翌朝
翌朝――
「失礼しますフガ。・・・雨燕くん、おはようフガ」
「おはようチリリリ」
ベッドで寝ていた雨燕は起き上がろうとした。
でも、どうやって起き上がればいいか分からなかった。
「先ず起きて溲瓶の中身をトイレに捨てるチリリリ。」
「そんなのは後でこっちでやっておくからケンケン。
小便臭いだけじゃなくて水臭いなあケンケン。」
・・・
雨燕「ほ、本当に今は、4月じゃないのチリリリ?」
燕「漸くことの重大性に気づいたようだねチュピ。
今日の新聞を見せてあげるよチュピ」
雨燕「あ、本当に今は9月なんだねチリリリ」
・・・
雨燕「本当に不思議だチリリリ。
でも僕って4月から9月まで5箇月間得したのかなあ、
損したのかなあチリリリ?」
燕「これは、興味深い質問だチュピ」
雉「それは得したんだよケンケン。
昔話みたいに、竜宮城に行った後玉手箱を開けたらおじいさんになったというなら損したってことになるけど、
これは得したんだよケンケン」
雨燕は歩けないので、みんなで担架に乗せて雨燕を校庭に連れてきた。
雉「雨燕を空に飛ばす道具を作ったよケンケン」
雉は叫んだ
「『あーまーつーばーめー かーたーぱーるーとー』、ケンケン!」
雨燕「何その、どこぞの秘密道具みたいな紹介の仕方はチリリリ?
普通に言ってほしいチリリリ。」
雉「『雨燕カタパルト』だよケンケン。」
雨燕「なんだ普通に言えるじゃないかチリリリ。」
・・・
雨燕カタパルトは、もう、校庭に設置されていた。
雉「野外実習のときに作ったペットボトルミサイルを改造したケンケン。
ペットボトルロケットの技術を応用した、ペットボトルミサイルを改造した、カタパルトだケンケン。
そして、見てくれケンケン。発射台には、円周率を入力するキーボードと、表示する液晶画面を備えているんだケンケン。
入力した円周率によって、角度と速度が変わるんだケンケン。
円周率は、3.1くらいに設定しようかケンケン・・・」
雨燕「野外実習なんて知らないし、そういう長ったらしい能書きは要らないチリリリ。
早く飛ばしてくれチリリリ。
円周率なんて4でも5でもかまわないチリリリ。」
雉「そう言えば、野外実習のときは雨燕は居なかったねケンケン。
ところで、円周率は理論的に4より小さいことがわかっているケンケン。
だから5というのはないんだケンケン。」
雨燕「じゃあ、別に3.1でいいチリリリ。」
ペットボトルの先に雨燕が腹ばいで乗るところがあって、
そこにみんなで雨燕を乗せた。
雉「じゃあ、行くぞケンケン」
鵯「さあ、カウントダウンスタート、ごぉ、よーん、さーん、にいー、いーち、スタートー、ピーヨ」
シュシュ・・・・・シュパッ。
雨燕は空に放たれた。
お、お、お、お、お、お、お、・・・・、
雨燕は、一晩寝て、しかも起きたばかりだから、少し体が鈍っていた。
お、お、お、お、お、お、お、・・・、
雨燕は体が斜めになって、なんとか体勢を立て直そうとした。
お、お、お、お、お、お、お、・・・、
「雨燕、羽ばたけよケンケン!」
ここで羽ばたかなかったら、そのまま放物線を描いて、
雨燕はもう少しで或るおウチにぶつかるところだった。
そのおウチには「雀鈴雄」という表札が掲げられていた。
スズメ先生のおウチだ。




