鷺のコロニー
詐欺師たちは詐欺道を極めるため勉強熱心だし、詐欺行為の準備にも抜かりはない。
詐欺師である鷺たちは、コロニーと呼ばれるアジトで、詐欺行為の準備を行っている。
例えば、カモリストの弛まぬメンテナンスも大変重要である。
蒼鷺「なあ、五位くん、例の鶏は、カモリストに追加してくれたかなゴア」
五位鷺「あの、鶏庭太郎ですかグワ」
蒼鷺「そうだゴア」
五位鷺「載せましたグワ。でも、リーダー、カモリストというんだから鴨ばかり載っているのかと思えば、
鶏も載せるんですねグワ」
蒼鷺「そんなに不思議かゴア」
五位鷺「ええグワ」
蒼鷺「まあ、でもキジカモ類という言い方もあるだろうゴア?
キジとカモは、まあ、広い意味で仲間と言えば仲間だゴア。」
五位鷺「キジカモ類・・・ですかグワ」
蒼鷺「わからないようなので説明しようゴア。
まずそもそも、鳥は、古顎類と新顎類に分かれるゴア」
五位鷺「無顎類というのはヤツメウナギなどのことですねグワ」
蒼鷺「多分ボケているんだと思うが、
その程度のボケでは、無学類と呼ばれるぞゴア。」
五位鷺「あはははは・・・、リーダー、『無学類』だって、あはははは・・・グワ」
蒼鷺「ご、五位くんゴア! そんな駄洒落で笑っているようじゃダメじゃないかゴア! こんなので笑っているようでは立派な詐欺師には遠く及ばないゴア。」
五位鷺「だってその駄洒落、どこかで聞いたことがあるような気がするからグワ」
蒼鷺「そ、そうかゴア? ・・・いや、そこも含めて笑ってはいけないゴア。・・・い、いいか、五位くん、詐欺師の大切なスキルはポーカーフェイスだゴア」
五位鷺「分かりましたグワ。」
蒼鷺「今は鳥の話をしているんであって、無顎類は関係ないゴア。
それで古顎類というのは駝鳥とかキーウィーとかだなゴア。
ヤツラは基本的に身近にはいないから関係ないゴア。
そんで、新顎類は、キジカモ類とネオアヴェス類に分かれるゴア。」
五位鷺「Wikipediaにも、
『原始的なキジカモ類と進化的な Neoaves に分かれる』と書いてありますねグワ」
蒼鷺「そうだゴア。『原始的なキジカモ類と進化的な ネオアヴェス』だゴア」(傍点部分は声を大にして読む)
五位鷺「でも、我々鷺が『原始的なキジカモ類』に属するというオチはないですよねグワ」
蒼鷺「そこは大丈夫ゴア。
そんなオチがあったら恥ずかしいので、先回りして調べておいたゴア。
我々サギは、ネオアヴェス類のペリカン目だゴア。
ま、一言で言うと、キジカモ類というのは、・・・」
五位鷺「キジカモ類というのは、・・・グワ」
蒼鷺「『アホ』だなゴア。
『おめでたいヤツラ』とも言えるゴア」
五位鷺「けっこう言いますねグワ」
蒼鷺「そうだゴア。最近なんだか物事をはっきり言わない風潮があるが、ここははっきり言わせてもらうゴア。
千葉県警のコジュケイたちは、キジ類なんで馬鹿で助かるゴア。
謂わば、キジカモ類は鳥類に於ける無学類だなゴア」(ドヤ顔)
五位鷺「・・・」(ポーカーフェイス)
蒼鷺「キジカモ類というのは見てて面白いとも言えるゴア。
例えば、例の鶏は鶏冠や肉ひげが、気分によって青くなったり黄色くなったりするから面白いゴア。
キジのように、顔を赤くして急に怒るやつもいるゴア。」
五位鷺「なるほどグワ」
蒼鷺「あと、鴨たちは水に関心があるんで、水素水などを売りつければいいゴア。
『上から読んでも水素水、下から読んでも水素水』というのが水素水の宣伝文句だゴア。
ちなみに水素水を売りつけると言っても、『買わないと水に沈めるぞゴア』と言うのはだめだゴア。今度そこは教えようゴア。」
五位鷺「水に沈めても浮いてきますものねグワ」
蒼鷺「そういう意味ではないゴア。
いずれにしても、キジカモ類を詐欺るのは定番中の定番ってことだなゴア。
ちなみに、ニワトリがキジの仲間というのは知っているよなゴア」
五位鷺「知っていますグワ」
蒼鷺「つまり、鶏をカモリストに載せるのは分類的にも理に適っているというわけだゴア。
こういう分類っていうのは勉強を怠らないようにしていないとわからないんだゴア」
五位鷺「勉強するってことは大切なんですねグワ」
蒼鷺「そうだゴア。五位くん、君の先祖が天皇から五位の位を受けたというのは立派だが、詐欺は実力の世界だゴア。常に自己研鑽と勉強が必要だゴア」
五位鷺「是非、私ももっと勉強して、我々詐欺師が大手を振って歩けるような世の中にしたいものですねグワ」
蒼鷺「五位くん、そうじゃないだろうゴア。詐欺師が大手を振ってはいけないだろうゴア」
五位鷺「そうですかグワ? 我々はいつまでも日蔭の存在でしょうかグワ」
蒼鷺「というか、 そこは鳥だけに・・・」
五位鷺「『そこは鳥だけに・・・』グワ?」
蒼鷺「そこは鳥だけに・・・」
五位鷺「何を引き延ばしているんですかグワ」
蒼鷺「引き延ばしているんじゃなくて、『ためている』と言うんだゴア。
そこは鳥だけに・・・」
五位鷺「・・・」
蒼鷺「そこは鳥だけに・・・『羽振りがいいですね』と言われたいものだなゴア」(ドヤ顔)
五位鷺「・・・」(ポーカーフェイス)
蒼鷺「えへんゴア。聞き逃しちゃったかなゴア。・・・もう一度言うぞゴア。・・・そこは鳥だけに・・・『羽振りがいいですね』と言われたいものだなゴア」(ドヤ顔)
五位鷺「・・・」(ポーカーフェイス)
・・・
五位鷺は蒼鷺に弟子入りしたときのことを思い出した。
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蒼鷺「君が星五位(注)くんか、ゴア」
星五位「はい、よろしくお願いしますグワ」
蒼鷺「立派な詐欺師になる心構えはあるかゴア」
星五位「はいグワ」
蒼鷺「将来、君が警察から"ホシ"(注)と呼ばれるまで、"ホシ"の名はお預けだゴア。だから、君のことはこれから『五位くん』と呼ぶことにするゴア」
・・・
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「初心忘るべからず」である。
ポーカーフェイスと勉強の大切さを認識した五位鷺は、
ヤツメウナギのようにリーダーに喰らいついていこうと決意したのだった。
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【注釈】
「星五位」:五位鷺の幼鳥。
「ホシ」:犯人のこと。




