立候補届出
―3月9日夜おうちにて。
「なあ、ニュース見て驚いただろうコケ。
俺の名前がテレビで流れていたろうコケ」
???
聞いていた庭子ママは何をどう答えたらよいのかわからない状況だった。
「ニュース見てないのかコケ。
知ってのトーリ、来たる3月26日は千葉県知事選の投票日だコケ。」
庭子パパは、徐に切り出した。
「でホゲ? 投票には行くけど、我々のような下々の鳥にはそんなに関係ないホゲ。」
「わたくし、鶏庭太郎は、この知事選に出たんだコケ。」
「選挙なら、いつも投票しているじゃないのホゲ?」
「「出た」というのは「出馬した」という意味だコケ。」
「投票所まで馬に乗っていくのホゲ?」
「『出馬した』というのは立候補したという意味だコケ。」
「ええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええーホゲ。それは無理ホゲ。」
「キャッチフレーズは、「東葛の、東葛による、東葛のための千葉県」だコケ。」
「そんなこと言ったら、東葛以外から袋叩きに会いますホゲ。」
「それから「東葛ファースト」だコケ。」
「何とかファーストというのは、少し前にはやった言葉よねホゲ。」
「そもそも選挙には、地盤・看板・鞄が必要なんだコケ。」
「それはこっちのせりふでしょホゲ。
地盤・看板・カバンはケッコーだけど、それは持ってないでしょホゲ。」
「大丈夫コケ。そこは我孫子市のオオバンさんに対応を依頼したコケ。
届出は鶴さんに頼んだコケ。
そして、今日、鶴さんの、届出が済んだっていう連絡を聞いてすぐに第一声を駅前で発してきたというわけさコケ。
そうだな、手応えはこれからだろうなコケ。」
「前回、無名の候補者がいて、見事敗れたホゲ。
その候補は、ポスターがないとか、選挙公報にも何も載せないという候補だったホゲ。」
「ということは、万が一今回俺の得票率が低くても恥ずかしくないコケ。
ま、トップ当選を果たすけどコケ。」
「トップ当選も何も、1羽しか当選しないけどホゲ。
票なんてほとんど取れなくて、千葉県の恥の上塗りよホゲ。」
「最悪、それはそれでケッコーなことだコケ。
恥の上塗りをするのが千葉県なら望むところだコケ。
俺にとって大切なのは東葛であって、千葉県ではないコケ。」
「でも、ニュースでやっていたのは、現職と新人3人の、計4人が届け出たって言っているだけで、あなたの名前なんて出てないよホゲ。」
「いや、今日、立候補したんだがコケ」
「なんでニュースであなたが出たって話になっていないのホゲ。」
「おかしいなコケ。届出担当の鶴さんが、ちゃんとやってくれているはずだがコケ。」
・・・
庭子パパ、鶴さんに電話する。
プルルルル・・・
庭子パパ「鶴さん、届出は済んだんでしょうコケ?
だったら、なんで、ニュースで私の名前が出ていないのコケ?」
相手の鳥「その話ゴア? それなら微妙な書類の提出が必要で、明日追加で出すからゴア。
その受付が済んだら正式に立候補が済んだことになって、ニュースでも名前がでますよゴア」
庭子パパ「だったらいいけどコケ」
・・・
「だけど、絶対に無理ホゲ。」
「ここは全身全霊で頑張るコケ。」
「はっきり言うけど、千葉県知事は絶対に無いホゲ。」
「だから頑張るって言っているだろコケ。
アメリカでは、予想を覆して、トランプが大統領になったんだコケ。
何が起こるかわからないのが選挙なんだコケ。
それに我が東葛地域はこれまで投票率が低めだったコケ。ということは "のりしろ" が充分あるということになるコケ。」
「伸び代と言いたいのホゲ?
なってほしくもないけど、絶対に無いホゲ。」
「もう、絶対に無いホゲ。
なんでかと言ったら、告示日は今日、3月9日だったからホゲ。
今日届出がすんでないなら、もう絶対にないホゲ」
"???" な顔をする庭子パパ。
「私としては、『告示日は今日、3月9日だったからホゲ』をオチとして、早く会話を終わらせたいホゲ。
立候補届出受付っていうのは、告示日の午後5時で締め切りなのよホゲ。」
どういうことなんだろう・・・。
明日、鶴さんに会って、届出がどうなっているのかよく訊かないと。




