表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
OVER-DRIVE  作者: 陽芹 孝介
第六話 バトルレースと猛者達
20/30

ロックの挑発ともとれる行動に、リキは目を見開いて笑いながら言った。

「おもしれぇー……」

するとそんな夫を嗜めるように妻のカレンが言った。

「アンタ……油断大敵だよ。コイツなかなかの手練れだよ……」

「言われなくとも……」

そう言うとリキは、腰から大きな曲刀を抜いた。

ユイはその大きく曲がった刀に、少し怯んだ。

「なにあれ?めっちゃっ曲がってるよ」

リキの曲刀は、太陽の光を浴びて、ギラリと光っている。

リキは曲刀を構えて、ロックに言った。

「確かに只者じゃ無さそうだか……」

ロックは刀を構え、リキも戦闘体勢にはいった。

ユイとカレンは二人を見守り、リング上は緊迫感に包まれた。

ロックとリキ……それぞれの表情は険しくなり……。

二人同時に飛び出した。

「うおーーーっ!」

互いの気合と刀がぶつかり合う。

ガキィーーーンッ!

リキの巨漢から繰り出された曲刀を、ロックは刀で受け止めた。

互いの刀はつばぜり合いし、プルプルと震えている。

「俺の一刀を受けるとは……やるなテメェ……だが……」

リキはそう言うと、刀にさらに力をこめた。するとリキのパワーに、ロックの刀は押し込められていく。

ロックは受けきれないと判断したのか……リキの刀を上手くいなして、後方にジャンプした。

上手くリキとの距離をとったかに見えたが……ロックが着地したのとほぼ同時に、ロックの右側から、弓矢が鋭く襲ってきた。

カレンの狙い済ました一矢だった。

ロックの右こめかみ目掛けて飛んで来た矢を、ロックは間一髪で弾き飛ばす。

しかし、ロックが矢を弾き飛ばしている隙に、すでにリキがロックの間合いに入っていた。

「これは一対一(さし)の勝負じゃねぇぜっ!」

リキはロックのがら空きになった左側に、渾身の一撃を振るった。

ロックは矢を弾き飛ばしたために、刀でのガードが間に合わない。

ロックは目を見開きとっさに、リキに蹴りを入れ、その反動でさらに後方に逃げ、間一髪で曲刀を回避した。

リキはロックのとっさの判断に、目を見開いた。

(このコンビネーションもかわすかよっ!?)

ロックはそのまま後方に下がり、ユイの所まで戻ってきた。

ユイはこれまでの両者の戦いに戸惑い、ロックを見た。

ロックの左頬には切り傷ができており、軽く血が垂れている。先程の攻撃でついたようだ。

するとカレンもリキの側にやって来て、驚いた様子でリキに言った。

「アンタ……あの攻撃が避けられたよ……」

リキはニヤリとした。

「ああ……やっぱ只者じゃねぇ……。雑魚共を倒したのも、対多人数の戦い方だ」

ロックは左頬の傷を手で拭った。

「いいコンビネーションだ……。ちと、厄介だな」

今更ながらユイはロックに言った。

「アンタ……何者?……」

するとリキがロックに言った。

「テメェ……何者だ?俺らのコンビネーションを、かわすたぁ……やるじゃねぇか」

カレンもロックに言った。

「けど、そのお嬢ちゃんの反応を見る限り……どうやら急造ペアのようだね」

リキは再び曲刀を構え、カレンは弓を構えてロックに発射した。

「急造ペアでアタイらに勝てないよっ!」

カレンは矢を三本同時に発射し、それらはロック達に襲いかかる。

ロックは手でユイを押して、リング外に押し飛ばして、ロック本人も横飛びで矢を避けたが……。

ロックが矢を避けるのを予測したリキの曲刀が容赦なくロックに襲いかかる。

ロックの後方から、脳天を目指して振りかざされた曲刀を、ロックはなんとか刀を支えて受け止める。

しかしリキは攻撃の手を緩めることはない……リキはすぐに二撃目の攻撃をロックに行う。

ロックはそれを刀で受け止める事はせずに、体を反転させてそれをかわし、攻撃体勢に入ったが、またもや矢がロックに襲い掛かり、ロックはそれを刀で弾いた。

ロックはリキの追撃を予測し、リキとの距離を取ろうとした。

(チッ……弓矢が邪魔で、カウンターを入れれねぇ……)


一方、観客席から闘いの様子を見ていたエリス達は、ロックの状況にヤキモキしていた。

ジンはロックの状況に呟いた。

「ロックの奴……コンビネーションに手を焼いているな……。攻撃に入れていない」

「20~30人相手でも負けないロックが……」

エリスの表情も険しい。

ジンが言った。

「それほど奴らのコンビネーションが、成熟されているのだろう」

ロックは弓矢攻撃と曲刀攻撃を、華麗に避けてはいるが、攻撃ができないでいた。

マキはそんなロックを、サポートできないでいるユイを心配そうに見ていた。

(ユイ……貴女がロックさんをフォローしないと……。初めての実戦でどうしていいか……わからないのね……)


マキの心配通り、ユイはハイレベルな闘いに圧倒されていた。

(なんなの?コイツら……アタシに出来る事なんてないよ……)

ロックはバルバル夫妻のコンビネーション攻撃を、相変わらずかわしていたが……攻撃に入れていない。

しかしバルバル夫妻も焦っていた。何度攻撃をしても、ロックを捉えることができない。

リキの表情もいつの間にか余裕が無くなっている。

(なんで当たらねぇ?……俺らのコンビネーション攻撃で仕留められねぇ奴は、いないはずだ)

「カレンッ!Bプランだっ!」

リキがカレンにそう言うと、カレンはニヤリとした。

「あいよっ!」

「うおらぁーーっ!」

リキは雄叫びと共に曲刀を振り下ろした。ロックはそれをまたもやかわし、カレンの弓矢に備える。

予測通りカレンの弓矢がロックに飛んでくると思ったのだが……弓矢はロックではなくユイを狙っていた。

ロックはすかさずユイの元へ飛び、三本の矢の内二本を弾いたが……。

「グッ!」

残りの一本はロックの右二の腕に突き刺さった。

ユイはロックに叫んだ。

「ロックゥーッ!」

ロックに一瞬の隙が出来たのを、リキは見逃さなかった。

「カレンッ!撃ちまくれっ!奴の利き腕は、今は動かねぇっ!」

「あいよっ!」

カレンは再びロックに目掛けて、弓矢の三本撃ちをした。

ロックは刀で防ごうとしたが、腕が痛みで動かない。

「チッ……」

しかしロックは刀を左手に持ち代えた。

「うおーーーーっ!」

ロックは弓矢を勢いよく弾き飛ばした。

これにはリキも驚いた。

(逆手でカレンの矢を全て弾いただとっ!?)

カレンも目を見開いた。

(アタイの矢は、スピードはもちろん、強さもそうとうなもんだ。それを逆手で弾くなんて……)

ロックは「ふぅー」と息を吐いて、腕に刺さった矢を引き抜いた。

ロックの腕からは血が流れている。

「さすがにラチがあかねぇ……」

ユイはロックの腕から流れる血を見て、ロックに言った。

「なんで……なんでアタシを庇うんだよっ!?」

ロックは怪訝な表情をした。

「ああ?……何言ってんだお前……仲間だからに決まってんだろ」

ユイは目を見開いた。

(な……仲間……?)

ユイはロックに食い下がった。

「でもアタシなんにもできないよぉ……」

ユイは泣き言を言っているが、バルバル夫妻が二人のやり取りを、黙って聞いてるはずもなく、攻撃体勢に入った。

ロックはユイに言った。

「お喋りは終めぇだ……。お前は自分の出来る事をやりな……」

ロックはそう言うと、今度は自分からバルバル夫妻に仕掛けた。

リキはロックが向かって来たのを見て、カレンに言った。

「来たぞっ!カレンッ!」

「あいよっ!」

カレンはそう言うと、リキの側から離れた。リキの後方支援の為に離れたのだ。

リキはロックの攻撃に備えたが……ロックはリキには向かわずに、カレンを目掛けて突っ込んだ。

リキは舌打ちをし、カレンに叫んだ。

「チッ!カレンッ!」

「わかってるよっ!」

カレンはそう言うと、ロック目掛けて矢を三本放った。

ロックは矢を全て凪ぎ払い、そのままカレンに斬りかかった。

カレンはすかさず横に飛び、間一髪でロックの刀をかわし、すぐさま二射目を準備した。

ロックはカレンを追撃しようとしたが……それを阻止しようと、リキがロックに斬りかかった。

「チッ……」

ロックは舌打ちをすると、リキの攻撃に対応し、刀でリキの曲刀を受け流した。


観客席のエリス達はその攻防を、必死で追っている。

「やはり……ロックには部が悪い……。なまじ奴らが強いために、攻めあぐんでいる」

渋い表情でそう言うジンに、エリスが言った。

「このままじゃ……ロックが……」

マキはユイを見て再び手を合わせた。

(ユイ……貴女がすべき事を考えて……)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ