高校受験1日目その1
さて、今日は、高校の受験日だ。
我が手賀沼の中に島がある。
そこにあるのが庭子が受験する「只野柏高校」、略して、ただこう、ただかしわ、ただの、ただかし、たこう、たこ、ただ、・・・、まあ略し方は色々あるってことだ。
こんな、沼の中に高校があるの?
庭子は訝しみながら、手賀沼まで向かった。
途中で、コンビニでお菓子を買った。
やっぱり、甘い物を食べると頭がフル回転しそうだ。
手賀沼に着いたら、確かに沼の中に島があって、そこに学校らしき建物が建っていた。
岸から島まで、意外とすぐ目の前だった。
しかし、その距離でも庭子には遠かった。
果たして飛びも泳げもしない庭子はどうやって島に辿り着けばいいのか。
近くにいたカイツブリのおじさんに訊いてみた。
カイツブリ「ああ、あれかい、それなら、飛んでいってもいいし、泳げるなら泳いでもいいんではないのか、キュリリリ。」
「でも、私は飛べないし、泳げないよピヨ。
どうすればいいかなピヨ。」
カイツブリ「わからないなキュリリリ。
鳥なら普通飛ぶとか泳ぐとかするのではないかなキュリリリ。
どうやって渡っていいかは分からないけど、いいことを教えてあげるよキュリリリ。
どうも、とある筋の情報によると、手賀沼には、時々黄色いワニがでるらしいよキュリリリ。」
「全然いいことじゃないよピヨ。」
カイツブリ「そのワニはヤキトリが好物らしいキュリリリ。」
「ますます良くないよピヨ。」
カイツブリ「けど、そのワニは生肉が苦手らしいキュリリリ。」
「何だそうなのかピヨ。それなら安心だピヨ。
なんせ、我々生き物は生肉そのものだからピヨ。」
カイツブリ「あと、甘いお菓子が好きらしいキュリリリ。」
「そうなのかピヨ。」
カイツブリのおじさんはどこかに行ってしまった。
庭子が少し佇んでいると、
上空に、パタパタスーって感じで、
大きな鳥がやってきた。
「ヒヨコさん、ヒヨコさん、どうしましたキッキッ?」
と言いつつ、庭子のところに降りてきた。
鷹の仲間だろうか。
鷹が降りてくるなんて、ちょっとびっくりしたが、そんなことも言ってられない。
「沼を渡れないんですピヨ。
これから "ただ高" の受験に行くのに・・・ピヨ。」
鷹「私もこれからそこに受験に行くのキッキッ。」
えっ、同じ中三なの?
どう考えても、ものすごく存在感があって、
見上げんばかりの大きな体形だ。
鷹「じゃあ、私の背中に乗ってよキッキッ。一緒に行ってあげるキッキッ。」
「ありがたいけど、大丈夫ピヨ?」
鷹「私はオオタカなのキッキッ。
お荷物の一つや二つ、背中に載っていてもどうってことないのよキッキッ。」
お荷物という言葉が気になったが、そんなことは言っていられない。
鷹「とにかく背中に乗ってキッキッ。
さあ、捕まってキッキッ。」
庭子がこのオオタカの背中に乗ると、
シュッ、・・・
ひとっ飛び、一瞬で島に着いた。
そう言えば、以前、鷹の上に乗って空を飛ぶ夢を見た気がする。
けど、そんなことを思う間もなく、島に着いたのだった。
まるで瞬間移動したかのようだった。
ああ、良かった。間に合った。
お礼を言うまもなく、オオタカは、サッ、と居なくなった。




