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OVER-DRIVE  作者: 陽芹 孝介
第四話 旅立と挨拶
15/30

……アデル中央本部……


アデル中央本部のとある豪華な一室に、アリエルはやって来た。

英霊参拝の帰りだったので、黒いドレスのままだ。

アリエルは息を整え、豪華な金のフレームが目立つ扉を開けた。

「アリエル・ノイヤー将軍っ!入りますっ!」

アリエルの入った部屋は、誰かの書斎だろうか……豪華な本棚に様々な本が並べられており、部屋の奥にはこれまた豪華な机と椅子があり、そこに白の法衣のような物に、身を包んだ男性老人がいた。

老人は優しそうな表情に、白くて長い顎髭(あごひげ)を生やしている。

老人はアリエルに微笑んだ。

「すまぬな……呼び立てて……」

アリエルは老人に対して敬礼した。

「はっ!ゼラフ右大臣様……」

老人の名は……アドリア・ゼラフ……。アデルの右大臣であり、アデルの政治と法を司る……アデルのNo.3である。

ゼラフはアリエルの格好を見て言った。

「楽にせよ……。ところで、出掛けておったか?」

アリエルは敬礼を解いた。

「英霊に会いに……」

ゼラフは感慨深い表情になった。

「お前は律儀だな……。儂も英霊達に会いに行きたいのだが……彼らの犠牲がなければ現在の我々はないからな……」

「右大臣様は御公務に追われております……」

ゼラフは軽く笑った。

「フッ……その公務もお前がいるから、やれるのだ……。感謝しておる……」

「勿体無い御言葉です……」

恐縮するアリエルに、ゼラフは再び微笑んだ。

「フォフォ……ほんとに感謝しておる……。戦争が終わり十年……アデル十傑は解散し、お前は将軍となった」

するとゼラフの表情は険しくなった。

「表向きには世界は安定し、人々は平和に暮らしておるが……。実際はそういう訳ではない」

「心得ております……」

ゼラフは続けた。

「人々の暮らしのためにも、アデルが徹底的に平和管理をせねばならんが……。お前も知っての通りアデルは一枚岩ではない……」

アリエルの表情も険しくなった。

ゼラフはさらに続けた。

「左大臣の動きが、活発になっておる……」

アリエルは目を見開いた。

「左大臣様がですか?」

ゼラフは頷いた。

「奴も政局争いに躍起になっておるからのぉ……。新大陸の発見に力を入れておるのだ」

アリエルは険しい表情のまま言った。

「では……マクベス博士の研究所の破壊は……」

ゼラフの目は鋭くなった。

「可能性はある……。ロメロを抱き込んだところで、儂らがジンに接触をするのを恐れたのかもしれん」

アリエルは言った。

「それでは……朧は左大臣が?」

「証拠はないがのぉ……。アリエルよ」

「はっ!」

「世界が安定すれば、必ず起こる争いがある……」

ゼラフは苦笑いした。

「それは、『誰が』世界を治めるか……。不毛な争いじゃ……」

アリエルは感慨深い表情をした。

ゼラフは言った。

「これまで以上に新大陸の発見と、開拓に力を入れてくれ。儂らはこの戦いに、負けるわけにはいかん……」

複雑な表情のゼラフに対して、アリエルは言葉を発する事はなかった。



……ウィング操縦室……


操縦室に戻った一行は、出航の準備をしていた。

エリスとジンはロックに注目し、ロックはニヤニヤとしていた。

ジンがロックに言った。

「で……その言い考えがとは?」

資金調達に言い考えがあると言ったロックに対して、ジンは怪訝な表情をしている。

ロックは言った。

「ここから近くで、さらに金回りがいい所と言えば?」

ジンはハッとした表情で言った。

「まさか……」

ロックはさらに悪いニヤつきをした。

「そう……『ゴールドアイランド』だ」

エリスはゴールドアイランドの事を知らなかったが……そのネーミングから嫌な予感がした。

エリスは恐る恐るロックに聞いた。

「ねぇロック……それって……」

「ヒッヒッヒッ」と笑うロックに代わり、ジンが言った。

「ゴールドアイランド……簡単に言えば、ガジノの付いているリゾート島だ」

ロックは目を輝かせた。

「一発勝負じゃあーっ!」

エリスは頭を抱えた。ロックが万年金欠の原因を垣間見た気がした。

ジンは言った。

「悪くない……」

エリスはギョッとした。まさかジンがロックの提案に乗るとは、思わなかったのだ。

「ちょっと……ジン……」

すると不安そうなエリスに、ロックが言った。

「何だエリス……お前ビビってんのか?女独りで旅に出たわりに……度胸がねぇなぁ」

ロックは何とも言えない、悪い顔をしている。

これにはエリスもカチンときた。

「度胸がない?ふざけないでよっ!博打でも何でも、やったろうじゃないっ!」

ロックは不敵に笑った。

「へっ……んじゃあ行きますかっ!」

「ゴールドアイランドにっ!」

ロックの言葉に、ジンは力強くレバーを引いた。

飛空挺ウィングは凄まじい轟音をあげ、空に浮いた。

こうしてロック一行の、前途多難な旅が始まった。

それぞれの想いを、自分達の翼に乗せて……大空を飛び立った。


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