[第二十三話]蒼天の宝玉と予感
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封印の遺跡内部。
先程蓮達が通った幻想的な広間から先は薄暗い通路が続いていた。
勇者達は誰一人声を上げることなくウォルレアンス王の後ろについて歩いている。そして先程からはコツコツと言った歩く音だけが封印の遺跡内で反響していた。
そうして暫く歩き続けていたのだが、20分程経過した頃にあるものが見えた。
「あれって……」
勇者達の誰かが声を上げた。
その声に気付いていなかった者達も顔を上げ、驚きの表情を浮かべる。
『ーーー橋?』
そう。勇者一行の視界に映ったモノ。
それはまごうことなき橋であった。
(……なんで地下の遺跡に橋が…?)
蓮が疑問を抱く。
橋の大きさは幅3m程度。
長さは15mといった所だろう。
そして橋の下は崖のようになっている。
何故こんな崖があるのだろうと勇者達が思わず怪訝そうな顔つきになるのを見てウォルレアンス王が説明を始めた。
「これは、かつて我が祖先であるエターナル公がウォシュムガルムを封印しようとした際の名残じゃ」
どういうことかと言うと、エターナル・ドラストがウォシュムガルムを封印しようとした際に、ウォシュムガルムが激しく暴れたらしい。
その時の攻撃の一つが地面にぶつかり、崖が作り出されたそうだ。
その時に作り出された崖がこの崖らしく。この崖の下で封印が行われたそうだ。
しかし、今では地下がどうなっているかを調べる事は不可能らしい。
崖自体、石を投げ入れても音が反響してこないのを見るとかなりの高さがあるようで、地下へ向かうだけでも空でも飛べない限り不可能だ。
1000年前は飛行魔法も普及していたらしいが、今では飛べる人物は殆どおらず、居たとしても人間族じゃなく獣人族や、鳥系の種族。及び魔族だけだ。
しかし、それらの者でも地下には辿り着けず、一定の位置から先に進めなくなるそうだ。
それ故に、この地下は謎とされている。
「元々このような大人数で入ることは今まで無かったからの。じゃからこんなに橋の幅が短いんじゃ」
そう言ってウォルレアンス王が締めくくる。
成る程な…と思わず納得する。だが、それと同時に嫌な予感がし始めていた。
(テンプレ要素だとこの橋渡る時にモンスターとか出て崖から落ちる…みたいな事が起こるんだが……いや。それは無いな。何考えてんだ俺…。ダメだな…戦争前なのに楽観視し過ぎてる)
なんとなく良くある小説の展開を考えてしまったが、これは戦勝祈願でこれからは戦争が始まるのである。
当然魔族を殺さなければならない。
だが、当然ながら戦争の無い日本でぬくぬくと15年間生きてきた蓮達は戦場を知らない。
だが、勇者として召喚されてしまった以上やるしかないのである。
そして殺すためには何かしら吹っ切れないといけないだろうし、覚悟もいる。
(グラビティとかは簡単に殺しそうな気がしないでもないけど……)
チラリと見るとあからさまにつまらなそうな表情を浮かべながら携帯の音ゲーをしているグラビティの姿が見える。
ってオイ。フリーダム過ぎるだろ。
そう思わず脳内でツッコミを入れた時。
ウォルレアンス王が暫くここで小休止すると宣言したので、蓮は橋の近くにいる瑠花達の方へ向かった。
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「あ、蓮君」
「ひ……日向さん!!?」
瑠花達の元に行くと、瑠花と彩葉が迎えてくれた。っていうか、彩葉と会うの久し振りな気がする…いや事実、久しぶりだろう。
「よう。それと彩葉。俺は蓮で良いよ」
「わ…分っかりましふぁ!うぅ……」
とりあえず挨拶した後に彩葉に呼び名を改めるよう声をかけると、また噛んだようだ。……ドジっ子属性って……。
「にしても深いわね。この崖」
口を押さえてバタバタしている彩葉を生暖かい目で見つめていた蓮だが、紫苑の言葉に表情を元に戻した。
「だな。下が見えない」
そう言って崖の方に目を向ける。
崖は、ただ暗闇が広がっていて、降りろと言われても降りるのは絶対に勘弁だ。
「そ…そうですね…。蓮さん…」
彩葉が恐怖の顔を浮かべながら恐る恐る口にする。高所恐怖症なのだろうか?
「大丈夫かい?花風さん」
すると、ヒカル君が彩葉に尋ねている。
心配そうな顔つきだ。…優しいのは良いと思うけど厳しさも覚えてもらいたい。これから先、人を殺せないと生きていけないのでちゃんと吹っ切れてもらいたいものである。
最初のオーバーキルの時は魔族が何か言う前に簡単に殺していたが、あの時の魔物や魔族は人間の形じゃなく見た目がモンスターだったから殺しやすかったというよりもVRMMO気分だろう。
元の世界ではVRMMOが普及してたし、RPGとか戦闘系のVRMMOもあった。
モンスターならVRMMO内で殺しているだろうし、その分殺しやすかった事だろう。
だが、ここはリアルだ。殺せば血が出るし心もある。本当の意味で精神を強くして人を殺せるようにならないと自分が死んでしまうだろう。
「は…はい……」
彩葉が頷く。その様子にヒカル君がうんうんと満足そうに頷いた後に、辺りを見渡して言った。
「皆。そろそろ行こう。これから先は戦争が始まるからね。戦勝祈願はしっかりしておきたいし、あまり長い間ここにいるわけにもいかないから。良いですよね?ウォルレアンス王」
そう言ってヒカルがウォルレアンス王に尋ねる。するとウォルレアンス王も頷いて答える。
「そうじゃの。そろそろ参るとするか」
そう言ってウォルレアンス王も立ち上がる。ブライアス兵士長も立ち上がり、最後尾へと向かった。
そして勇者達も並び始めた。
橋を渡るため、2列でズラッと並んでいる。なんというか修学旅行の時みたいだ。
「ここまで来たらもう少しだ。服をしっかり整えておけよ」
ブライアス兵士長が注意するかのように勇者達に向かって声を上げた。
「はい」
各々返事をする。
そしてブライアス兵士長は勇者達を少し見渡した後に最後尾へと戻って行った。
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それから程なくして、一際大きな部屋が見えてきた。その部屋に勇者達一行が足を踏み入れる。
そしてその一番奥には立派な祭壇のようなモノと台。そしてその台の上には何だろう…。
言葉で表すのなら宝玉。
丸く…そして蒼い光を帯びているものが見えた。
するとーーー。
ドクッ……!
蓮の心臓が反応した。先程まで正常に動いていた彼の心臓が驚く程強くなる。
(何だ……これ……? 蒼い玉……。
……どこか……懐かしい気がする)
その玉を見た瞬間、蓮はそう感じた。
しかし、周りの人は何も感じてはいないらしく平然とした表情で「綺麗」と感想を口にしている。
……いや。違う。グラビティの表情が楽しそうなものに変化していた…!
まるで、新しい玩具を見つけた時の子供のようなーーー。
「これが…ウォシュムガルムが封印されている玉。蒼天の宝玉じゃ…」
ウォルレアンス王が説明するように口を開いた。
蒼天の宝玉。名の通り蒼い。そしな曇りがない。宝玉の中には2つの紅い点が浮かんでいる。
宝玉は蒼い光を帯びており、途中の部屋にあった宝石と良く似ていたが、純度や光り方が全然違う。
そしてウォルレアンス王が祭壇の台の上にある玉へと手を伸ばしす。
「さ…触って良いんですか!?」
その行動を見たヒカルが驚きの声を上げる。その言葉にウォルレアンス王は頷いた。
「うむ…構わぬ。そうじゃな…大勇者様も持って見るか?」
そう言って台の上にある宝玉に手を伸ばした瞬間ーーー。
ドクッ……
(っ……!?)
心臓が痛んだ。何か嫌な予感がする。
動悸が早くなり汗が流れる。
「ほれ…これじゃ」
ウォルレアンス王が宝玉を手に取り、ヒカルへと渡そうと手を伸ばす。
ドクン……!
動悸が加速する。脳が何も考えられなくなり、汗がどっと溢れる。
(だ……ダメだ……)
何故かは分からないがそう思った。
ヒカルが触れてはならないと。いや…違う。この宝玉は"危険"だと本能的に感じ取ったのだ。
「ダメだァァァァァァ!!」
蓮が叫んだ。どうしてかは分からない。
強いて言うならあの玉に触れてはならない…そんな感覚がした。
それだけだ。しかし、蓮はその感覚を何よりも優先した。そしてヒカルに向かって走り出す。
しかしーーー。
「えっ……?」
全員が突然大声を上げた蓮の方を見た。
そしてヒカルが疑問の声を上げる。そして彼のその手はウォルレアンス王が手渡そうとしている蒼天の宝玉に触れていた。
次の瞬間!!
光が視界を覆い尽くした。
入り口で結界魔法を解呪した時の光とは比べものにならない程の光。
そしてその出処はーーー。
「その手をーー放せぇぇぇぇぇ!!」
ヒカルが触れている宝玉であった。
もう少しでようやくオープニングの所に持っていけます。
そこからは最強目指して蓮君には頑張ってもらいます。
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2014年10月19日。修正を加えました




