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ただ一人の無能勇者(凍結)  作者: Yuupon
【一章】神隠しと異世界と勇者達
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[第二話]集められた勇者達

フッとする浮遊感。

分かりやすく言うのならば、ジェットコースターに乗った時に感じる感覚。

それを二人は体験していた。

とは言っても、本当に一瞬。

…瞬きする程度の時間だが。


そしてふと気が付くとーー。


「「ここ…どこ(だ)?って誰!?」」


二人は目の前の光景を見て同時に驚きの声を上げた。

それも仕方ないだろう。

何せ目の前には、百人近い同年代と思わしき少年少女。

そしてーー。


「何処だよ……ここ…!」


目の前に広がる光景。まず目に入って来たのは、天井に吊り下げられたシャンデリアだ。

とても豪華で煌びやかに輝いている。

次に見えたのは壁と巨大な壁画。

壁はいかにもお城と思わしき壁が一面に広がっている。

そして壁画。全長十メートル以上ありそうなこの壁画には、とても金髪の美しい女性が描かれている。


次に蓮は床を見た。

床は、大理石で出来ていて、一枚一枚の大理石には、傾きや凹みは一切無く、とても綺麗に広がっている。


そしてそこまで見て、蓮は初めてここがまるで城のホールのような場所である事に気が付いた。

チラリと部屋の端を見るとこのホールの天井を支える白くて立派な柱にも一つ一つに細かな彫刻が成されているのが目に映った。

素晴らしいという言葉しか出ない程の宮殿である。


蓮達はそんな宮殿のホールの真ん中に居た。そして周りには沢山の同年代と思わしき少年少女もいる。


ここまで見て蓮は確信した。


(神隠しか………!)


そう、神隠し。

日本で何故か発生しており、連れ去った犯人も、方法も分かっていない現代史上最大の誘拐事件。

現在までに九十八人もの"十五歳"の少年少女のみが攫われているという不可思議な犯罪。

その犯人に自分達も連れ去られてしまったのだと。


そこまで考えた蓮は、チラリと横を見る。怯えたような表情を浮かべてはいたものの、瑠花がしっかりと蓮の服の裾を掴んでいた。

その事に蓮は少し安堵すると、次の瞬間。背後で大きな声が響き渡った。


「おい…ここは何処だよ!!」


一人の少年が疑問の声を上げる。

いや、声というよりも叫び声だ。

その声に、周りの少年少女も怯えたような表情を見せながら、口々に「ここは、何処だろう…」や、「もしかして神隠し!?」や、「帰りたいよぉ……」とそれぞれ声を上げる。

それにより、そこに居た少年少女は、軽いパニック状態に陥っていた。


すると横にいた瑠花が目に涙を浮かべながら


「蓮君……」


と、どうしたら良いのか分からない表情で声を上げる。それを見た蓮は、


「大丈夫だ…大丈夫。」


と、根拠のない返事をすることしか出来なかった。

そして周りのパニックもエスカレートしていく。中には泣き出しそうな者もいる。


だが、それを静められるようなやつは居た。

一人の少年が前に出て蓮達の方向を向き、声を張り上げる。


「落ち着け!喚いた所でどうにもならないだろ!」


その少年。見た目はかなりのイケメンだ。髪の毛も男子なのに綺麗だし服装も悪くない。そして皆の前に出て声を張り上げた姿もカッコ良かった。

分かりやすく言うのならば、女子が求める理想な爽やかイケメンを具現化したかのような少年だ。

既に何人かの少女の目が一目惚れしたのかハートになっている。

ーーそして彼は続けた。


「恐らくこれは、神隠しだ。

僕達は神隠しにあい、ここに連れて来られた。拘束されてないのを見ると、犯人は僕達を連れ去って強制で何かをさせようと言うわけじゃないと思う。

だからまずは落ち着いてくれ。」


イケメンで爽やかで、勇気があり、尚且つ頭の回転も早い。

これが、よくある主人公のような少年なのだろうか?

それに彼の言葉は何故か蓮達を安心させる力を持っていた。

これは一種のカリスマというヤツだろう。


すると、突然目の前にある巨大な扉が開いた。

そして、そこからは沢山の鎧を着た兵士。分かりやすく言うなら、RPGなどの城にいる兵士のような服装をした人が沢山現れ、道を作るかのように並び、敬礼する。

すると扉から転がるように紅い絨毯が敷かれ、奥から冠を被り、立派な法衣を纏った三十歳くらいの男性が現れる。


そしてその周りには沢山のこれまた綺麗な法衣を着た人物等が現れ、真ん中に居る冠を被った男性。恐らくではあるが王様を中心にして横と後ろを歩く。

そして、その王様と思わしき人物の隣には立派な鎧を着た五十歳程の貫禄ある兵士…いや、兵士長だろう…が居た。


その王様と周りの人物が蓮達、つまり少年少女の元まで歩いた。

その歩き方はとても気品があり、それを見た少年少女達は思わず見惚れてしまった。


そして、ある一定の距離まで近付いた王様はピタッと止まり、ゆっくりと口を開く。


「百人の勇者様…良くぞ我が城、

エターナルへ来られました。歓迎致しますぞ。私は、この城の王をしております、ウォルレアンス・ドラストと申します。以後よろしくお願いしますぞ」


そう言ってウォルレアンスと名乗った王は、ニヤリと笑ってから頭を下げた。




あの後蓮達は、城の会議場所に案内され、現状について説明されることとなった。途中の廊下もそうであったがその会議場所も大理石で造られた見事な床に、天井にはロウソクを使うタイプのシャンデリアが掛けられている。

そして会議場所には、沢山の…数百は下らない程の椅子が用意され、十メートル

以上もの大きさのテーブルが沢山並んでいる。

そこに蓮達は連れられて来た。


ここに来る途中、全員喋ることはせず、ただ何が起こっているのかを知りたそうに。もしくは今、目の前にある現象を信じられなかったのか、ただ着いてくるだけという者に分かれていた。

そんな中、蓮と先程の少年を含めた何人かだけが真剣な表情を浮かべていたのだった。


そして全員が着席すると、数秒溜めてウォルレアンスと名乗った王が立ち上がり、説明を始めた。


「さて…まずは皆様混乱している事と思いますが、先に謝らせて頂きます。

誠に申し訳無い」


王はそう前置きして深々と頭を下げる。

それに伴って、後ろにいた法衣を纏った人物も頭を下げた。


「どう言うことですか?」


それを見た先程の少年が、尋ねる。

すると蓮も薄々思っていたが、王がとんでもないことをサラッと言った。


「まず、ここに皆様を連れて来たのは私達です。」


その言葉に、殆どの者が驚きの表情を浮かべる。

ただし先程の少年と蓮。それと数人は頷いていたが。そして


「それは分かっています。

普通に考えれば僕らがここにいる時点で貴方方が犯人だと言うことは分かりました。それよりも僕が聞きたいのは、どうしてここに僕らを連れてきたかについてです」


と再びあの少年が疑問の声を上げた。


「分かりました…では、一から説明させて頂きます」


そう言ってウォルレアンスが話し出した内容は、おおよそマンガやラノベなどの二次創作でよく見られるファンタジックな話であった。


まず、この世界はニルと言うらしい。

自分達の世界の意味では確か"存在しない"という意味だっただろうか?便宜上、存在(ニル)しない世界(ワールド)と呼ばせて貰おう。


まさしく蓮達からしたらこの世界を表すにピッタリな言葉だ。

そして、その存在(ニル)しない世界(ワールド)には六つもの大陸が存在しており、様々な知的生命体が存在しているらしい。


まずは、大陸についてだ。


大陸は、それぞれ、ウォルシュ大陸。

フィオージュ大陸、マニオル大陸、

イガニアス大陸、ドルベニ大陸、

マディアル大陸の六つと、周辺の島々から構成されている。


まず最も大きく様々な種族が暮らしており。今、蓮達がいる大陸。


ここを、ウォルシュ大陸と言うらしい。

この大陸では、主に人間族。卑人族が暮らしているらしい。


他にも大まかだが、六つの種族がいるらしい。

エルフ族、獣人族、魚人族、

ドワーフ族、卑人族、そして魔族がこれに当たるそうだ。


それぞれの数は、人間族が一番。

次に、エルフ族。ドワーフ族、魚人族、卑人族、獣人族、魔族の順らしい。


それぞれの説明をしていくと、

人間族はそのまま人間。


魔族は、人間に害をなす存在。

分かりやすく言うならば、悪魔、妖怪、怪物などが該当する。

そして魔族は他の種族よりも群を抜いて個々の戦闘能力が高い。

ただし繁殖能力が低いので、他の種族は数で対応している。


エルフ族は、まぁRPGでよく見るが、

人間ほどの背丈で、長く尖った耳をしている。身体能力が高く、知識に富み、魔法を使うらしい。


次に、ドワーフ族だ。これもRPGでよく見るが、矮躯でありながら屈強、長は、豊かな髭を生やしているらしい。

ただし、髭が生えているのは年取った老人が殆どで女子供は生えないらしい。

大酒飲みで手先が器用であり、鉱夫あるいは細工師や鍛冶屋などの職人であると同時に戦士(斧やハンマーが主武器とされる)も、行っているそうだ。

何よりもその技術が凄いらしい。


そして、魚人族だ。

魚人族は、主に海で暮らしているらしい。二腕二脚だが、鱗やエラを持つなどの特徴があることから水棲人すいせいじんとも呼ばれている。

彼らは集団で生活しており、仲間意識が強いそうだ。


次に、獣人族についてだ。

獣人族は、基本戦闘能力が魔族の次に高いらしい。

見た目は分かりやすく、例えば猫の耳と尻尾がついていたり、ウサギの耳がついていたり、鳥の羽根がついていたりする。


そして、卑人族。

これは、例えばハーフエルフなどがこれに該当する。

まぁ分かりやすく言うならば、犬の雑種と同じである。

例えば、犬を飼う時に雑種と純種などの値段を見比べて見ると、殆どの場合純種の方が高い。(※あくまで殆どであり、別例も御座います)。


他にも犯罪を犯した者や、魔族を匿うもの、また、忌み子などが産まれた時に殺したりせずに守ろうとする部族も入るそうだ。

そして文化レベルが低かったり、戦闘があまり得意ではなく、奴隷として扱われる者も卑人族だ。


他にも神や龍。そして吸血鬼なども存在するそうだがここでは省いておく。


そして六つの大陸にはそれぞれの種族が暮らしている。


例えばここ、ウォルシュ大陸は人間族が暮らす大陸だ。

しかし人間族は、エルフ族やドワーフ族、そして獣人族に魚人族とは同盟を結んでいるため、それぞれの国を簡単に行き来することが可能らしい。

そのため、人間以外の種族も多くいる。

また、卑人族を人間達は迫害しているらしく、奴隷として扱っているそうだ。

だが、他の種族が多くいるためか、様々な文化に精通し、金を稼いでいる。


次に、フィオージュ大陸。

これは、エルフ族が主に暮らす大陸だ。

ここでは自然が多く、とても環境が良いそうだ。

また魔法の勉強が盛んで、この大陸が最も魔法に優れているらしい。

ここに暮らしている人々は皆温厚らしい。


次に、マニオル大陸。

ここは、獣人族が主に暮らす大陸だ。

ここでは、剣や槍。また、体術などのありとあらゆる戦いを学ぶ大陸だ。

ここで育った若者は、いずれ世界最強を目指し旅立つらしい。

そしてここの住民はとても血気盛んで、ちょっとしたことですぐ喧嘩になるらしいが、その分明るいらしい。


次に、イガニアス大陸。

ここは、魚人族の大陸だ。

水の中での戦闘を得意とするらしい。

そして、そのせいか街中には噴水や、移動用の川などもあるらしい。

ここの住民はある程度仲良くなり、認めて貰えばとても優しく気の良い人々らしい。


そして、ドルベニ大陸。

ここはドワーフ族が主に暮らしている大陸だ。

そして、この大陸が技術力トップの座を勝ち取っている。

なんと転移装置などもあるらしく、ここから幾つか人間族は役立つ装置を購入したり、武器を整えている。

そして性格は基本的に気が良く、会って間も無くでもバンバンと背中を叩いてくるそうだ。


そして最後にマディアル大陸。

ここは魔族が暮らす大陸だ。

詳しいことは分からないらしいが、噂では死の大陸と呼ばれているらしい。

どう言うことかというと、土地が死んでいて作物が育てられないらしい。

それと、その大陸の周りには瘴気というものが漂っており、直に触れると一週間程で死に至るらしい。

そのため殆ど分かっていないそうだ。


で、ここからが本題の俺達を呼んだ理由についてだ。


人間族と、魔族は遥か千年も昔からずっと争い続けているらしい。

魔族は個々の質で、人間は数で、互いに互角に戦い続けた。

しかし両者は疲弊し、間も無く戦争が出来なくなったため、百年程前に停戦約定(ていせんやくてい)を結んだそうだ。


そして百年の時が流れ、互いはまた力を取り戻したが、人間族は過去の停戦約定に従い戦力は増強していなかった。

しかし、ある時魔族がいきなり戦力を集め始めたのである。

本当なら、人間族もまた戦力を増強させれば良いだけの話なのだが、それでは勝つ事が不可能であった。

何故なら百年の間、一度も戦争が無かったので殆どの兵はダラけ、百年前よりも全体的に質が壊滅的な程に落ちてしまっている。


しかし、魔族は別である。

人間族以外の大体の種族は寿命が長く、百年、二百年など軽く生きる。

そして、魔族が暮らすマディアル大陸は死の大陸と言われる程、生きることさえ過酷な場所だ。

そんな場所で産まれ育った戦士と、百年もの間ダラけ続けた戦士。

勝負は明白である。


他の種族に応援を頼むことも考えたが、どうやら他の種族も自分達の大陸を守るので手一杯らしい。

それに、折角同盟を結んだというのに此方の都合だけを押し通しては心象も悪い。よって、他の種族に応援は頼めないと結論が至った。


そんな絶望的な状況の中、人間族は考えた。

そして出た案が、勇者を呼ぼうという案である。


魔族の弱点は光魔法である。

しかし、光魔法は勇者にしか扱えず、

此方の世界で勇者が生まれるのは千年に一度と言われる程少ない。

しかし、その勇者を沢山呼ぶ裏技があったのだ。


それが、異世界人を呼ぶ事である。


古い文献などで調べた結果、過去に異世界人が此方に来たという古文書があり、

その異世界人はいずれも勇者で、一騎当千の力を持っていたらしいとその古文書には書いてあったそうだ。

追い詰められていた王は、藁にも縋る思いで古文書通りに魔法を使わせた。


そして集められたのが蓮達、現代人だ。

使った魔法はどうやら、異世界人で勇者になる素質を持つものを自動で集める魔法をだったらしいが、少しでも人間族が魔族に勝つ可能性があるのならば、と王が強行したらしい。


「どうか…お願いします。

人間族のために我らと戦っては頂けないでしょうか…!勇者様方!!」


そう言ってウォルレアンスは頭を下げた。王がそんな簡単に頭を下げて良いのかと一瞬、蓮は思ったもののまぁ人間族が全滅するかどうかの危機だしな…と考え直した。


しかし、いきなり戦ってくれと言われても直ぐに「分かりました」と承諾出来るはずも無い。

当然、反論がある。


「拒否権は無いのですか?

僕らは無理矢理ここに連れて来られて、しかも命を掛けて戦えと。傲慢じゃ無いんですか?」


あの少年が皆を代表して反論を述べるが、申し訳なさそうにウォルレアンスは俯いた。


「申し訳ない……。呼ぶ魔法は古文書にあったのですが…帰す魔法は載っていなかったのです…。

現状…勇者様方が帰る事は不可能です…」


ウォルレアンスのその言葉に全員が戦慄した。

蓮自身もまさかとは思っていたが呼べるということは帰れると高を括っていたのでかなり驚愕する。


その言葉に、無言になる会議場所。

空気がドンドンマイナスの雰囲気に変わり、段々とパニックに陥っていった。「帰れないってどういうこと!?」や「嫌だよ…!戦いたくないよ…!」。「ふざけんな!!」などそれぞれが勝手に発言した。

中には泣き叫んだり、狂ったように笑い出した奴も居た。


そんな中、あの少年は一人立ち上がって王の前へ歩きだす。

その堂々たる様子に、皆が静まった。


スッーーー。まさしくそのような音を立てて彼は王の前で立ち止まり、膝をついた。見事と言える程綺麗で美しく。

そしてゆっくり口を開けた。


「分かりました…ウォルレアンス王。

僕……。大神(おおがみ) (ひかる)は勇者として、人間族の為に戦います。」


そう言って跪いたまま、恭しく頭を下げた。

その姿はまるで、勇者。

魔族と戦い、人々の為に戦い続ける勇者その人であった。


その姿に暫し一同は見惚れてしまったが、やがてウォルレアンス王が頷くと、真剣な表情でヒカルの手を取りーー。


「うむ……勇者ヒカルよ。

其方(そなた)の申し出、誠に有難く思う。

人間族の未来を…任せたぞ」


そう言って王はヒカルに向かって深々と…本当に深々とした礼をした。


「お任せください…ウォルレアンス王」


ヒカルは再度そう言って立ち上がる。

そして俺達の方を見てこう言った。


「皆…帰れないんだったら、戦うしか無いよ。ここで騒いだって無駄だ。

だから僕らは勇者として人間の為に戦おう…!ここで僕らが断ったら、この星の人間達は滅んでしまう!

誰かが…じゃない!僕らがやるんだ!

幸い僕らには勇者になる資質がある!

そうですよね!?ウォルレアンス王!」

「あぁ…お主らには皆、それぞれ力を持っているはずじゃ…!皆勇者としての才能は持っている!」


真剣な表情で王は断言した。

全員に勇者としての才能があると。


「聞いたろ!皆!僕らには力があるんだ!それを弱き者の為に使わなくてどうする!僕らが立ち上がるんだ!

僕一人の力じゃたかが知れている!

だけど僕ら全員が戦ったら!きっと魔族にだって打ち勝てる!だからーー!

立ち上がろうぜ!皆!」


ヒカルの演説にも似たその言葉にーー。


「「「「うぉぉぉぉぉぉ!!」」」」


そこに居た皆は応えた。

また絶望の表情を浮かべて居た少年少女が、ヒカルの話を聞いてまた段々と希望に満ち溢れた顔に戻って来たのである。

蓮や一部の奴はそれを冷めた目で見ていたが。


そしてなし崩し的に皆勇者として戦う事となる。蓮としては戦う気は毛頭無かったのだが周りの雰囲気が有無を言わせ無かったのだ。


横にいた幼馴染の瑠花も、ヒカルの言葉に賛同し声を上げていた。

恐らく、あまりに非常識過ぎる事態と絶望的な事態が同時に起こった為に正常な判断が付かなくなっているのだろう。


「皆…本当に有難い…!今宵は宴じゃ!勇者様方をもてなすぞ!」


ウォルレアンス王がパンパンと手を鳴らすと同時に使用人と思わしき人物が現れる。


「畏まりました。では、勇者様方は暫く、ごゆるりとお休みください」


そう言って個別の部屋に案内される。


蓮が異世界ーー。

存在(ニル)しない世界(ワールド)に来て初日の事である。





2014年10月19日。修正を加えました

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