ランサムウェア その2
五位鷺「ちょ、ちょっと、調整する必要があるかもしれませんグワ」
蒼鷺「まさか、我がコロニー誇る五位くんが『脅迫文も暗号化されて表示されてしまいましたグワ』で話を終わりにするのかと思ったよゴア。
・・・
その調整の間、ヤツの顔を見たいんだが、
ヤツのパソコンのカメラは起動できるかゴア」
五位鷺「・・・ランちゃんと通信して・・・、できましたグワ」
蒼鷺「お、ヤツの顔が映っているぞゴア」
五位鷺「トサカを青くしたり、黄色くしたり、赤くしたり、取り乱しているのがよくわかりますねグワ。狙い通りですねグワ」
蒼鷺「ちょっと待てゴア。ヤツが取り乱しているのはファイルが暗号化されたからじゃなくて、ランちゃんの脅迫文がきちんと表示されてないからじゃないのかゴア。
・・・
あれっ、ヤツの背後に、デブがやってきたぞゴア」
五位鷺「あれは『ずんぐりムクドリ』という、食いしん坊のデブ女ですグワ」
蒼鷺「ヤツとずんぐりムクドリが何かしゃべっているんじゃないかゴア。ヤツのパソコンのマイクも起動させてくれゴア」
И <鶏庭太郎「さっきから、パソコンがうまく表示されないんだコケ。
どうなっているか見てほしいんだコケ」>
И <ずんぐりムクドリ「これは、文字化けだと思いますジュジュ。
ブラウザ(注)の文字コード設定をEUCにしてみましょうかジュジュ。」>
蒼鷺「ランちゃんは、脅迫文をブラウザで表示する仕様なのかゴア。
それはともかく、EUCって、欧州連合か欧州共同体かゴア?」
五位鷺「遉がに、リーダーは駄洒落が高尚ですねグワ」
・・・
お、私の調整の結果、ちゃんと表示されましたグワ。大丈夫ですグワ。」
蒼鷺「ち、違うだろうゴア。ちゃんと表示されたのは、五位くんのお陰ではなくて、
ずんぐりムクドリが文字コード設定をうまく変えたからだろうゴア。
・・・でもまあ、いずれにしても、うまく文が表示されたようだゴア」
五位鷺のパソコン画面の、庭太郎のパソコンのモニター画面には「お客様のファイルを暗号化しました」と表示されている。
蒼鷺「へぇ、意外と落ち着いた脅迫文なんだなゴア」
五位鷺「リーダーが、以前『「買わないと水に沈めるぞゴア」と言うのはだめだゴア』と言っていたと思いますグワ」
蒼鷺「お、ずんぐりムクドリがヤツのパソコンの前に座ったぞゴア。
あ、あれっ、ゴア?
ずんぐりムクドリが物凄い勢いで、訳のわからないコマンドを打っているぞゴア。」
五位鷺「何をしているんでしょうかグワ。」
・・・しばらくしたら、
五位鷺のパソコン画面の、庭太郎のパソコン画面を映しているモニター画面が消えてしまった。
蒼鷺「お前、何かしたかゴア?」
五位鷺「いいえ、何もグワ」
パソコン画面内の、ずんぐりムクドリと庭太郎がしゃべっている。
И <ずんぐりムクドリ「こいつらが、今回、このパソコンにしかけてきたやつですジュジュ。鷺のコロニーのようですジュジュ。」>
И <鶏庭太郎「あ、こいつ、鶴に偽装して俺の供託金を奪ったやつだコケ。」>
蒼鷺「バ、バレているのか、五位くんゴア?」
И <鶏庭太郎「そ、そうだコケ。完全にバレているぞコケ。」>
画面の中の庭太郎がしゃべってきた。
蒼鷺「こっちも向こうに映っているってことかゴア? ランちゃんに変な通信機能を付けるからゴア。通信がバレたんじゃないかゴア」
五位鷺「リーダーだって、喜んでいたじゃないですかグワ。」
И <ずんぐりムクドリ「今からそっちのパソコンのファイルを暗号化するぞジュジュ。ジタバタしても無駄だからなジュジュ。>
И <鶏庭太郎「おい、鷺野郎、供託金を返すか返さないかどっちだコケ>
五位鷺「リーダー、わかりましたグワ。なんで、庭太郎のパソコンの画面を映していたモニター画面が消えたのかグワ。多分、ヤツラのパソコンにもこっちのパソコン画面が写っていて、お互い映し合うと、画面の中に画面が見えるみたいな、マトリョーシカ状態になっちゃうんじゃないですかグワ。だから、ヤツラが消したのではグワ」
蒼鷺「い、今、もうそこは争点ではないゴア」
すると、五位鷺のパソコンには「お客様のファイルを暗号化しました」と表示された。
五位鷺「ヤツラがこっちのファイルを暗号化したようですグワ」
蒼鷺「くそっ、やられたかゴア」
・・・
尚、庭太郎のパソコンはずんぐりムクドリがバックアップしていたおかげで、ファイルの復旧が出来た。
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【注釈】
ブラウザ(ウェブブラウザ):インターネットのウェブページを表示するような、Internet Explorer, Firefox, Google Chrome, Safari, ・・・などのソフトウェアの総称。




