[第二十二話]封印の遺跡
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では、本編をどうぞ↓
【封印の遺跡】
そこは、かつてリデアルの街を襲ったと呼ばれている次元を操る蒼天龍。
ウォシュムガルムが封印された遺跡である。当然中に入れるのは王と、王に認められた者のみで、普段はエターナル王国の兵士達が厳重に管理している。
入り口には強力な結界が張られており、エターナル王の血が流れている者しか封印を解除出来ないそうだ。
…まぁ、解除しても直ぐに張り直されるそうだが。
蓮としては、もっと薄暗く陰気臭い入り口に兵士が立っているといった入り口を想像していたので、最初見た時は少し驚いたものである。
(…まぁ封印を解かれたらまたウォシュムガルムとかいう龍が現れるみたいだしなぁ……)
そう考えると至極納得だ。
封印したエターナル・ドラストという男が、自分の子供であるラーシャル・ドラストに自分の死後、こうしろと命令したらしい。抜かりない人物だったのだろう。
そしてその遺跡は地下にあるらしい。
造られて1000年になるが、未だに老朽化はしていない。チャールズさんの話だと強力な保存魔法の力が働いているそうだ。
これは、そのエターナル・ドラストという人物の子供であるラーシャル・ドラストが行ったらしい。
これについても納得だ。何かの拍子で地下が崩れたりした時に封印が解けてしまっては困るからだろう。
ラーシャル・ドラストはとても優秀な魔道士だったらしく様々な空間魔法に長けていたそうだ。
ちなみに、空間魔法というのは主に空間移動魔法や保存魔法。空間創造や結界魔法が主流だ。
空間移動はそのままRPGで別の街に一瞬で移動するアレである。
少し難しい言葉で説明するのならば、
物体を離れた空間に転送したり、自分自身が離れた場所に瞬間的に移動したりする現象、及び能力のことだ。
保存魔法は、その物質。または場所の時間を、流れている時間軸から取り出す。
つまり、隔離して時間による老朽化や、外からの干渉を受けなくさせる魔法だ。
今回の例だと、ウォシュムガルムが封印されている"封印の遺跡"の内部は"老朽"や外側からの"干渉"のみ完全に無効化されている。
つまり自分達は時間の影響を受けるが、時間という定義から隔離されている遺跡の内部。つまり建物自体は時間の影響(老朽など)や、外からの干渉(地震など)の影響を受けない。
次に空間創造魔法だ。
これは分かりやすく言えば、そのまま空間を創造する魔法である。例えば、アイテムボックス。アレも空間創造魔法を元に作られるらしい。
アイテムボックスとは、転生小説などで見られるが、心の中で開けと念じるだけで大量のアイテムを取り出せる道具だ。
RPGだと袋の中に大量の物が入る空間が広がっているアレだ。
あの空間も空間創造の魔法を利用しているらしい。
そして、アイテムボックスの内部に入れたアイテムはその中にある時だけ時が止まり老朽化したり食べ物だったら腐ったりはしない。
つまり空間創造とはそういった通常とは違う空間を創造する魔法の事だ。
ちなみに、現在では殆ど空間創造魔法が使える人物がいないらしくアイテムボックス自体ももう殆ど現存していないらしい。なのでとても希少なんだそうだ。
そして結界魔法。
これも分かりやすく、自分の前に防御結界を張ったり自分を囲うようにして結界を張り敵からの攻撃を防ぐ事が可能だ。
他にも、モンスターを封印したりする時もこの魔法を使うらしい。
そしてこの封印の遺跡の一番奥には大きな祭壇がある。
その祭壇の真ん中。そこにある台の上に置かれている玉。
そこの中にウォシュムガルムが封印されているそうだ。
これにもこの結界魔法が使われているそうだ。
(まぁ今はそれよりもこれからの事だ。戦勝祈願が終わったら……俺は)
昨日の夜。グラビティに気付かされた事。自分の決心は着いた。後は何処まで抗えるか…。
すると、勇者達を先導するかのようにエターナル王国の城下町を歩いていたウォルレアンス王が不意に振り向いた。目の前には封印の遺跡の入り口が見える。
「では、勇者様方……参りますぞ」
ウォルレアンス王の真剣な声に勇者達が頷いた。
封印の遺跡の入り口。縦横5mはありそうな大きな扉。その前にいかにもといった結界が見える。
そしてウォルレアンス王がその結界の方向に向かって両手を上げた。
「我が血に呼応せよ。蒼天龍封印結界…!解呪!!」
ウォルレアンス王がそう叫んだ瞬間、ウォルレアンス王の手の先から2つの光が結界に向かって飛ぶ。
そしてその2つの白い光が封印の遺跡にの扉に当たった瞬間、扉が輝いた。
「うわっ!!」
「なんだ!!」
数人の勇者達が驚きの声を上げている。
(なんつー分かりやすい。これで光が消えたら結界が消えてるっていうアレか)
しかし、これは良くあるテンプレ要素である。まぁ周りを見ても大半の勇者達はこういったテンプレ要素を見て感動してるみたいだし。
そしてチラリと勇者達の方を見る蓮。
大体の勇者達が、「すっげー」と言いたげな表情を浮かべていた。
にしても少し不思議だ。何でここまで眩しい光を直視しても目が痛くならないのだろう。
そんな疑問を持ちつつも目の前ではやがて光が薄くなっていった。
段々と周りの状態も露わになる。
そして完全にその光が消え、目の前に見えたのはーーー。
「……やっぱこうなるわな」
結界が消えた封印の遺跡の大きな扉の姿だった。
というよりもテンプレ過ぎて逆に「えー」と言ってしまいそうだ。
しかしウォルレアンス王はとても上機嫌そうに胸を張りながらこう言った。
「この扉はエターナル王の血が流れている者しか開けられないんじゃよ。」
その後エターナル王の血筋がどんだけ高貴かどうかとかいう話を10分ほど続けた後ようやくーーー。
「では、入るとしよう。ブライアス。私が先導する故、最後尾の警備を頼む」
「ははっ!畏まりました。お任せください」
ウォルレアンス王がブライアス兵士長に命令した。その命令を受けたブライアス兵士長はダダッとかなりの速度で最後尾の後ろに回る。
そしてウォルレアンス王が勇者達の前に出て扉に手を掛けた。
「では…いざ行かん。戦勝祈願へ」
そう言って扉を押す。ギギギギィという嫌な音を立てながら扉はゆっくりと開いていった。
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封印の遺跡の内部に入った瞬間、身体に変な感覚を感じた。
何というか…神社とかに入った時の荘厳な感覚だ。
その感覚に勇者達が「何だろう」という表情を浮かべているとウォルレアンス王が説明を入れた。
「これは遺跡内部に掛けられた魔法が原因じゃ。…まぁ暫くすれば慣れるじゃろう」
どうやらこの変な感覚が、遺跡内部に掛けられた時間停止の保存魔法らしい。
その言葉に納得した。
封印の遺跡の内部は外の賑やかさは全く聞こえなかった。
まさに静寂というやつである。
縦横10mはありそうな通路は、やはり明かりは無いが薄ぼんやりと光を帯びていた。そのため、ある程度の視認は可能である。
そして勇者一行が封印の遺跡をゾロゾロとウォルレアンス王の後ろに着いて歩いていたが、やはり封印の遺跡というだけの事はありモンスターは出なかった。
というよりもこの中ではモンスターはポップしないらしい。本来であればこういった遺跡にはモンスターが出現するらしいがそれも、しっかりと魔法で防いでいたようだ。
そして何事も無く暫く歩き続けていると、大きな広間に出た。
ドーム状の広間である。
大きさは、縦横50m位だろうか?
天井には青い宝石のような物が見える。
遺跡内の薄暗さの中で発光する天井に埋め込まれた青い宝石の様なものの光はとても煌びやかで美しかった。
他の勇者達もそれぞれ「わぁ…」とか、「すげぇ…」と言った感動の声を上げていた。
蓮自身もかなり感動している。元の世界で、こんな光景はVRMMO位でしか見れないだろう。
しかし、それはただの映像だ。本物じゃない。だからこそ、現実でその光景を見た蓮達はとても感動していた。
「凄いな……」
「そうだね、蓮君…」
「初めてこの世界に来て良かったと思ったかも……」
上から蓮、瑠花、紫苑のセリフだ。
ちなみに天井の高さは約10mだ。
その青い光は迷宮内の壁と反射して青い幻想的な光を創り出している。
と、感動しながら上を見ていた蓮達だったが。見慣れた光景だったのかウォルレアンス王が少し面倒そうな表情で口を開けた。
「すまぬがそろそろ参りたいのだが…」
その言葉に少し残念そうに勇者達が従った。そして再び隊列の様な列を作りウォルレアンス王の後ろに並ぶ。
そして並び終わった事を確認してウォルレアンス王が満足そうに頷いてーー
「うむ。では向かうとしようぞ」
そう言って再び歩き始めた。
その後ろをゾロゾロと勇者達が続く。
(なんか……空気が重いな)
蓮は歩きながらなんとなくそう思った。
やはりこの場所の効果だろうか?
普段している雑談などをしようと思えない。というよりも無言で歩くのが普通だと言った感じだ。蓮にとってなんとなく居ずらい空間でもあった。
(瑠花も居ずらそうなんだよな…)
チラリと後ろを歩く幼馴染の顔を見る。
表情は真剣で、しかしなんとなく気まずそうな表情を浮かべている。
(ヒカルは何かウォルレアンス王のすぐ後ろで警護するみたいに歩いてるし)
なんというか……大勇者らしい行動がウォルレアンス王を守ることだとでも思っているのだろうか…?
(紫苑はさっきの場所がもう暫く見たかったみたいで少し不機嫌だし)
瑠花の隣を歩いている紫苑。彼女の顔は不機嫌というよりは不満そうな表情だったが黙って歩いている。
(グラビティは……今回は…いるみたいだけど……アレ?あいつ携帯で音楽聴いてないか?)
少し前を歩いているグラビティ。彼の耳にはイヤホンが入っており、その線がポケットの中に繋がっている。携帯に保存しておいた曲か何かを聴いているだろうか?
しかし表情はつまらなそうだ。……まだ付き合いは短いけど、あいつ自由人で自分が関わりたいと思った人間にしか関わらないしな……。というか今回普通に来たのが奇跡的な気がする…というのが正直な感想だ。
そんな風に自分の知っている人物達の表情を見ていた蓮だがふと、とある人物を思い出した。
(そういや……カケルは今何処で何をしてるんだ…?)
そう、カケルである。彼も勇者として異世界召喚された一人だが、ヴァーサタイルカードを受け取った日に失踪した。
しかしその事に疑問などを抱いている人物は見た限りいないみたいだし、何故か勇者も100人居た。誰かが偽物か?と思った事もあったがそういう素振りを見せる者はおらず完全にカケルは蓮達の目の前から姿を消してしまっている。
(そういや……何かあいつはおかしかったんだよな……)
良く考えたらあいつの数値は全て1000超えをしていたし、職業も勇者じゃなく
"大魔導師"となっていた。
しかし次の瞬間には職業が勇者に変わり、数値も100程度に変わったが。
良く考えれば何故今まであいつを忘れていたのか不思議な位だ。ヴァーサタイルカードの数値を偽造できる魔法使いなんて聞いたことないし。
しかし蓮はカケルについて考えることをやめた。
(まぁ今はそれよりも…これからだな…)
戦勝祈願の後に待っている戦争の事だ。
(やれやれ……これからより一層忙しくなりそうだ……)
これからの事を考えると、ため息をつきたくなる蓮であった。
ようやく次回あたりで話を一気に動かせそうです。
少しテンプレではありますが。
まぁそこが終わったら2話くらい説明ですかね……。
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2014年10月19日。修正を加えました




