈なので書いていくことにしました。
死んでから誰にも見られないで終わってもつまらないので、誰か1人でも見て貰えれば面白いアイデアが生まれるかもしれないと他力本願ではありますが期待も込めております。
意味不明な箇所が多々あるかとは存じますが、その辺は皆様のご想像にお任せ致します。
つまらない世の中だと思った。
毎日が静謐で単純で無味に満ちている。
そうそれはまるで計算式のような日常だった。
1+1=2こんな当たり前のことを毎日やらされているような錯覚。
俺の日常もそんなだった。
〇〇〇
「悪いな、これ返却して置いてくれよ」
何故か友人から借りたDVDの返却を頼まれる。
そいつは古くからの友人で小学生から高校になった今まで一応友達としてはやってきた。
まあ話の流れからすると仕方がないし行かないとは言えないだろう。
俺はすぐそばにあるレンタル屋を思い任されることにした。
「じゃあな」
外は吹雪いていた。
図書館を後にした俺は勉強熱で疲れた体を急激に冷やされて身震いする。
歩いて行くと都合良くタクシーが駐車していた。
「お客さん?」
一瞬の逡巡に俺はタクシーを使うことを決めた。
どうせ帰り道の途中にレンタル屋はある。
こんな吹雪ではだるいだけだ。
〇〇〇
何気ないこんな思考さえも俺は単純に1+1をしているだけだった。
正解が2だと分かっていれば途中に1を代入することになんら躊躇しない。
それが俺であり、今の世界だと信じている。
しかし解答は2にならなかった。
〇〇〇
「ブレーキが――……!」
一瞬の浮遊感が俺を襲う。
何が起きたのか理解する間もなく自分はどこかに投げ出されたのが分かった。
無限の落下。
無限の……
俺は自分の体をたぐり寄せるように登っていった。
意識の上昇は果てしなく、自分の体を通り抜けてあっという間に地球の外側に出てしまう。
気がつけば俺は地球がどこにあるのかもわからない状態で銀河の群を眺めていた。
そうして地球を探してみると遥か彼方の銀河の影、ほとんど暗闇の中に全く見えない状態であることが何となく分かる。
むしろ手前の燦爛と輝く銀河の中には地球の文明を遥かに越えてわざわざネームプレートまで付いている星がある、地球のほうは探してやっと名前が表示されるような超超超下級な惑星だということがそれで分かってしまった。たぶんこの中では下から順に探した方が地球は早く見つかりそうだ。
「帰ってきましたか」
モニターを見ていたような錯覚に俺は声の主へ視線を動かす。
「……」
状況が理解できない。
というか、この木造建築は俺の記憶の中に1つもなかった。
「他の方の治療はここまでにしてください」
「はい」
助手のような白衣の人間とも思えないのっぺらぼうな女のような体つきをした奇妙な生き物が俺の周囲にいた誰か……いや、正確には先ほどの友達を動かしていく。
俺はその状態を見たときにぞっとした。
体は何かで固定されたように直立しており、頭部に半球体のヘルメットを被らされて治療というより洗脳に見えたからだ。
「君は……うん、戻ってこられたということは治療はひとまず終了だ」
戻ってこられた。
この意味することが理解できなかった。
俺は死ぬような事故を体験した後だしDVDはどうなった?
この場所なんて知らないし、そもそも目の前にいるやつが男か女かもよくわからない。
俺の脇を通り抜けた助手が俺に聞こえないように主治医のようなヤツに小さく声を上げる。
「もしかしたら記憶が戻らなく失敗している可能性があります」
「ああ、監視は怠るな」
まさにそれだと思うと俺は感じた。
記憶が戻ればこの場所に検討がつくらしい。
あり得ないと思った。
「ではお部屋にお帰り下さい」
これはもう一つの試練のような気がした。
いや、なんとはなしにそう思った。
単純に言えば病院のように部屋の扉が並んでいる。
こんな中から自分の部屋に戻れといきなり言われてもわかるわけがない。
俺はこんな場所に来た記憶なんて一度もないのだから。
しかし歩いてみると何とはなしに懐かしい人に逢いたい気分になった。
自分を愛してくれている人が待っているような気がしたのだ。
ここだな。
自分でも何故かはわからないが自分の部屋がわかった。
そこには茶色い段ボールを切り取ったような四方系に自分たちの歴史が書かれていた。
ようは治療過程である。
〇×▼2――。
書いてあることはどちらかというと象形文字に近かった。
それでもすぐに内容は理解できて、俺の愛しい人とその人の治療期間が書いてある。
だいたい2ヶ月くらいの感覚だというのがわかる。
〇△×2――。
恐らくは俺の治療開始記録なのだろう。
なんとなくこれを眺めていると地球に俺が生まれるきっかけを見たような気がした。
「2――か」
2ヶ月は早い。
いや、地球での2ヶ月は一瞬だが俺はそれがお前の一生分の時間だと言われている気がしていた。
ここでの2ヶ月がようは地球で普通の人間の一生なのだ。
おれは学生で終わったから実際には2ヶ月ではなかっただろう。
現に友人はまだあの不気味な器械で治療を続けていたのだから。
「待ってみるか……」
誰かが帰ってくる。
そう思った。
〇〇〇
俺は2ヶ月が2秒のような感覚があった。
確かに2ヶ月待った。そして待ち人もきた。
しかしその人は俺とは違っていた。
治療の意味がはっきりと理解できる。
何かが根本的に人間とは違うオーラを持った女性がそこにいた。
「早かったんだね」
俺は人と対峙している気分ではなかった。
真綿で包まれながらも厳しく自分を律しようとしてくるような愛情とも強制とも違う何かが俺の心をざわめかせる。
なぜか感じていたのは焦りだった。
「うん、君も……」
俺はこの時、確かに彼女が自分の伴侶だと思いながら彼女とは存在の格そのものが違っている自分を恥じていた。どう考えても、いや考えれば考えるほど――。
「緊急手術が必要です」
突如運び込まれてきた担架に俺は狼狽する。
俺はそれを受け入れるしかなかった。
人生で彼女も嫁もいなかった自分にも大切な人はいた。
しかし、その人を見ていると自分はどうしようもなく何かが欠けている。
それを取り戻すために俺は――
〇〇〇
そこは洞窟だった。
俺は生まれながらに一連の全ての記憶を持っていた。
しかしそれでは、よくならないのだ。
彼女が静かに近づいてくると俺の命にトドメを刺す。
これでいい。
なぜかわからないがそう感じた。
――俺の姿は一匹の狼だった。