[第十四話]会話
どうも。ゆうポンです。
活動報告にてお知らせしたい事を書きましたので見ていただけるとありがたいです。
「ルドウィンって…確か遠紀の知り合いじゃ…」
そうだ。確かこの村に着いた時に遠紀が自分の顔馴染みの店を紹介するとか言っていた。しかし、その時はそれらしき人物は見かけなかったらしく自分も会う事が出来なかった。
そう言った蓮が目の前のエルフの老人を見て戦慄した。
何故なら目の前の老人の姿が歪んだからだ。
これも比喩では無い。いきなり目の前の老エルフの姿がスライムのようにドロっと溶けたのだ。そしてモニョモニョと新たな姿が形成されて行く。
「なんだ…これ?」
思わず蓮が呟く。
だが次の瞬間、先程の老エルフは完全に姿を変えていた。
「久し振りだな、遠紀。それと初めまして。日向 蓮君。」
見た目は二十代位だろうか。
かなり若い。
髪の色も先程までは白い髪だったが、今は黒になっている。
そして何より身体つきや声までもが変化していた。しかし、何故か怒りに似た感情が見える
「私はルドウィン。一応この村の長老をやっている。よろしく…と言っておこう。まぁそれはおいといてだ……!」
語気を少し荒げながら遠紀を睨みつけるルドウィン。その行動に遠紀は驚いた表情を浮かべる。
「なんで私…。いや、もうこの口調はやめよう…。…なんで俺が怒っているのか…分かるよな?遠紀?」
一言で言うならば怖かった。
それこそ一体何をしたんだよ。遠紀と尋ねそうになってしまうくらいには。
「え?…えーっと…。来た時すぐに会いに行かなかったから…か?」
遠紀が少し考える素振りを見せ、答えたが。
「馬鹿野郎ッ!!二年後にまた会おうって約束したじゃねぇかこのバカ勇者!!」
そう言って遠紀の肩を掴み激しく揺さぶる。
その表情は明らかな怒りと約束を1000年も破られたという理不尽が籠っているように蓮は感じた。
「ちょっ!やめ…気持ち悪い…!吐くからやめろ!」
その手を遠紀は振り払おうと躍起になるが、力が強いのか中々外せないようだ。
ハッキリ言おう。自業自得である。
その様子をラズフィの目を手で覆い隠しながら蓮は感想を思い浮かべる。
しかし気になることが出来た。
目の前のルドウィンという名のエルフ。
彼が使う魔法はいずれも見たことや聞いたことの無い魔法ばかりだ。恐らく先程の変身魔法らしきものは見た感じ身体を初期化し、再構築しているようにも見えたがそんな事は元の世界ならともかくこの世界では不可能な筈。
魔法の力…?いや、待て。
本当に変身しているのではなく認識阻害をしているのだろうか。
だとすると先程の魔法は精神にはたらく認識阻害魔法なのだろうか?
何にせよ気になるのは確かだ。
「わ…悪かったって!でも俺からしたら体感でニ年しか経ってな「馬鹿野郎!」ゴハッ…!」
遠紀の方を見ると、ルドウィンがぶん殴っている様子が目に映った。
再度言わせてもらおう。自業自得だ。
だが、このままにしていては話が進まないので介入することにする。
「えっと〜。ルドウィンさん?。そろそろやめてあげて貰えませんかね…」
蓮の言葉にルドウィンが動きを止め、此方を向く。その顔は少し憂鬱そうな表情を浮かべていた。後でご愁傷様ですとだけ言っておく事にしよう。
「…何で目を隠したの?」
そこにラズフィが少しジト目で俺の方を見ながらそんな声をあげる。
…あれ?また少し成長したのだろうか?
口調が少しだけ変わっている。
だがそれは置いておいて蓮は質問に答えた。
「それは…。遠紀がラズフィの為にならないことをしていたからだ」
そうラズフィに教え込もうと口を開けると、いきなり変態のような動きで垂直に遠紀が立ち上がる。
「待て!蓮君!君は何を教えている…!?
ち…違うぞ!俺は約束を違えてしまっただけ…「違えるのにも限度があるわボケェ!!ニ年っつったのに何、千年も待たせてんだ馬鹿野郎!」
遠紀の言い訳をルドウィンが押さえ込んだ。その様子に思わず蓮は溜息をつく。
「ともかくラズフィにはまだ早いから。
見ちゃいけないよ。俺との約束だ」
「う…うん…」
何処か納得出来ない表情を浮かべるラズフィだが、無理矢理頭を納得させたようで遠紀の方を向き、こう言い放った。
「変な事は良くないよ」
「ぐっ……あぁぁあああ!!」
その言葉に遠紀が発狂し、暫くの間会話が不可能になったのは余談である。
それから二十分後。
ようやく我を取り戻した遠紀を確認し、話が再開された。
「…さて、まぁともかく久しぶりだな遠紀。」
「おう。ルドウィンも元気してみてぇじゃん」
「ったりめーだろぉ?俺はエルフだぜ」
そんな会話をした後に「ハッハッハ!」と笑い声を上げる二人。…なんと言うか、同窓会か何かですか?ここ。と言ってしまいたくなる光景だ。
「えっと…ともかく聞きたいんですが、ルドウィンさん。ここに俺達を呼び出したのは何でですか?」
ともかく蓮は本題を切り出した。
この調子だと明日…または明後日まで時間が掛かりそうだ。
「あぁ、君達を呼び出したのは二つの理由があってね」
蓮の質問に、ポンっと手を打ってまるで思い出したかのようにルドウィンが口を開いた。
…二つ?どういうことなのだろうか?
「一つが、旧友との再会、そしてもう一つが俺からのお願いだ。勿論お礼もする」
ルドウィンが真剣な表情に変わる。
「「お願い?」」
その言葉に蓮達は疑問の声を浮かべた。
「あぁ、そうだ。魔族は知っているな?」
「ッ!」
魔族。
様々な種族を現在進行形で襲い、戦争をし掛けている種族だ。
…ただ、この情報は城からもたらされたモノだから信用は出来ないが。
「実は…リノンという娘がいるんだが、
其奴は旅人なんだが、妹が魔族に攫われたらしくてな。実は、其奴の両親にはかつて世話になったことがあってな。なんとかしてやりたいのだが、良かったら協力してやってもらえないか?勿論すぐに探せとかそう言うわけじゃない。
旅をしながらで良いんだ。あいつを連れて行って欲しい」
そう言って頭を下げるルドウィン。
突然の事に蓮達は困惑する。
「リノンって子…?あぁ、あのピンク髪の…」
先程まで共に行動していた人物を思い出す。
「そうだ。勿論礼はする。例えば遠紀。お前を復活させたり、認識阻害の術を掛けることが出来るアイテムもやる。そっちの君には私の魔法を一つやる。だからーー」
「ちょっと待って下さい!
魔法をやるってどういうことですか!?」
会話の途中で謎の言葉が出てきたので蓮はツッコミを入れた。
本当なら、「お礼は入りません。分かりました俺達に任せて下さい」と言う場面だが、そんなのを守っていてはこれから先生き延びれないと思う。
そして今回蓮が疑問に思ったのは、"魔法を一つやる"という言葉だ。
そして蓮は真剣な表情でルドウィンを見据えると、こう質問した。
「魔法をやるって…どういうことなんですか…?」




