表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/164

中間テスト後 その1

帰りのショートホームルームで――


スズメ先生「では、これで、中間テストは終わりだチュン。」


(きじ)「なんだ、1日で終わりかケンケン。このまま何日も続くのかと思ったケンケン」


みんなは胸を撫で下ろした。


スズメ先生「もしこのまま中間テストが終わらないと、・・・」


(ひよどり)「『期末テストとくっつくところだったチュン』というオチはだめですピーヨ」


スズメ先生「夏の手賀沼の花火大会にぶつかるところだったチュン」


・・・


(にわ)()「じゃあねえ、またあしたねフガ」


窓からどんどん飛び立って家に帰っていくクラスメートたち。


さあて、帰るとするか・・・。



「あっフガ」

庭子は重要なことに気づいた。


しまった、今朝は鷹子ちゃんの背中に乗せてもらって学校にきたから、ボートが無いんだった。

今朝のことなのに、まるで2週間くらい前のことのような気がするのはとても不思議だ。

朝は5月だったような感じがするが、今はもう梅雨入りしてしまったみたいだ。


ボートがないとなると、「ただ高」(注)の島まで、

ボート貸しのカイツブリのおじさんに迎えに来てもらわないとならない。


カイツブリのおじさんに電話をかけると、

迎船という札を立てて「ただ高」の島までやってきた。


「迎船代500円になりますキュリリリ」


高いよ。・・・でも、これは仕方ない。


・・・


おうちにて――


庭子パパ「そうか、今日、中間テストが終わったかコケ。

 ちょっと、どんな問題が出たか教えてコケ。

 どれ、お父さんに解けるかなコケ。」


庭子(嫌がって)「べ、別に、いいよ・・・フガ」


庭子パパ「別に遠慮することないだろコケ」


嫌々(かばん)からテストの問題を出す庭子。


庭子パパ「な、なんだ、この問題はコケ。

 『仲間外れはどれでしょう』って、どういうことだコケ。

 だいたい、教育上、仲間外れって言うのはおかしいコケ。

 学校に苦情を入れるコケ。」


庭子パパは電話をかけようとした。


「待って、待ってよフガ。」

庭子は必死に止めた。


「仲間外れって言うのは、一つだけ種類が違うって言っているだけでしょフガ。

 お父さんの言っているのは(まと)外れだし、ピント外れだよフガ」


「うまく、『外れ』の付いた言葉で切り返してきたなコケ。

 その()(じゃ)()に免じて、『仲間外れ』は良しとしようコケ。

 ・・・

 しかし、『シェフの気まぐれドリア』って言うのはけしからんコケ。

 ふざけてるコケ。学校に苦情を入れるコケ。」


庭子パパは電話をかけようとした。


庭子パパ「・・・『シェフの気まぐれ』と言ったら、『サラダ』に決まっているだろうコケ」


「待って、待ってよフガ。」

庭子は必死に止めた。

「もしあったら、恥ずかしいフガ。」


庭子パパ「なんなら、高級ミミズを()けるかコケ? 

 今日、お母さんが新鮮な生きたミミズを買ってきたコケ。勝ったほうがそれを食えるコケ。

 負けたほうは、どこぞの完全統制区域並みの飼料用トウモロコシだけだコケ。

 さあ、乗るか乗らないかコケ」


庭子「乗るよフガ。じゃあ、『シェフの気まぐれドリア』ってものが無いか、Googleか何かでお父さんが調べてよフガ」


庭子パパ「それは悪魔の証明(注)というものだろうコケ。

 『シェフの気まぐれドリア』ってものがあるということを証明しなければならないのは、庭子のほうじゃないのかコケ」


庭子「じゃあいいよ、私が調べるからフガ」


Googleで検索してみたら・・・、あったぁ、「シェフの気まぐれドリア」。

良かった、学校に変な苦情を入れられたら、本当に恥ずかしかった。


庭子「あったよフガ。・・・えーと、東葛飾復興協会の椋鳥(むくどり)さんっていう鳥が、『次回はシェフの気まぐれドリアをご紹介します』ってブログに書いてるよフガ。もしかしてこれって、お父さんが勤めているところだよねフガ」


庭子パパ「なんだってコケ? うちの協会だコケ。・・・

(電話をかける。プルルル・・)あ、ずんぐ・・・じゃなかった、椋鳥くん、コケ。

今すぐ『次回はシェフの気まぐれドリアをご紹介します』って書いてあるのを消してほしいんだコケ。・・・えっ、『あしたオフィスで話しましょうジュジュ』ってか、・・・やっぱり今すぐ消してもらうのは無理かコケ」


庭子パパは電話を切ってつぶやいた「くそ、うちの食いしん坊が余計なこと書きやがってコケ」


庭子「じゃあ、勝ったのは私だねフガ。

 ・・・

 あーおいしいフガ」

庭子は、ミミズをパクついた。


庭子は、生きたミミズを完全に飲み込まずに、

ミミズの頭を(くちばし)から出したり引っ込めたりしている。


庭子ママ「なに行儀の悪いことしているのホゲ。

 気持ち悪いホゲ。

 そんな食べ方、砂肝にもよくないよホゲ」

 

庭子「べろを出したり引っ込めたりしているみたいで楽しいフガ」

(と言ったのだと思う。ミミズを(くわ)えたままなので、なんて言っているのかよくわからない。)


庭子パパ「じゃあ、俺がその()()を引き抜いてやるコケ」


庭子「できるものならやってみてよ、ほら、フガ」

(と言ったのだと思う。ミミズを(くわ)えたままなので、なんて言っているのかよくわからない。)


庭子は()()()()()()を出したところを、庭子パパは嘴でパクついてやろうとするが、

庭子は首を振って逃げている。


まあ、(にわとり)さんちは楽しそうで結構なことである。




――――――――――――

【注釈】

「ただ高」:庭子が通っている高校の略称。()()(ぬま)の中に島があり、そこに、建っている。


「悪魔の証明」:()る物事・事象が無い・無かったということを証明すること。存在を示すには該当するものを1つ挙げれば済むが、「無い・無かった」を証明するのは極めて困難であるとされる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ