東葛の売りになるもの
東葛飾復興協会のオフィスにて――
電話がかかってきた。
И ＜蒼鷺「もしもし、コウノトリ康太郎ですゴア。先日お買い求めになったスレンダーへローン（注）はいかがですかゴア」＞
И ＜鶏庭太郎「ええ、まあ、使ってはいるんですが・・・なかなかぁ・・・コケ」＞
И ＜蒼鷺「スレンダーへローンの効果は一朝一夕というわけにはいきませんゴア。週に３回を基本に、根気良く続けることが大切ですゴア」＞
И ＜鶏庭太郎「はあ、そうですかコケ・・・」＞
И ＜蒼鷺「先ほどから鶏さん、元気がないようですが、どうしましたかゴア」＞
И ＜鶏庭太郎「当協会は、我が東葛地域を政令指定都市にすることを目指しているのですが、先日、浦安のウミネコから断られてしまったんですコケ・・・」＞
И ＜蒼鷺「そんな、ウミネコがなんですかゴア。浦安なんてこっちからお断りでいいじゃないですかゴア。浦安なんて東京湾で孤島になればいいじゃないですかゴア」＞
И ＜鶏庭太郎「ですが、最近、今度は千葉県がチバニアンという時代ができるとかで大盛り上がりですコケ」＞
И ＜蒼鷺「チバニアンがなんですかゴア。恐竜の化石が見付かったわけじゃないのにゴア。
あの地層は地球の地磁気の逆転が関係するんですがゴア」＞
И ＜鶏庭太郎「え、ええ、そのようですねえコケ」＞
И ＜蒼鷺「さあすが、トーリ大学出の鶏さんは違いますねゴア。
よくご存知でゴア。
ですが、千葉県の多くの鳥にとっては地磁気逆転とか言われても、
なんのことやらさっぱり、パッパラッパー、という状態ですゴア。
そんな千葉県なんてこっちからお断りでじゃないですかゴア」＞
И ＜鶏庭太郎「そ、それはいいですが・・・コケ。
我が東葛に何か魅力がなくては政令指定都市にもなれないし、千葉県から独立もできないと思うんですコケ。」＞
И ＜蒼鷺「そうですかゴア。
私、鶏さんの力になりたいですゴア。
では私も何か見つけたら、お知らせしますのでゴア」＞
２、３日後――
目白も椋鳥もいなくて鶏庭太郎が一人でオフィスに居たとき、
再び、電話がかかってきた。
И ＜蒼鷺「コウノトリですゴア。に、鶏さん、ニュースです、ニュースですゴア！」＞
（続く）
―――
【注釈】
「スレンダーへローン」：以前、蒼鷺がコウノトリと名乗って鶏に売った痩身器具。お腹に巻くと筋肉が勝手に運動するという感じのもの。
