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OVER-DRIVE  作者: 陽芹 孝介
第1話 いい加減男と不思議な女
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……翌朝……



エリスはカウンター席に座り、マスターが煎れたコーヒーを飲んでいた。

休んでスッキリしたのか、表情は少しだけ晴れていた。

「去年バァちゃんが死んだの……」

おもむろにエリスはマスターに話始めた。

「わたし……両親は戦争で死んで、バァちゃんが育ての親だったの」

マスターが言った。

「たった一人の肉親かい?」

エリスは首を横に振った。

「ううん……両親もバァちゃんも、血は繋がってないの……。わたし捨て子なんだ……」

「そうかい……イヤな事を聞いちまったねぇ……」

エリスは微笑んだ。

「いいの……。バァちゃん、死に際に言ったわ……「アレルガルドに帰れ」って……」

「それで旅に出たのかい?にしても、無茶だよ……女独りで……」

「無茶はわかってる……でもアレルガルドに行けば、わかるかもしれないの……わたしが何者なのか……」

エリスは立ち上がった。エリスの側には大きなリュックがある……スーツケースだと動きにくいので、買い換えたのだろう。

マスターがエリスに言った。

「行くのかい?」

エリスは頷いた。

「うん。ありがとうマスター……お世話になりました」

そう言うとエリスは店を出て空を見た。

「いい天気……」

するとエリスの横から声がした。

「待てよ……」

エリスが声の方を向くと、ロックが立っていた。

エリスは目を丸くした。目を丸くしたエリスにロックは言った。

「ついてってやるよ……」

「えっ?」

するといつの間にやらマスターも店の外にいた。マスターはロックに耳打ちした。

「聞いてたのかい?」

ロックはマスターに言った。

「立ち聞きするつもりはなかったけどな……」

エリスは目を丸くしたままロックに言った。

「どうして?」

「別に……ただお前の力に興味がでただけだ……行くぜ、エリス……」

エリスは目を丸くしいたが、すぐに笑顔になった。

「うんっ!行こっ、ロック……」

ロックは怪訝な表情をした。

「なにニヤニヤしてやがる」

「初めて名前で呼んだでしょ?」

「るせぇ……」

ロックとエリスの旅立つ後ろ姿を見て、マスターは鼻で笑った。

「フッ……大丈夫かねぇ……」



……アデル総本部……



アデルの総本部のとある一室に、漆黒のスーツに身を包んだ、一人の女性がいた。

女性は長く美しい黒い髪に、白いマントを羽織っている。

「¥キングは壊滅しましたか……」

女性がそう言うと、部下らしき男が頷いた。

「はっ!治安維持隊が到着したころには……すでに壊滅状態でした。メインブレーカーが爆発されただけでしたので……一般人への被害はなかったようです」

女性は部下に言った。

「目撃証言は?」

「はっ!……それがあれだけの規模の組織が壊滅したにも関わらず……どの目撃者も「青白い髪をした男が一人で乗り込んだ」の証言しか……」

女性は鼻で笑った。

「フッ……そうですか……」

部下は言った。

「将軍……本当なのでしょうか?たった一人であの組織を潰すなんて……」

将軍と呼ばれる女性は、笑顔で部下に言った。

「引き続き調査して下さい……。ありがとう、もう下がって結構です」

将軍の美しい笑顔に、部下は顔を赤らめて言った。

「はっ!それでは失礼しますっ!」

部下はそそくさと部屋を後にした。部下が部屋を後にすると、笑い声が聞こえた。

「クククク……やっぱ先輩は面白いでさぁ……」

将軍は声の主に言った。

「やはり……ハーネストですか?ジュノス……」

笑っていた男はジュノスだった。

「多分……先輩、奴らの文句言ってましたから……」

「気まぐれで潰したと?」

ジュノスは首を横に振った。

「まさか……それは無いことは……姐さんも知ってんでしょう?でも、少し気になる事が……」

「なんですか?」

「いやぁ……先輩に聞かれたんですが……『アレルガルド』って国の事を調べてるみたいです」

将軍の表情が険しくなった。

「アレルガルド……」

将軍の表情にジュノスが反応した。

「知ってんですかい?」

将軍は鼻で笑った。

「フッ……いえ……。しかし安心しました……ハーネストが元気そうで」

ジュノスは苦笑いした。

「こっちが安心しても……先輩は嬉しくないでしょうね……あっ、それと『ジン博士』が『(おぼろ)』と接触したそうでさぁ……」

将軍の表情は再び険しくなった。

「テロリスト集団……朧……」



……アデル13番街……



ロックとエリスは13番街と14番街の境目にいた。

エリスはロックに言った。

「これからどうするわけ?」

「ここに行く……」

ロックはマスターから預かったメモを、指で挟んでヒラヒラした。

エリスは怪訝な表情をした。

「なにそれ?」

「俺の知り合いがいるとこだよ……」

「知り合いが?……でも何しに行くの?」

ロックは呆れた様子で言った。

「お前……歩いて世界を回るきかぁ?」

エリスは苦笑いした。

「確かに……」

「世界を旅するには必要なものがあんだろ?」

エリスは目を丸くした。

「あっ……」

ロックはニヤリとした。

「そう、飛空挺だよ……」

エリスの表情は一気に明るくなった。

「飛空挺っ!すごいじゃんっ!……で、そこに行けば手に入るのねっ?」

ロックは再び呆れた様子で言った。

「アホか……そんな簡単に手に入る訳ねぇだろっ!幾らすると思ってんだ?」

エリスは少しムッとした表情になった。

「じゃあ何しに行くの?」

「今から行くとこには、科学者がいてな……そいつが知り合いな訳……。そいつ飛空挺造ってるから、試作とかありゃあ……貸してくれっかもな」

エリスは納得したようだ。

「成る程……そう言う事……。で?その人の名前は?」

ロックは言った。

「『ジン・マクベス』……皆には『ジン博士』って、呼ばれてる」

ロックとエリス……二人は出逢い、共に旅することになった。

ロックとエリス……この二人の出逢いが、世界を動かす事になるとは、まだ誰も知らない。


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