[第十二話]勇者達視点その2
またもや日が空いた…。
というよりも夏休みが終わり、書く時間が減ったというのが正しいでしょうか。
それと、PVが60万!
総合ユニーク数が10万を超えました!
ありがとうございます!
「まず俺は一ノ瀬 颯太って言うっス。スってのは口癖なので見逃して欲しいっス」
そう言って頭を下げる一ノ瀬。
次に一ノ瀬の横にいた関西風の少年も口を開く。
「ワイは柊 黒鬼や。
よろしゅうな。」
そう言って柊が瑠花達に手を伸ばす。
その手を瑠花は掴むと同時に口を開く。
「はい。此方こそよろしくね。一ノ瀬君。柊君」
「ちょっと瑠花……」
そう言ってニッコリと微笑む瑠花の姿はよく見れば分かったが無理をしているのが伺えた。異世界召喚初日から付き合いがある紫苑には見て分かる程に。
それを知ってか知らずか一ノ瀬は
「じゃあお疲れのようっスから部屋で続きを話しましょうっス。俺の部屋でオッケーっスか?」
一ノ瀬の部屋は綺麗に片付いていた。
そしてそこのベッドに一ノ瀬と柊が腰掛ける。その机を挟んだ反対側の椅子に瑠花達も腰掛けていた。
「で、話って何なのよ?言っておくけど瑠花を傷つけるような真似したら許さないからね」
紫苑が一ノ瀬達の話す前に釘を刺す。
その言葉に当然っスと言いたげな表情で一ノ瀬が頷いた。そして話し始める。
「じゃあ、俺が考えている事を言わせて貰うっスよ。まず、現在の状況からっス。」
そして一ノ瀬は空中で何やら手を動かすと、パサっという音を立てて一枚の紙がテーブルの上に舞い降りた。
そしてそれを拾い上げ、一ノ瀬が瑠花達に見せる。
その紙を覗き込む瑠花達だったが…
「これは、この国の資料っス。
それも最重要書類っスから見つかったら極刑は免れないっスね」
「「!!?」」
一ノ瀬の言葉に思わず目を見開き、驚いた表情を浮かべる。しかしそれも一瞬で、次の瞬間には紫苑が声を上げる。
「な…!なんでそんな資料を持っ「シッ…ス…。あまり騒ぐとバレちゃうっスよ」
その紫苑の口を塞ぎ、口元でシーっと言う。そして説明を続けた。
「これは、これからの俺達の使われ方って言うんスかね?まぁ、これから戦争でどう俺達勇者を使い潰すかについて書いてあるっス」
しかし、その言葉にすぐ瑠花から反論が入った。
「でも、一ノ瀬君?どうやってこの資料を手に入れたのかな?」
「それは、まぁスキルとだけ言っておくっスよ。……それに。スキルってのは極力隠した方が良いっスよ。これから先、駆け引きが重要になるっスから」
その返事に納得のいかないような声を上げる紫苑。
「駆け引きって…。何処と?」
その質問を受けた一ノ瀬がため息を吐く。そして柊の方へ視線を向けた。
「そりゃ、決まっとるやろ?。
この国。エターナル王国と、魔族。
分かりやすく言うなら敵全てに決まっとるやないか?」
「「っ…!!?」」
その視線を受けた柊が当然と言いたげな表情を浮かべながら言った。
その言葉に驚愕を露わにする二人。
更に柊が続ける。
「…あんたらも分かっとるやろ?
現在の俺達の状況がな。
今の俺達は首の皮一枚や。
いや…。既に一人切り捨ててしもうた時点で皮すらない。身が見えていていつ食われてもおかしくないような状況や。」
「「……っ!!」」
言われて気付いた。
蓮が国に見捨てられて、死んだという事実で胸がいっぱいで何も考えられなかったけど、良く考えれば自分達の状況は非常にマズイ。
もし、ウォシュムガルムが復活した瞬間をエターナル城下町の人々に知られた場合、誰がどう言おうとヒカルが黒になる。
勇者達の中で最も強く、大勇者という自分達とも一線を画したヒカルが…である。
そうなれば当然、勇者達は立場を失う。
もし、勇者一人がやったならばその人を処罰するだけで良かった。
でも、今回は自分達をまとめる立場のヒカルが魔族に加担しているかもしれない。と言うことになる。
そうなれば当然、ヒカルだけではなく勇者全員が疑われる。
いや、それだけならばまだいい。
最悪の場合、極刑。または着の身着のまま国外追放。
流石の自分達も武器無しでは戦えない。
それに魔法使いであったとしてもその状態は苦しい。
しかし、蓮を生贄にすることで自分達は辛うじて立っている。
だが、今立っている場所もまたいつ崩れるか分からない。
顔面が蒼白になっていくのを感じた。
横を見ると紫苑も顔を真っ青にしている。
「…分かったみたいっスね。
それなら俺がお二人に声をかけた理由も分かるんじゃないっスか?」
その表情を見た一ノ瀬が二人に声を掛けた。
「……瑠花のフォーチュンスキルと私のフォーチュンスキル…ね…」
「正解っス。考えたら出来るじゃないっスか」
瑠花のフォーチュンスキル。
簡単に言うならば治療や回復。
その他補助魔法のエキスパートだ。
そのうち蘇生も出来そうなくらいの勢いである。
そして紫苑のフォーチュンスキル。
紫苑の場合は、元より攻撃系魔法が長けている。その中でも水魔法。
リヴァイアサンの加護のお陰で、水系に関しては彼女に並ぶ者は居ない。
「でも…私のフォーチュンスキルは水だけしか…」
しかし、疑問が浮かぶ。
瑠花のフォーチュンスキルは、回復という面では瑠花以上の者は勇者の中に居ない。
だが紫苑の場合は、確かに紫苑よりも水の扱いに長けた者は居ないものの、そこまでこのスキルが使えるとも思えない。
それ故に紫苑は疑問であった。
何故、自分がこのような話をされているのかが。
「リヴァイアサンって言うのは、海の怪物っス。」
「……?」
すると、一ノ瀬が急に話し始めた。
「リヴァイアサンと言うのは、元は旧約聖書に出てきた海の怪物っス。
神によって創造され、陸の怪物であるベヒーモス。またの名をバハムートと言うんっスが、それと対比される存在っス。
多分、これが皆の思ってるリヴァイアサンだと思うんスが間違いは無いっスよね?」
そう言って確かめるように瑠花と紫苑の顔を見る一ノ瀬。
その言葉に紫苑が頷く。
「間違いは無いって…リヴァイアサンって海の怪物でしょ?」
何を当たり前の事を…と、紫苑が口に出す。しかし、一ノ瀬はじゃあ続けるっスよ。と口を開いた。
「じゃあ、リヴァイアサンは悪魔でもあるって事は知らないんスね?」
「ちょ…ちょっと待って…!?
リヴァイアサンが悪魔…!?」
いきなりとんでも無いことを口走る一ノ瀬に紫苑がストップを入れる。
しかし一ノ瀬はそれを手で制して続けた。
「リヴァイアサンのまたの名は、
レヴィアタンっス。」
レヴィアタン。
神が天地創造の5日目に造りだした存在で、同じく神に造られたベヒモスと二頭一対を成すとされている。
悪魔の9階級においてはサタン、ベルゼブブに次ぐ第3位の地位を持つ強大な魔神とされる。
「…なるほどな。お前がこいつを誘った理由が分かったわ」
すると、柊が理解出来たような表情を浮かべた。
「…どういうこと?」
瑠花が質問する。
「一言で言うなら可能性…やな。
こいつは、ただ水魔法の扱いが上手いだけやなくて、もしかしたら魔族を支配下におけるかもしれんっちゅう事か…。」
「そう思っておけばオッケーっス。…じゃあ、ここから本題っスよ」
柊の言葉に一ノ瀬が頷く。
そして本題という言葉に三人が反応する。
「じゃあ話し始めよう…いや…始めるっスか…。俺達が生き残る道の開拓への道標を」
そう言って一ノ瀬は口を三日月型に変え、ニヤリと笑った。