[第三話]心境
今回短いです。
放り投げた手榴弾が緑色の龍の前で爆発する。これは旧式の残りだ。火種石が入っていないので少々危険だったが上手く行ったので良しとしよう。
「良し…次はっ…!」
次に蓮は素早くアイテムボックスを開き、城で見た神器を取り出した。
それと同時に煙が晴れ、シールドで身を守っている龍の姿が目に映る。
先程の手榴弾より強い爆弾だと思ったのか先程よりも大きいシールドだ。
「グルァァァァァァアアアア!!」
龍が雄叫びを上げた。まるで勝利を確信したかのように。
(チャンス…!上手くいってくれよ!)
それを見た蓮が先程取り出したアーティファクトを素早く構え、魔力を送る。
「行くぜ!炎結界!」
「グルァァァァ!!?」
次の瞬間、赤い色の結界が龍を囲むように張られる。そう。その神器とは、炎結界を張るためのものだった。フィーネさんにこういうものもあるよ。と教えてもらったからこそ直ぐに分かったのである。そしてそれを見た龍が驚きの咆哮を上げた。
「良し…一部分だけ開けてっと…」
しかし蓮はそれを無視して結界の一部分だけを消滅させた。それを見た龍が自分を守るためか更に大きなシールドを展開する。
「頼む…!そのシールドが水であってくれよ…!」
それを見た蓮はそう呟いて魔力を溜める。
「真似だけど…!煉獄炎!!」
次の瞬間、蓮の手からマグマのような熱線が放たれた。とてもじゃないが、遠紀の威力には及ばない。だが、その熱線は真っ直ぐ一直線に先程蓮が一箇所だけ開けた空間へと飛び込んで行く。
そして龍のシールドに触れた瞬間!!
ジュッ!!という音を立てて白い…水蒸気のような煙が炎結界の中に溜まっていった。
(きた…!後は俺の魔力が持つかどうか…!)
その様子を見た蓮は思わずガッツポーズをしそうになるがそれを堪え、熱線を放出し続けた。
「グルァァァァァァアアアア!!?」
龍は、突然現れた謎の煙に驚きの咆哮を上げ、そしてより大きなシールドを展開した。
龍と蓮の根比べだ。蓮の熱線が龍のシールドを蒸発させ、龍のシールドは蓮の熱線が蒸発させる速度を上回る速さでシールドを創りつづける。
しかし、この根比べは直ぐに終わりが来ることとなった。
(水蒸気の膜が崩れかかってる…!そろそろ来るか…!)
チラリと結界内を見た蓮は最後に一瞬だけ爆発的に力を込めた後。魔法を使うのを辞め、後ろに倒れこみ頭を抑えた。
その直ぐ直後であった。
激しい爆発音。まるで噴火のような音の爆発音が響いた。それと同時に結界が跡形もなく吹き飛び、もくもくと黒い煙が上がる。
「くっ……うぅ………」
起こった風圧や振動に耐えながら蓮は作戦が上手くいった事を本能的に理解していた。
「良かった…あの龍のシールドの成分が水じゃなかったら…しかも冷たい水じゃなかったら…あぁなってたのは俺だった……」
思わず安堵の息を吐く蓮。
やがて煙が晴れていき、露わになったのは生き絶えた龍の姿だった。
水蒸気爆発。
水が非常に温度の高い物質と接触することにより気化されて発生する爆発現象。
龍のシールドが水だったからこそ可能だった爆発だった。
「よっこらせっと…」
蓮が立ち上がる。
すると木の裏からーーー。
「いや〜お疲れ様!!」
そういって能天気な声質のまま遠紀とラズフィが現れた。
「…あぁ」
だが蓮は嬉しそうな表情などは一切せず、遠紀達の方を見るとゆっくりと足を踏み出した。
「……思ったよりも反応が違うもんだね…。
殴ってくると思ってたんだけど…」
その様子を見た遠紀が少し意外そうな声を上げる。だが蓮の表情は変わらず硬かった。
「そんな事しないよ…。それよりも俺はやらなきゃいけない事があるんだ…。ふざけている訳にはいかない」
先程までの自分はふざけ過ぎていた。
…どうして忘れてしまっていたのだろうか。
…そもそも決めた筈である。あの夜に。
「……肩の力を抜いた方がいい。蓮君。君よりも経験が多い僕が言うんだから間違いは無い。…君がどうしてそこまで思っているのかは分からないけど…。これだけは言える。君は気負い過ぎている」
遠紀の言葉にピクッと反応する。
だが、蓮はこう答えた。
「…だけど…。俺は弱い。だから強くならないといけない。それなのに俺だけふざけているわけにはいかない…。そうだろ?…確かに力は解放されたし。チートのようなスキルも手に入れた。…だけどこれだけじゃダメなんだ。…これだけじゃ…」
その蓮の目は紅いままだったが、微妙な変化があった。まるで様々な感情が入り乱れたかのようなグルグルとした感情。そんな目に変わっていた。
その様子を見た遠紀はゆっくり近付く。
そしてーーー。
「…フッ!」
コンッ…という音が額で響いた。瞬間。蓮の目の色が元に戻る。
「…あれ?俺は……」
「気にすることないよ。僕のメニューについて来れれば君は強くなれる。…きっと守りたい人を守れるようになれるよ。…僕がラズフィを守っているように」
その遠紀の目は慈愛のような。そんな笑みを浮かべていた。先程まで何となく意識が遠かった気がしたがそれに構わず蓮はーーー
「ラズフィ…ちょっと来な」
「うん?分かった」
そう言って寄って来たラズフィを後ろに隠し、そっと教える。
「あのなラズフィ。多分だけど遠紀…いや、あの若作りジジイ…実は幼児性愛者なんだ。
このまま関わっているとラズフィに手を出しかね」
「ちょっと待て!!ストップ!タンマ!ここはそんな空気じゃない!
そして僕は幼児性愛者じゃなぁーい!!」
そんな遠紀の叫びが静かな森全体に響き渡ったのだった。
そしてその様子を見ながら蓮は誰にも聞こえない声でこんな事を呟いた。
(ありがとう…。遠紀)
その声は誰にも聞かれるでもなく。ただ蒼い空へと吸い込まれていったのだった。
文字数について。
ちょっと忙しくてあまり文字数かけませんでした(すみません)。
ストックとかは無く、毎日リアルタイムで書いているのでどうしてもこうなることがあります。
(最悪投稿出来ない日もあります)
ご理解をよろしくお願いします。
2014年10月19日。修正を加えました




