[第十五話]失う覚悟と優しさ
なんか最近の内容がつまらなくなってたり、無駄な事をしていた気がします…。
もっと自分が面白いと思えるように書かないとな…!
ルドウィンが言った。魔法をやるという言葉。その言葉に蓮は思わず聞き返した。
ある意味これ程魅力的な言葉は無いだろう。
それに今は力を扱えるとはいえ、元々は蓮自体魔法も何も使えないただの"無能"だったのだから。
だがそれと同時に幾つものリスクも考えられる。
ただ単純に考えれば、自分の使える魔法を一つあげる。という事なのだろうが。その魔法自体が弱かった場合。
今の自分の目的は迫りつつある勇者達と魔族の戦争から瑠花達を守る事。
その為には今ある努力改造と全才能はこれ以上ない程に使える力である。
それをわざわざ手放す事までして遠紀を復活させるべきなのか否か。
遠紀が復活する。という事は確かに大きな。いや、凄まじい戦力を手に入れられる事に相違ない。だが、蓮は少しだけ怖かった。
"自分自身がまた無能になってしまう"
かもしれなかったからだ。
自分の大切な人を守りたいのに力が無いから守れない。
力が無いなら武器を…と思い作った手榴弾もウォシュムガルムには殆ど通用しない。
そんな状態でようやく手に入れた力。
元々の自分の力も解放されているが使い方が分からないので使用出来ない。だからこそ本当の意味での力。
その根源である二つの力を失う事が少しだけ怖かった。…だが、それと同時に理解した。
理解したが故にこんな質問をした。
「…あの、仮に受けたとして遠紀が復活したら…遠紀は元の力を取り戻す…んですよね?」
果たして返って来た返事はこうだった。
「…あぁ、コイツがラズフィちゃんの依り代となる事を決意した時から必死に作ったモノだから…間違いないと断言しよう。…その代わりキミの中から感じる遠紀の力は失われる。」
「っ……!」
気付かれた事に思わず驚きの声を漏らした。だが直ぐに表情を元に戻す。…そもそも相手は千年以上生きている老エルフなのだ。それくらい出来てもなんら不思議ではない。
そしてルドウィンの答えは自分が求めていた答えであった。
思わず苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。だがグッと堪え、蓮は答えた。
「分かりました……お願いします」
「分かった。では、目の前に立ってくれ」
その言葉にルドウィンが頷くと目の前に立つよう指令された。その言葉に蓮は頷き、ルドウィンの元へ近寄る。
「それと遠紀もだ。お前の身体を依り代から元の人間へ戻す。今の状態。つまり、遠紀とラズフィちゃん…だったかな?ウォシュムガルムが蓮という依り代の中にいる状態から、遠紀だけを引っ張り出す。それで良いかい?」
「構いません」
「俺は別に構わない。…だが、蓮はそれで良いのか?もしかしたらスキルが無くなるかもしれないぞ」
その言葉には迷わず蓮は頷いた。
しかし、次の遠紀の発言に一瞬ストップする。理由は先程考えた事。自分はまた無能になってしまうのかという恐怖。だが蓮はそれをグッと飲み込み、頷いた。
「……薄々思ってた。このままじゃ間に合わないって。…戦争に巻き込まれる俺の幼馴染を助けられないって…。」
遠紀のスキルは色々な意味で規格外であった。ハッキリ言えばどちらか片方あれば十分にチートと呼ばれるようなスキルなのである。
確かに自分は強くなった。
どんな事だって一度で覚え、レベルが上がればドンドン能力も上がった。
しかしそれと同時に短か過ぎる制限時間と、恐怖。
このままじゃ、いずれ自分は能力を過信して潰れてしまう…と確信してしまうほどのスキルの強さ。過ぎた力は身を滅ぼす。昔からよくある言葉。実際に自分自身がそうなってしまうかも…と感覚的に蓮は思ってしまったのだ。
そして最も重要なのが制限時間。少なからず後一週間とそこらで瑠花達は戦場へと赴く事になるのだ。そう考えると、自分が強くなる為の時間が足りない。足りなさ過ぎる。
苦渋の決断でもあった。
力を失ってしまう恐怖。だが、蓮はその感情よりも瑠花達を救う事を優先した。自分自身の力を捨てて救う事を選んだのだ。
「じゃあ、始める。このオーブに二人とも手を触れてくれ」
そう言ってルドウィンが取り出したのは、光の儀式の時に蓮達が目にしたあのオーブだった。目の前で見るとより分かるのだが、そのオーブはとても透き通っていて、淡い緑色を浮かべている。
そのオーブにまずは遠紀が手を触れた。
オーブには変化が無い。
ただただ淡い光を放っているのみである。
「次は俺か…」
蓮はそう呟いてからオーブを軽く見る。
見た目は、まんまオーブだが、あれに触れると自分と遠紀を分離することが出来る…とルドウィンは言っていた。
それと同時に蓮の中にある遠紀の力は完全に遠紀の元へと戻ってしまうとも。
だが、それ以上に蓮は遠紀を出す事を優先した。そう、決断した。
勿論決してそれだけが理由なのではない。
ラズフィ…も理由の一つなのだ。
今の遠紀は、あまりにも有名な為に外へ出ることがほぼ不可能だ。だけど、そんな遠紀だってラズフィと遊んだり、外へ出て暮らしたい筈なのだ。
だからこそ、蓮はいずれ自分という牢獄から遠紀を出そうと考えていた。
確かに、あの二つのスキルを失うのは辛い。
今まで使えていた魔法は使えなくなるかもしれない。
今まで教わった剣技が出来なくなるかもしれない。
だが、元は才能無しだったのだ。
自分の才能が解放された今、その才能さえ扱えれば強くなれるかもしれない。
仮に才能が弱くたって、元の強さが上がったから鍛えようはある。
現代兵器だって、まだまだ改良の余地はあるし銃だっていずれ作る。
可能性はまだあるのだ。
そして蓮は自分の可能性を信じた。
だからこそ蓮はオーブへと迷いなく手を伸ばした。
そしてオーブへその真っ直ぐと伸びた指先が
ーーー触れた。