②
大砲が鳴ったと同時に、各車一斉にスタートした。
とうとうバトルエアバイクレースの本選が始まったのだ。会場を一周して、市街地に出るのだが……勢いよく飛び出したのは……。
「このままぶっちぎってやるぜっ!」
①番のガンツ兄妹だ……。しかしそれを追う二組のペアがいる。
③番の豪腕狩人のボーク夫妻と、⑥番の運び屋グルス夫妻だ。
ボーク夫妻の妻は、弓矢でガンツ兄妹のバイクを狙い、矢を発射した。
勢いのある矢は、ガンツ兄妹を目掛けて飛んできたが……。
「マリーダ!」
「あいよっ!兄貴っ!」
ガンツ兄妹の兄、カストロが妹のマリーダに言うと、マリーダはボーガンから矢を二本発射した。
マリーダの矢は、一本は自分達を狙った矢を弾き、もう一本はボーク夫妻のバイクのフロントに直撃した。
ボーク夫妻のバイクはバランスを崩した。
「くそっ!バランサーがやられたっ!」
ボーク夫は必死にバランスを保とうとしたが……。バランスを崩したバイクはクルクル回転しながら、勢いよく会場の壁に激突した。
早くも一組の脱落が出た。
ボーク夫妻を仕留めたマリーダは、ガッツポーズしている。
「しゃーーっ!」
しかしマリーダが喜んでいるのも束の間……運び屋グルス夫妻が、ガンツ兄妹の真横に迫っていた。
「敵は一組じゃねぇーっ!」
グルス夫は運転しながら、兄のカストロ目掛けて斧を降り下ろしたが……。
「しゃくせぇーっ!」
カストロはグルス夫の斧を、ものともせずに、素早く剣で斧もろともグルス夫妻を、バイクごと弾き飛ばした。
グルス夫妻のバイクも、ボーク夫妻同様に、会場の壁に激突した。
「空賊と渡り合ってきた……空の船乗りをなめんじゃねぇっ!」
これで早くも二組が脱落した。
ガンツ兄妹の暴れっぷりを、見ていた後続のペア達は、ガンツ兄妹の戦闘力に驚いている。
その戦闘力に険しい表情をしているのは、すぐ背後にいる⑤番のミロとミカだ。
ミロは言った。
「あのボーガンは厄介ですね」
「兄貴の方もヤバイよ……。あの体勢でバイクごと弾き飛ばしたんだからね……」
ミカも渋い表情だ。
後方グループのロックとユイも、先程の戦闘に驚いている。
「へぇー……やるじゃねぇか」
ロックは感心した表情だ。
「言ってる場合かっ!アイツらそうとう強いよっ!」
ユイは焦った様子だ。
するとロックとユイのバイクを、前方にいた④番の……ハンターのマリュー&リュウが狙っていた。
後ろに乗ったマリューが猟銃で狙っている。
「感心してる場合じゃないよっ!堕ちなっ!」
マリューはロック目掛けて猟銃を発射し、弾丸はロック目掛けて飛んでいったが……。
キィーンッ!
マリューは目を見開いた。ロックは刀で弾丸を弾いたのだ。
「バカなっ!弓矢とわけが違う……。弾丸だぞっ!?……クソッ!」
マリューはすぐに二射目を準備した。
「ガキッ!」
ロックはユイにそう言うと、アクセル全開でマリュー達との距離をつめ、マリュー達の隣まできた。
「ガキじゃないって……言ってんだろっ!」
ユイはそう言うと、マリュー目掛けて投げ針を投げた。
ユイの投げた針は、マリューの頬をかすめた。
「この小娘っ!」
マリューは激昂し、猟銃をユイに向けたが……。
「マリューッ!よせっ!」
リュウの制止を聞かずに、マリューは猟銃の引き金を引いた。
ボォーーンッ!
マリューの猟銃は暴発したのだ。ユイは針を二本投げており、一本はマリューの頬を……もう一本は猟銃の銃口に入っていたのだ。
「キャーーーッ!」
マリューは叫びながら、バイクから落下した。
マリューを落とされた事に激怒したリュウは、剣をユイに振りかざした。
「このガキがぁーーーっ!」
ガキィーーーンッ!
しかしすぐさまロックが刀で、剣を受けユイを守った。
ロックはニィーっと笑って、剣をいなし、刀をリュウのバイクのフロントに突き刺した。
「悪く思うなよ……」
ロックが刀を抜くと、バイクはバランスを失い、煙を上げてクルクル回転した。
「くそがぁーーっ!」
リュウはバイクを乗り捨てて脱出した。乗り手を失ったバイクは、回転しながら壁に激突した。
これで三組の脱落が決まり、それ以外の出場者達は、次々と会場を飛び出した。
ロックとユイも続けと、会場を飛び出し、市街地を目指した。




