高校受験2日目その3
さて、帰りだ。
「ヒヨコさんヒヨコさん、帰れないでしょうキッキッ。
乗せてあげますキッキッ。」
この声はオオタカだ。
「ありがとうピヨ。でも、今日はボートで来たものだからピヨ。」
「それでは・・・キッキッ」
と言うが早いか、さっと一瞬で居なくなった。
さて、庭子が島の岸に留めていたボートに乗ろうとすると、
ツバメがやってきた。
「あっ、昨日のツバメ君だねピヨ。」
ツバメ「昨日は、懐炉ありがとうチュピ。」
「昨日は私はオオタカさんに助けられたんだから、
世の中、人(?)への親切が巡り巡っているっていうことだねピヨ。」
ツバメ「金は天下の回り物ってことだねチュピ」
「それを言うなら、"情けは人(?)のためならず" のほうが近いような気がするピヨ。」
ツバメ「とにかく、僕たち受かるといいねチュピ。」
「ただ、私、そんなに理科とか数学が得意じゃないけどピヨ。」
ツバメ「大丈夫だよチュピ。
懐炉をくれたお返しとして、教えてあげるからチュピ。
受かったらの話だけどチュピ。」
「面接の先生は来てもらいたいって言っていたけどピヨ」
ツバメ「でも、僕も『来てもらいたいチュン』って言われたよチュピ」
「もしかして、みんなに『来てもらいたいチュン』って言っているのかなピヨ。」
ツバメ「ま、僕たちは受かるってことだよチュピ」
「受かったらまたここで会えるねピヨ。
私、中学校の記憶はほとんどないから、
高校生活は充実しているといいなあピヨ」
ツバメ「そうなのチュピ?
中学校の記憶はほとんどないなんて聞いたことないよチュピ。
でも、また会えたらいいねチュピ」
「それじゃあ、私はボートで岸まで帰るからピヨ。」
ツバメ「じゃあ、2人(?)で岸までボートで帰ろうよチュピ。」
ツバメと庭子はボートで岸まで帰ることにした。
ツバメ「実は僕、"矢切の渡し" も得意だよチュピ。」
「 "矢切の渡し" って江戸川にある舟のことピヨ?」
ツバメ「そうだけど、そういう歌があるんだよチュピ。」
ツバメ「それでは・・・チュピ。・・・
たーらーー・・・」
ツバメ君が前奏を終わって、これから歌い出そうというとき、
岸に着いてしまった。
意外と近いんだな。
ツバメ「あぁ・・・チュピ」
「いいよ、歌い終わるまで何度も往復しようよピヨ」
・・・
「"矢切の渡し"を歌いながら舟に乗るなんていいよねピヨ。
でも、ツバメ君は渋い歌が好きなんだねピヨ。」
「そうだよ、僕たちツバメは『土喰って虫喰って渋い』(注)って囀るんだよチュピ。」
―――――
【注釈】
「土喰って虫喰って渋い」:ツバメの鳴き声の聞きなし。「土食って虫食って口渋い」とも。




