[第二話]無茶振りと決めた事
今回で説明を一旦区切り戦闘と修行パートに移行します。
それも多分3話くらい書いたらストーリーに移る予定です。
森。
蓮が辿り着いたその森の中では。現在。凄まじい音を響かせながら走り続ける二つの影があった。
「チッ!」
舌打ちしながら木の根を飛び越える。
それを追いかけるかのように緑色の龍のようなドラゴンは飛行していた。そして
「グルォォォォオオオ!!」
その舌打ちに呼応するかのように蓮の背後ではドラゴンの雄叫びが森全体に響き渡ったのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
こうなる二十分前。
「つまり全才能は、戦闘に関してなら例え魔法の適性が無くてもその属性の魔法を使ったり出来ると」
「うん、そうだ。まぁ使い方の説明としては…少し手を出してくれ」
蓮はこの時、遠紀からスキルに付いての説明をしてもらっていた。どうやら、全才能は分かりやすく言うならフォーチュンスキル以外ならどんなアビリティでも出来るようになるスキルらしい。そしてもう一つ。
"成長に限界が無くなる"そうだ。
普通ならばある程度レベルが上がった時点でステータスは頭打ちになるのだが、それが無くなる。つまり、永遠に成長し続けるということだ。
ただし修練が必要なので努力型チートってやつだろう。
そしてもう一つ。努力改造。これは、努力すれば努力するほどステータスやスキルやフォーチュンスキルが強くなっていく。そして努力した時に、その努力がすぐ実りやすい。
そして努力していくうえで限界が訪れても突破出来る。突破した場合大幅な補正がつくというものだ
二つともかなりのチートスキルだが、現在の蓮は殆ど修行も何もしていないのでステータスが上がっただけであまり変わりは無い
「何で手を?」
「火属性の魔力を君の中に流す。流した時に多少感覚が分かるだろう。だからそれを再現して見てくれ」
そう言って蓮の手を遠紀が取って何かの力を流す。
「ッ!!」
すると何か暖かいものが身体中を駆け巡った。血液の流れ?違う。だがそれに似た何か。恐らくこれが火属性の魔力というやつなんだろう。
「じゃあ、実践して見てくれ。」
「分かった……」
そう呟いて蓮が身体の中の魔力を動かす。
(さっきの暖かい感じに変化……変化…)
先程感じた感覚と同じように魔力を性質変化させていく。するとーーー。
「こう……か…?」
「あぁ、そのまま弾幕を作る」
遠紀が頷いた。そして言うとおり手の上で魔力の弾が出来るようにイメージをしながら魔力を集めるとーーー。
「で……出来た!」
紅い弾が出来た。炎を帯びている。
「うん。後はそれを基本にして発展だね。例えば………」
それを見た遠紀がオッケーマークを指で作った後に魔力を行使する。
次の瞬間、その魔力を一気に外に放出した。
「いくぞ…!煉獄炎!!」
遠紀が叫んだ。と同時に大火力なんて目じゃ無い…いや、まるで山のような炎が辺りを覆い尽くした。その様子に
「熱っ!!熱っつ!!」
「いや…熱くないだろ…」
「熱っつ……ってあれ?熱くない」
蓮は思わず叫びながらピョンピョン飛び跳ねるが、遠紀が冷静にツッコミを入れた。
そして冷静になった蓮が飛び跳ねるのをやめると、不思議と熱さを感じなかった。
「これが…応用ってやつさ。ほら。木だって燃えてないだろ?」
「な…なるほど……」
よく見ると木や草も一切燃えていない。しかしーーー。
「ガルルゥゥゥウゥ!!」
「ッ!!」
不意に近くの草陰で狼のような叫び声が響いた。蓮が慌ててそちらを振り向くとそこにはーーー。
「グ……ルゥ……」
狼型のモンスターが燃えていた。
そして蓮の目の前で生き絶える。
「これって……!」
「そう。モンスターだけを殺す炎だ。応用すればこんな事も出来る。そして更にーーー。」
そう言って遠紀が蓮の剣を手に取った。
「魔法剣…火剣!」
その瞬間剣の色が紅く変わる。そして炎を帯びた。
「炎剣レーヴァテインってね」
そう言って剣を軽く振るうとーーー。
ボボボボ!!という音を立てて地面が斬れた。断面が焦げて白くなっている。
「……………は?」
いや、明らかに危ないだろ。人に向けたら死ぬよコレ。そしてなんで空中で軽く振ったのに地面が斬れてんの…と思うくらいの火力だ。…こんなの人に向けて使う技じゃない。
「まぁこういうことも出来る訳だ。
まぁ今の僕じゃ君が成長してくれるまでは君の近くじゃないと力を使えないからね。早く強くなって欲しいものだね」
そして指をパチンと鳴らすと先程までの炎は消え、剣も元通りになった
そして剣を蓮に向かって放り投げる。
「うわっ!とと……」
慌てて空中で剣をキャッチした。
すると遠紀が口を開く。
「にしても装備はそれで良いのかい?
アイテムボックスの中に僕が集めた名剣や防具とか入っているけど」
(え?マジですか?まさかの装備チート?
ってかよく考えたらそうですね。
元々このアイテムボックスって遠紀のだもんね。そりゃ……って……え?
もしかしてアーティファクトとかも大量に入ってたりします?
そしたら完全にチートじゃないですかやだー。最弱なのに装備だけアレってなんなんだ。
…と…。落ち着け。脳内がギャグ思考になってる。…ここは現実だ。それにこんな事考えてる暇はない…。今まで余りの状況変化について行けてなかったけど…瑠花達は今。少しずつ戦争に…!)
思わず思考がギャグっぽくなってしまったが、思い出した。…自分の今の状況を。
今。瑠花達は戦争を始める準備。確か後二週間後。…だが、ウォシュムガルムの件を
考えるともう少しは伸びるだろうが少なからず一ヶ月中には戦争に突入してしまうのだ。
「…レベルに合わせて装備するのも良いし、自分の力で集めるのも良い。最強装備にしたって構わない。だけど僕としては今、強い装備にすると、装備に頼った戦い方しか出来なくなるからオススメはしないけどね」
その様子を見た遠紀は少し柔らかい表情をしつつも言った。
まぁ確かにその通りだろう。今、最強装備とかを付けてしまっては後々の戦いで、装備よりも技術になった場合勝てなくなる。やはり強くなりたいし、一度、装備は見送るべきだろう。
それに…考えるのは後にすべきだ。今は…少しでも早く話を理解して自分自身を鍛えること。それが最も重要なのだから。
「分かった。じゃあ装備はこのままにしとく。そういえば、アイテムボックスの限界値ってどれくらいなんだ?」
「アイテムボックスは、基本積載量が凡そ100t。後は個人個人が持つ器の大きさが加算される。昔は器は結構一般的だったけど今じゃ殆ど知られてないけどね」
そう言って遠紀が頭をポリポリとかいた。
(って、確か大型トラックの積載量がが5t以上なんだよな。つまり、大型トラック20台分!?40坪の木造建築が家具合わせて約71tだから家ごと引越し出来る程度か)
「…かなりの容量だな」
驚愕の表情を浮かべながら蓮は呟いた。
するとーーー。
「お兄ちゃ〜ん!」
「ちょっと待て。いきなりどうした」
背後からラズフィの声が響く。
って何故にお兄ちゃんなのだろうか?と思いつつ蓮は振り向いた。
「?お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ?」
「ちょっと待とうか。落ち着け。何処ら辺がお兄ちゃんなんだ?」
コテンと頭を傾げるラズフィ。可愛らしいが今はそれよりも尋ねる。するとーー
「目の色がおんなじ〜」
「…………は?」
思わずラズフィの顔を凝視する。
ラズフィの目は…紅い。
だが、ここで疑問が生じた。
(……あれ?自分の目って黒だよな…。)
そう。自分の目の色は黒である。
そもそも日本人なのだから当たり前だろうが。
「あ、そうか。はい」
そう疑問に思っていると遠紀がアイテムボックスから鏡を取り出した。
そしてそこに映っていたのはーーー。
「…はぁ…?」
そう。まるで中二病のように目が紅くなっていた。そして鏡を放り投げすぐさま遠紀の肩を掴み激しく揺らす。
「ちょっと!これはどういうことなんだ!!」
「お…落ち着け!揺らすと…喋れなっ!」
数分後ーーー。
ようやく落ち着いた蓮が説明を受ける。
「つまり……神霊…つまりウォシュムガルムが俺の中に入ったから目が変化したと」
「うん。そういうことだ」
考えてみれば簡単な事だった。
というよりも理由がそれしか無かったとも言えるだろう。
「で、お兄ちゃん」
「うん。お兄ちゃんはやめろ。レンで良い」
またも可愛らしい声で上目遣いをしながらお兄ちゃんと声を上げるラズフィ。
このままそう呼ばれていると、もし勇者達に会った時、勘違いされそうなので訂正しておく。
「……?レンお兄様?」
「お兄様ってなんだ…犯罪臭がするからやめろ。…レンで良い」
「分かった!レン」
「良し。それでオーケーだ」
そしてようやく呼び方が改善出来た時。
「グ…ォォォォォォオオン!!」
不意に大きな咆哮が響いた。
少し草木が揺れる。足元には小さな地響きが感覚として身体に伝わってきた。
「!?なんだ…!」
そう呟いて蓮は油断無く辺りを見渡す。
「あー。そうか。」
すると合点がいったように頷く遠紀。
「お前何か知ってるのか?」
蓮が尋ねると遠紀は頷いた。
「うん…丁度良かったよ。さて、ここからは真剣に行くよ。蓮君。まずはこの鳴き声の主と戦ってくれ。」
そしてそう言った後にラズフィを抱えて茂みの中に避難する。
「オイ。ちょっと待てって!倒せってどう」
そこまで言った瞬間後ろが暗くなった。
何と無く嫌な予感がしつつも…いや。
嫌な予感しかしないが蓮が振り向くとーーー。
「グルォォォォォォォオオオオ!!」
そこには緑色の龍が居た。
2mくらいありそうな大きな牙と爪が印象的だ。
回想終わり。
そして現在蓮は絶賛逃走中だった。
「…クソッ!何なんだよ!」
「逃げてばかりじゃなくて戦いなよ」
「無茶言うな馬鹿野郎!」
遠紀が馬鹿げた事を口にするが蓮は聞く耳を持たず、ただ脱兎の如く逃亡する。
「クッソ…!炎弾幕!」
無茶言うなとは言ったが、このままじゃ追いつかれるのは分かりきっている。
なので走りながら瑠花達の技を真似して炎の弾幕を創り放出したがーーー。
「グッガァァァァァアアア!!」
「全然効いて無い…!チクショウ!」
全くの無傷である。寧ろ中途半端な攻撃をくらったせいか怒り狂っている。
「クッソ…!手榴弾!!」
自然の中なら構うことも無いので次の手として蓮はポケットから手榴弾を取り出して投げる。
そして着火!
ドッゴォォォン!!という爆発音が背後から響く。
これは流石に少しはダメージを与えただろう…。と蓮が後ろを振り向くとーーー。
「グルルルルルルル……!」
「シールド…!?」
緑色の龍は目の前に透けた水色のシールドを創り上げていた。
爆発のダメージはどうやら無いようである。
(…シールドで防いだってことはまともに食らえばダメージになるってことか…)
少し冷静に考える。
そして蓮は逆にその龍の行動から情報を取った。
すると、緑色の龍が創っていたシールドが弾けて、ビシャっと音を立てて地面に広がった。そして地面が濡れる。
それを見た蓮は思考しながら走り出した。
(さっきの手榴弾は残り3つ。アレより威力低いのは5つだ…ここで使う…いや。
待てよ。あのシールド…もしかして…!!)
その時、蓮の頭にまだもしかして…の域を出ないものの名案が浮かんだ。
(試して損はない…やってみるか!)
そして蓮は先程よりも威力が小さい手榴弾を手に取った。その手には僅かに震えがあったが、逆の手で押さえる。
(……待てよ。俺。ここで逃げちゃダメだ。あの時決めただろ…!瑠花達を助けるって…。こんな龍なんかに負けてたら…!俺はアイツを助けられない!)
「…俺は瑠花達を助けるんだ…。悪いが…!ここで倒れてくれ!ドラゴン!」
そして蓮は自分の震えを強引に打ち消して再びその手榴弾をドラゴンに向かって放り投げたのだった。
2014年10月19日。修正を加えました




