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ペングヰンとのお別れ

ペングヰンは、成田駅発・南極行きの飛行機で、南極に帰ることになった。

クラスのみんなで見送ることになった。


成田駅にて――


(きじ)「もう南極行きの切符(きっぷ)は買ったのケンケン?」


Pen(ペングヰン)「チッチッチッ、違うんだなペンペン」

ペングヰンは、指を立てて言った。


Pen(ペングヰン)「今は、Suica1枚あれば、南極に帰るのから西瓜(すいか)を買うのまで、なんでもできちゃうんだペンペン。

 ちなみに、南極でもSuicaは使えるんだペンペン。」


(ひよどり)「きゃあ、かっこいい、時代の最先たーんピーヨ。」


Pen(ペングヰン)「ま、こんな感じだペンペン。」


ペングヰンは、自動改札にSuicaをタッチした。


庭子「えっ、もう行っちゃうのフガ」


すると、自動改札の扉がパタッと閉まった。

「あれっ、ペンペン?」


すると、駅員らしき鳥がつかつかと寄ってきて、

「お客様、このカードは残高が不足しております、チュン。

 あちらの券売機でチャージしてください、チュン」

と言った。


「そっか、ペンペン」


「ぼけも最高だねフガ」


・・・


「よし、Suicaの上限20,000円までチャージしたペンペン。

 これで大丈夫だろう、ペンペン」


ペングヰンは、自動改札にSuicaをタッチした。


「えっ、もう行っちゃうのフガ」


すると、自動改札の扉がパタッと閉まった。

「あれっ、ペンペン?」


すると、駅員らしき鳥がつかつかと寄ってきて、

「お客様、このカードは残高が不足しております、チュン。

 あちらの券売機でチャージしてください、チュン」

と言った。


「くそっ、上限いっぱい入れても、南極に帰れないのかよペンペン。

 使えねえカードだなペンペン」

と地面にたたきつけた。


「もったいないよピーヨ」


・・・・


Pen(ペングヰン)「しょうがないな、あそこのみどりの窓口で、南極行きの切符を買ってこようペンペン」


・・・


鷹子「私たちも入場券買って、ホーム(注)でPen君を見送ろうキッキッ」


・・・


「だいぶ時間を無駄にしたペンペン。でもまあ、グリーン席だから、飛行機の中でゆっくりしようペンペン」


一行(いっこう)は、改札からホームまで行った。

南極行きの飛行機は既に、ホームに停まっていた。

まるで電車のような飛行機だ。


鷹子「出国の手続きはないのキッキッ?」


Pen(ペングヰン)「南極は国じゃないから、南極に帰るのに出国手続きとかはないんだペンペン」


鷹子「そしたら、南極を経由すれば、世界中どこへでも手続き無しで行けちゃうことになるのではキッキッ?」


Pen(ペングヰン)「凄く頭が切れるなあペンペン。さすが職務質問のプロだペンペン。 そんなこと考えたこと無かったペンペン」


・・・


Pen(ペングヰン)「みんな、南極も春になったらけっこう暖かくなるからいつでも遊びに来てくれ、ペンペン。」


雉「Pen君のいう『けっこう暖かくなる』はきっとけっこう寒いんだよねケンケン」


燕「南極のなんていう駅に着くのチュピ?」


Pen(ペングヰン)南極にはブリザードがあるから、天気のいいところを選んで降りるんだペンペン。

 だから南極のどこに着陸するかわからないんだペンペン。

 もし遠いところに降りたら、おうちに帰るまで腹ばいで滑っていくんだペンペン。」


鵯「その(かばん)はピーヨ?」


Pen(ペングヰン)「こ、これかいペンペン? これが僕が稼いだお金だよ、女子たち、見てご覧、ペンペン」


Pen(ペングヰン)はアタッシュケースを開いて、一万円札の束がたくさん入っているのを女子たちに見せた。


鵯「うわー、きゃあ、お金持ち、ピーヨ」


庭子「かっこいー、お金持ち、フガ」


2羽の女子はお金に頬をすりすりした。


鷹子(冷静に)「日本のお金は南極で使えるの、キッキッ?」


Pen(ペングヰン)「そっか、そこまで考えが及ばなかったペンペン。

 昭和基地で南極ドルに両替してもらおうかペンペン」


鷹子「わざわざアタッシュケースに入れて現金を運ばなくても、

 外国送金を使えばいいのではキッキッ?」


Pen(ペングヰン)「ま、そこは税金対策とか・・・じゃなくて、

 南極は国じゃないから、外国送金っていうのはないんだよペンペン。

 ま、もう、とにかく、出発時間だから、行くよペンペン。」


「南極航空 3141592便(注)、間もなく3番ホームから発車いたします、チュン。

 

 レディースアンドジェントルメン、Antarctica Airlines 3141592便 間もなく3番ホームから発車いたします、チュン。


 ペンペンペンペンペンペンペン、 ペンペンペンペンペンペンペン 3141592便 間もなく3番ホームから発車いたします、チュン」


日本語・英語・南極語の順番で、アナウンスが流れた。

ペンペン・・・っていうのが南極語だ。

英語は「レディースアンドジェントルメン、Antarctica Airlines」までは頑張って英語をしゃべったみたいだけど、その後は頑張れなかったので日本語になってしまったみたいだ。

南極語のアナウンスも同じだ。


「もう南極の海が呼んでいるんだペンペン。

 行くよペンペン」


ペングヰンはそう言って、くるっと飛行機のほうに向き、ピョンピョンピョンとホッピング(注)して、ドアから飛行機に乗り込み、ホーム側の席に座った。

挿絵(By みてみん)


飛行機のドアはすぐに閉まった。


機内は、南極に帰るアデリーペングヰン、皇帝(こうてい)ペングヰン、王様(おうさま)ペングヰン、ロイヤルペングヰン、チンストラップペングヰン、マカロニペングヰンたちで、ごった返していた。


ペングヰンは、窓の内側から手を振った。

すると、飛行機は、するすると滑り出した。


札束にすりすりしていた庭子は、「あっフガ。行っちゃうんだフガ」と気づいて、

飛行機と一緒にホームを走り出した。

庭子が

「ありがとうーフガ。泳ぎを教えてくれてありがとうフガ」

と言った。

その声は飛行機の中のペングヰンに届いたかはわからない。

飛行機は急に、びゆーんと速くなって、

離陸して、飛んでいってしまった。


「ああ、行っちゃったねフガ」



――――――

【注釈】

「ホーム」:駅のプラットホームのこと。


「3141592便」:まるで円周率の数字の並びだが、そのことに特に意味はない。なんでもよかったのでこのような数字の並びにしただけ。


「ホッピング」:跳行(ちょうこう)。スズメのように、両脚をそろえて跳ねて移動すること。

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