高校受験1日目その3
今日は1日疲れた。朝からずっと試験だった。
試験問題は公表されるらしいので、省略しよう。
さて、帰りだわ。
この島から向こう岸に渡らなくてはならない。
行きに送ってくれたオオタカさんはいないのかなと思ったが、やはり居なかった。
考えてみたら、別に「帰りも乗せてもらう」という約束をしたわけでもなかった。
どうしようかな。
そうだ、
甘いお菓子を使おう。
試験が終わったときのために、自分へのご褒美と思って少し取っておいたんだ。
お菓子を置いてみた。
黄色いワニがやってきた。
「あなたが、手賀沼に住んでいるという黄色いワニなのピヨ?」
ワニは頷いた。
黄色いワニはしゃべれるかどうかは分からないが、
どうもこっちの言うことはわかるらしい。
「それでは、あなたたちの仲間と私たち鳥と、どっちが多いか、比べるから、できるだけ多く集めてよピヨ。
数えるからこっちから向こうの岸まで並んでほしいピヨ。」
なにやら「因幡 の白兎」というお話の展開みたいだ。
黄色いワニのほか、1匹のワニがやってきて、並んだ。
しょぼいな・・・
数えなくても、2匹じゃないかピヨ、
といってしまいそうになったが、やめた。
1歩1歩がやや長いから、翼も少し羽ばたかなきゃならないけど、
渡っていけそうだ。
「じゃあ、数えながら背中の上をぴょんぴょんぴょん、って渡っていくから、そのままにしていてねピヨ。」
「いーち、ピヨ。」
「にー、ピヨ。」
「さーん、ピヨ。」
「さーん、ピヨ。」で岸に着いた。
因幡の白兎の展開ではここで、白兎が「だまされた馬鹿なワニめ。ハハッ」と言って、怒ったワニ(サメだという説もある。)が白兎の毛を毟り取るという展開なのだが・・・、庭子はそんなことは言わない。
鶏は3歩歩くと忘れると言われている。
「さーん、ピヨ。」で庭子が岸に着いたときには、
庭子は、自分が何をしていたのかわからなくなって、
どうして目の前にワニがいるのかわからなくなった。
もし、庭子がここで物忘れをしていなければ、羽根を毟り取られていたかもしれない。
「ああ、なんだ我々は3匹なのか」と思った2匹のワニはそのまま、どこかへと姿をくらませて行った。




