2匹の羽毛二足歩行蜥蜴の事情
庭子たちのタイムトラベルの続き。
「僕たちは名前があるんだ」
庭子「ちょっと待ってよ、燕くんが今、折角『羽毛二足歩行蜥蜴』って名づけて喜んでいたでしょフガ」
「いや、そういう名前じゃなくて・・・固有名詞が・・・」
2匹の話によると、2匹はオスとメスであり、
オスはナギイ、メスはナミイという。
ナギイ「僕たちは筑波山に住んでいたんだ」
庭子「筑波山フガ?」
「或る山」とか「然る山」とか「彼の山」とかではなくて、筑波山なんていう、急に具体的な山が出てきたから驚いた。
ナギイ「筑波山に住んでいる親戚たちに、鋤を渡されて、『沼の中の泥をかき混ぜて島を作れ』と言われて、
それで、作ったのが、今、僕らが居るこの島っていうわけなんだ。」
ナミイ「そして、この島に沼の名前、『手下浦』と書いた柱を立てた。」
雉「ところで、キミたちは付き合っているのケンケン?」
ナミイ「『付き合っている』って?」
庭子「あの、その、・・・、なんていうか、恋愛しているのフガ?」
ナミイ「恋愛しているもしていないも何も、・・・、敢えて言えば幼馴染かな。
ずっと一緒だったから」
ナギイ「それで、僕たちはこれから結婚をするんだ」
ナミイ「これも親戚に言われたの。」
ナギイ「ところが、僕らがここにいたら、みなさんがきたので、
びっくりして、葦の陰に隠れていたんだけど、
ずっといるんでなかなか出られなくて、
我慢が出来なくなって。」
庭子「結構びびりや(注)なんだねフガ。一気に親しみが湧いたよフガ。」
ナギイ「それで、まあ、その・・・結婚のやり方を教えて欲しいんだ」
鵯「まあ結婚と言っても、式典のやり方は、
キリスト教か神道かイスラム教かによっても違うし、ピーヨ」
ナギイ「い、いや、そういう『式』じゃなくて・・・
あれをどうしてこうして・・・」
庭子「『あれ』って何フガ?」
ナギイ「結婚って・・・ほらさ、とんぼと蛙は結婚できない・・・みたいな。」
燕「『生殖能力を持った子孫を残せるか』という話、つまり種とは何かという話だねチュピ。」
ナミイ「そうだけど・・・そんな難しい話じゃなくて・・・」
庭子「それは、・・・・せ、せ、せ、せっ、せっ、・・・
のことフガ?」
ナギイ「そ、そ、その・・・」
庭子「せ、せ、せ、せっ、せっ、せっ、せっ、せっ、・・・
せっ、せっ、せっ、のよいよいよい・・・だねフガ。」
ナギイ「(ガクッ)つまらないよ。」
庭子「接吻のことだねフガ」
ナミイ「うーん、ちょ、ちょっと違う、接吻の先・・・」
雉「まあ、はっきり言って、僕たちは別にトカゲくんとは関係ないしねケンケン」
ナギイ「ま、そう言わないで。・・・
その、なんていうのかな、ま・・・
まうあぇ・・・・」
ナミイ「えっ、それ、・・・言うの?」
雉「『マウイ島』、ケンケン?」
ナミイ「・・・じゃなくて」
ナギイ「・・・まぐあえ・・・」
雉「『マグネチック島』ケンケン?」
ナミイ「・・・じゃなくて」
ナギイ「まがあい・・・」
雉「『マガディ湖』ケンケン?」
ナミイ「・・・じゃなくて」
ナギイ「まうわい・・・」
雉「『マウイ島』ケンケン?」
庭子「またフガ?」
ナギイ「まぐあいっていうやつ・・・」
雉「『マグダレナ島』ケンケン?」
ナギイ「もう、こうなったら、ナミイ、一緒に言おう・・・いっせーのぉーせっ!」
ナギイとナミイ「ま、ぐ、わ、い!」
庭子「ま、『ま・ぐ・わ・い』、だって、・・・きゃははは・・・フガ」
ナギイ「なに笑ってんだよ」
ナミイ「勇気を振り絞って言ったのに」
庭子「し、知らないよフガ。はははは、・・・
トカゲくんたちのまぐわいなんて・・・フガ」
ナギイ「僕たちはこれから2匹で交わって家族も持ちたいなと思っているのに」
庭子「『交わって』だってフガ」
雉「まあ、トカゲくんたちが居ようが居まいが、うちらには関係ないしねえケンケン」
―――
【注釈】
「びびり屋」:(軽蔑して呼ぶ語。)すぐにびびる(=怖がって竦む)ような性格である。




