[第十九話]サービスと裏
いつの間にか200PTを突破していました。ありがとうございます!
蓮が次に目を覚ましたのはやはりというかエターナル王国の救護室のベッドの上だった。いつも通り立派なシャンデリアがかけられている。
「知らない天井d……止めとくか」
ついネタを言いかけたが止めた。
そして蓮は何故か手に温かみを感じてそちらを見る。
「……瑠花…」
瑠花がいた。蓮の手を握ったまま寝ている。きっとまた心配させてしまったのだろう。頬の辺りに涙の後が見える。
(起きたら謝らないとな……)
自分の腕をギュッと握ってベッドに寄り掛かって寝ている彼女に、また自分は迷惑を掛けてしまった。
思えばこの世界に来てから何もやれてない。戦いは足手まといになるし、生産系の仕事も普通くらいの仕事しかこなしていない。
鍛錬も自分でしているけど、周りに比べたら弱い。
やったことなんて精々手榴弾を作ったことと壊れたものを直したくらいだ。
だがそれは今、蓮の腕を握っている幼馴染に対してやったことじゃ無い。自分の為だ。
それに比べて自分は色々なものを瑠花から貰った。
大昌達から助けてくれた。怪我をしたら治してくれた。強い敵が出た時、守ってくれた。自分が倒れた時に側に居てくれた。
沢山の事をくれた彼女に自分は何をしてあげただろう?自分は何をやってあげられるのだろう?
「……甘えてばかりは…ダメだな。
俺自身…強くなって人を守れるようにならないと…」
ベッドから身体を起こして瑠花を見ながら呟いた。
それから数分が経過した。瑠花がモゾモゾと動きだす。そしてーーー
「…う…ぅん…」
可愛らしい声を出しながら瑠花が起きる。そして目をゴシゴシとこすっていた。
とても可愛らしい仕草である。
すると瑠花は目を開き自分の方を向いた。
瞬間。
「蓮君!!」
蓮を見た瑠花が蓮に抱きつく。
「のわっ!!」
まさかそんな事をしてくると思っていなかった蓮は後ろに仰け反った。
「蓮君…良かった…良かったよぉ……」
瑠花がか細い声で言った。
声が少し震えている。
「えっと…瑠花…」
いきなり抱きついてきた瑠花に蓮はどう反応すれば良いのかよく分からず、ただただ困惑していた。…というのも残念ながら今まで女性と付き合った事の無かった蓮にはこういうシチュエーションでどうすれば良いのか分からない。
前に読んだ恋愛系の本なら
『抱け!そしてキャッキャウフフだ!』
とか書いてあったが蓮はそんなのは信じてはいない。
すると抱きついたまま泣きそうな表情を浮かべていた瑠花だったが、やがてある事を呟いた。
「蓮君……全身大怪我で……。死んだように眠ってたんだよ…!」
瑠花が蓮が倒れた時の様子を口にする。
それを聞いて合点がいった。
(俺……死にかけたのか…)
驚愕の事実であった。かなりの大怪我はしたんだろうなとは思っていたが、まさか死にかけていたとは。
「蓮君…本当に良かったよぉ……」
ポロポロと涙を零す瑠花。
本当ならば感動の…そんな感じの雰囲気なのだろう。
だが蓮はその事実を聞いてなお。それどころでは無かった。
(当たってる!!顔に当たってる!!)
何がとは言わない。ただ柔らかい2つの山が服の中から蓮の顔を覆うようにかぶさっている。服の上からとはいえ至近距離から見た2つの山はまさしく芸術と呼ぶに相応しい。
女の子に耐性があるとは言え蓮も男であった。美少女に胸を押し当てられるなんて事をされたら性欲も働くというものである。しかし、蓮はその性欲をオリハルコンの精神で押さえつける。しかし顔は真っ赤になりその2つの山の柔らかさが蓮の精神を崩そうと必死の攻勢に出た。
(煩悩!……静まれ…静まれぇぇ!!)
心の中で必死にそれを押さえつける蓮。
顔も真っ赤にはしているものの気持ち悪い笑みなどは浮かべずなんとか慌てている表情にしていた。
「蓮君が死ななくて本当に良かった…」
そう言ってより一層蓮を強く抱きしめる瑠花。
(だぁぁぁ!!やめろ!!柔らかい感覚がぁぁ!!)
当然、強く抱きしめられることにより、15歳の中ではかなり大きい方である瑠花の前面に実る豊かな2つの膨らみが余計に強く押し当てられる。
更にその山脈の霊峰。聖なる頂の感覚までもが蓮に触れ、感覚を生み出す。
「私…本当に心配だったんだよ…!
蓮君が死んだら…死んだら…!」
(それは分かったから!心配してくれたのも痛い程分かったから!頼むから離れて!煩悩に負ける!!)
蓮は心の中で必死の叫びを上げる。
しかし、瑠花は全く気付く事は無かった。
弾力のある二つの山。そしてしっかりとした重量感を蓮に感じさせた。匂いも良い匂いがする。性欲をそそらせる匂いだ。
(って!何考えてんの俺!YES我慢!NOタッチ!)
やばい段々と思考があっちの方向に向かっている。もし、自分が暴発したらとんでもないことになるだろう。
だが、目の前に覆いかぶさる二つの山。
これを押し当てられた男が耐え切れるモノだろうか?否…。殆どの者が耐えきれず自分のモノにしようとするだろう。
しかしーーーーー
「瑠花…む…胸が……!」
「っ!!ご…ごめん。苦しかった…?」
彼は耐え抜いた。煩悩に。性欲に。
自身に秘められたる欲望。女への渇望に。彼こそ、男の中の男だ。
もし大勇者であるヒカルが同じことされて耐え切れるかどうかは怪しいであろう。
彼は身も心も正義の塊であるが、煩悩には勝てない筈だ。勝ったとしても辛勝である。
そして瑠花が蓮から離れた。心なしか顔が紅くなっている。
そして椅子に座り直した瑠花が話し始めようと口を開いた瞬間。
「昼間から良いご身分だなァ。蓮よォ」
窓辺から声が響く。
こ……この声は…。
「カカッ。面白ェもん見せて貰ったぜ」
「「グ…グラビティ!?」」
グラビティだった。確か迷宮攻略の時も姿が見えなかった。口の端を吊り上げて笑っている。
「み…見たの…?」
瑠花が尋ねる。するとグラビティは「勿論だ」と言うように頷いた。
(しぇぇぇ!!?やばい!これはやばい!あいつはかなり狡猾で頭が良いから弱みを握られたと同然だぁぁ!!)
蓮が内心汗を流していると。
「安心しろォ。俺は興味ねェからな。
って……あァ?」
グラビティが言った。その後、何故か怪訝そうな表情を浮かべる。
「どうしたんだよ」
蓮が尋ねるとーーー。
「お客さんだ。俺は退散するとすっかァ」
そう言ってグラビティが窓から飛び降りる。
「「えぇぇぇぇぇ!!?」」
瑠花と蓮はグラビティの行動に驚きの声を上げた。それと同時にーーー。
ガチャ。
扉が開く音が響く。その音に蓮と瑠花が反応して素早くそちらを見ると。
「ヒカル…それと紫苑。そしてブライアス兵士長に…ウォルレアンス王…」
「…蓮君。僕は君に言わなくてはならないことがある」
入ってきたのはヒカルと紫苑とブライアス兵士長にウォルレアンス王であった。
その雰囲気はとても真剣で、瑠花が驚きの表情をうかべている。
そしてヒカルが口を開けた。
「まず、謝っておくよ。本当にすまない」
そう言ってヒカルが頭を下げた。
その様子に瑠花が慌てている。
しかし、蓮はその理由に気付いていた。
(最後の魔法の件か……。)
そう、ヒカルが最後に使った魔法。
恐らく、あのまま蓮があの場所に居たら確実に死んでいた筈だろう。
意識が無くなる寸前にチラリと見ただけだが、あそこまでの威力だったら確実に死体が無くなるレベルで身体が消滅する。
大勇者が同じ勇者を殺しかけた。
これは知られてはならないこと。
恐らく口封じと、別の噂でも流すのだろう。自分がミスって怪我を負った…などに。
それについてすまないってところだろう。
考えれば簡単な事だ。
ともかくベッドの上から降りる。
このまま会話するのは無礼に当たるだろう。
「分かっている。ハッキリ言ってくれ。
恐らくだが大勇者が一応とは言え勇者の俺を殺しかけた。これを知られる訳にはいかないから別の噂を流す。そんな所だろう。」
とにかく考えた事を口にする。すると全員が驚きの表情を浮かべた。
「誰にでも分かることだ。普通に考えれば」
そう言って「ハァ」とため息をつく。
「分かってもらえたようで何より。
じゃが、お主の実力が足りなかったのも事実じゃ」
黙って聞いていたウォルレアンス王が口を開けた。
確かに、怪我をしたのはヒカルの攻撃に気を取られた自分自身の過失だろう。
「俺は平民と同じ強さしかありませんからよく分かっていますよ」
蓮は少し自嘲気味に…そして少しだけ皮肉りつつそう返す。
「私としては心苦しいがこれも王国の為だ。頼む、蓮」
ブライアス兵士長がそう言って頭を下げた。
「俺に頭を下げる必要はありません。
どうせ断った所で何らかの理由を付けて俺を勇者じゃなくするか、口封じに殺すのですから。」
しかし、蓮は分かっているぞと言いたげな冷たい表情を浮かべながら言った。
「答えは分かりましたしか最初からありません。バラしても意味が無いのは分かっていますし、自分が無能なのも分かっていますから問題はありません」
そう言って蓮は頭を下げた。
「ですのでご心配なく。ウォルレアンス王が危惧している事はございません」
その言葉にウォルレアンス王が少し硬い表情を浮かべたり、ヒカルが無礼な態度だったからか目つきが若干鋭かったような気もするが、互いに話は終わった。
今回は少しサービスっぽい描写?
と、ウォルレアンス王達との裏のある会話でした。
(今回の話は特に酷かった気がしますが)
感想や批判などありましたらよろしくお願いします。
2014年10月19日。修正を加えました