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ただ一人の無能勇者(凍結)  作者: Yuupon
【一章】神隠しと異世界と勇者達
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[第十四話]爆弾と戦いの合図

"あの事件"から一週間が経過した。

蓮とグラビティを陥れ、エターナル王国から追い出そうとした三人は、謹慎処分と皆からの信頼の損失という二つの罰を与えられたようである。


そしてあの事件以来蓮にはテーブルなどやその他家具に触れる機会が増えていた。恐らく、グラビティが完全に壊したテーブルなどを完全に修復したのが理由だろう。

蓮としては此方の未知なる素材に触れることが出来るので万々歳である。


「レン君、こっちはどうすれば良いかしら」

「あ、そうですね。とりあえずそちらの火薬をお願いします、この筒に詰めますので」


現在、蓮はエターナル王国の鍛治職人であるフィーネさんと一緒に爆弾を作成していた。


実は、蓮が壊れたモノを直せると知ったフィーネさんから一度、武器を打つための台を直して欲しいと頼まれ、キッチリこなしたら、時折余った素材などをくれるようになったのである。


ちなみに、鍛治工場は、かなり頑丈な造りとなっている。やはり、剣などを作るので華やかさよりも安全性を取るのだろう。

周りには、すぐ近くに井戸も幾つか置かれており、万が一火事になっても大丈夫なようにしている。

先程の筒は簡単に手に入るらしく普通に頼んだら貰えたが。


それと、フィーネさんは蓮が作るものに興味があったのか手伝ってくれるようにもなったのである。ちなみに、フィーネさんは蓮よりも2歳年上である。これまたかなりの美人さんだ。


…何故だかは知らないがこの世界で自分が会う女の人達は美少女率や美人率が高い気がするのは気のせいだろうか?


「何で、筒に詰めるんだい?火薬なんて使い道が無いだろう?」


フィーネさんが疑問の声を上げた。

ちなみに、この世界では火薬は使われていないらしい。ボンバーというモンスターが100%の確率でドロップするらしいが使い道が無く捨てられるそうだ。

それだけに手に入れやすい。

蓮としては、今まで良くドワーフ達が火薬の有用性に気付かなかったなと感じた。


というよりも、自分自身今まで手に入れられなかったのが不思議な位だ。

そもそも普通に、城のゴミ集積所に行ったらかなりの量が落ちていたのだから。

何故ヴァーサタイルカードを使わなかったのか。…思わず自分を殴りたくなる。


だが、これはチャンスでもある。

これで爆弾…いや、手榴弾の作成に成功すれば、これまでの待遇も見直されるだろう。

魔法も凄いとは思うが、質量兵器の威力には劣る。

そもそも国を一つの爆弾で消しとばす事は出来ても魔法で国を消しとばす事は出来ない。ましてや核爆弾などのような一瞬で生命を奪うような殺傷能力は無いのだから。


「まぁ、実験ですよ」


そう答えつつも爆弾をどうするかを考える。


(後は釘も入れておくか…モンスター相手だったらあまり意味は無いけど、一応刺さったりしたらダメージにはなるだろうし)


そう考えながら筒の内側に導火線替わりのロープの端切れを貼り付ける。


「これで完成かな…?一応、量は少なくしたから大丈夫だろうけど……。

じゃあフィーネさん。シールドの魔法をお願いします」


「分かったよ。炎結界(フレアシールド)


炎結界(フレアシールド)。これは、炎魔法の一種だ。炎に対する防御が上がるらしい。一応、爆弾なので炎とは少し違うのだが、炎。またはそれに準ずるものや少し違う程度なら効果があるらしいので掛けて貰っている。


「私が見に行っちゃダメなのかい?

面白そうだから見たいんだけど」


「ダメです。一応危険なので。

それに、フィーネさんの綺麗な顔を傷つけたくありません」


そう言って蓮は断る。

本当に爆弾とか火薬の実験は危険だ。

蓮も知識としては知っているが、やることは初めてなので安全とは言えない。

そんな実験に人を巻き込むことは出来ないし。


「……あんた、女の子とかにそんな事を言って回ってるんじゃ無いだろうね?」


すると、フィーネさんが何故かジト目で尋ねて来た。何故にジト目なのかわけが分からない。


「そんな事って…どんな事ですか?」


疑問に思った蓮は尋ねるものの。


「あ〜うん。やっぱり良いよ。あんたはそんな感じなのか」


そう言って流されてしまった。解せぬ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


エターナル城から少し出たところに、大岩がゴロゴロとしている荒野がある。

とは言ってもその荒野自体あまり大きいわけでは無く、300m程度だが。


その場所はかなり開けていて、他に燃えるものも無いので実験をしても安全だろう。それに、人も滅多にここへは訪れない。


実験にはうってつけの場所。

そのため、蓮はここへ足を運んでいた。


「発火から……すぐ投げないとやっぱ、ヤバイのかな…」


何にせよ、今までやったことが無いのである。一応、炎結界(フレアシールド)を張ってもらっているが、安心は出来ない。


「とりあえず…周りに人は……いないな。」


一応、周りに人がいないかどうかを確認する。流石に蓮もこんな危険な実験で無関係な人を巻き込みたくは無いからだ。


ヒュオオオと風が荒野を吹き抜ける。

頬を撫でるような風を少し心地よいと感じつつも、蓮は腹を括った。


「よし……やるかッ!!」


そう言って蓮は手榴弾(仮)を手に取る。

そして、フィーネさんから貰った魔法道具(マジックアイテム)。火種石を手に取った。


ちなみに、魔法道具(マジックアイテム)とは、使用者の魔力を使って効果を発動させることの出来る道具の事だ。


その中でも、この火種石は名前の通り、火を起こす性質を持った石だ。

本当に火種にしかならないので、かなり魔法道具(マジックアイテム)の中でも最底辺のものだ。だが、その分消費魔力は1以下だ。一般の人でも充分に使える。


ちなみに、火種石は持っているだけで目の前に小さい火種を作れる。なので、一応魔法のように指の先から炎を出すことも可能なのである。


これを最初に貰った時に思ったのは、


(元の世界に持ち帰ったら……マッチとライターの意味が無くなるな。)


だったが。


まぁともかく、実験を開始するとしよう。


「よし…まずは火を…」


蓮が呟くと同時に、手の先からシュボッ!と音を立てて小さな火が出現した。


そしてそれを手榴弾(仮)に付いている導火線に付ける。


そして、その火は導火線に燃え移った。


「うおっ!!」


そしてそれを少し離れた場所にある岩に慌てて投げつけた。


本音を言うと、爆発が怖くて手に持ったまま導火線から火が火薬に着く寸前まで待つことが出来なかったのである。


しかしーーー。


カンっと音を立てて大岩に手榴弾(仮)が命中してバウンドしーーー。


ドッゴォォォン!!という地鳴りのような音を立てて爆発した。そして何かの塊が飛び交う。釘だ。手榴弾(仮)の中に入れた釘が爆発でバラバラになり、破片が凄まじい勢いで飛んでいく。それと同時に土煙も上がった。


「うわわっ!!」


慌てて蓮は地面に伏せて頭を庇う。

そうして暫くそのままの体勢でいると、

やがてシューーと音を立てて爆発が終わり、土煙も晴れていった。

そして、蓮が咄嗟に倒れこんだ後ギュッと閉じていた目を開くとーーー。


「せ……成功……した…ん…だよな」


2m程あった大岩が粉々になっていた。

跡形も無くである。周りには小さい破片がバラバラと落ちている。


「き…危険すぎる……。戦闘中なら絶対勇者達巻き込むわ……」


客観的…というよりも、素直に感想を述べる。というよりも釘はいけない。

敵も味方も関係無く傷つけてしまう。


(威力は……釘を無くせば、もっと上げても良いか。ただ、十分に距離を取る必要がある)


威力自体はこれでも充分だが、強い…例えば、魔王とか龍とかと戦闘する場合この程度の威力ではダメだろう。

傷すら付けられなさそうだ。


まぁその場合は、兵士達が使うような大砲的なモノが必要になりそうだが。


(とにかく……。もっと爆発する時間を短くするか…?怖いけど)


先程の爆弾は、投げた後、大岩に当たり地面に落ちた瞬間辺りで爆発した。

約、2〜3秒だ。火種石の効果もあり、導火線から火薬に着くまでの時間は早いが、当てると同時に爆発する仕組みとかを作った方が効率が良い。


出来れば、火を付けずに投げてぶつけるだけで爆発するのが一番良いが、そこまでのを作ろうと考えると、素材が足りない。


(ふぅむ…。投げるタイミングを変える…のは怖いから無理だ。となると…やっばり火薬の量を増やして、勇者達を下がらせる……いや、威力は高いままで範囲を狭めるか)


まぁ、爆弾を作ったのはこれが初めてだ。これから先改善すれば実用化出来るだろう。


そして個人として使う分なら問題は無い。だが一応、王とかに知られたら面倒になりそうだから本当にヤバイ時にしか使わないことにしよう。


「よし、じゃあ一度城に帰ろう。

これからの課題も見つかったしな」


そう呟いて蓮は城の方へ歩き始めた。


そして蓮は鍛治場に戻ったのだがーーー


「あ、此方に居られましたか。」

「あ、チャールズさん。こんにちは」


そこにはチャールズさんが居た。

先程の発言を考えると、どうやら蓮を呼びに来たらしい。


「こんにちは、レン様。

えっと勇者様方に招集が掛けられております。ウォルレアンス王から急ぎ、王の間に集まるように…だそうです。」


チャールズさんが教えてくれた。


「招集ですか…?ありがとうございます。すぐに向かいます」


蓮はそう返事をして王の間へと向かう。

ちなみに王の間とは、その名の通りウォルレアンス王と謁見するための部屋である。基本的には何かあった時に部下を呼び寄せるために使われているそうだ。


(にしても招集か…?何だろうな)


内心疑問に思いつつも王の間に向かう。


「お、あそこだな」


首尾よく辿り着いた俺が部屋に入ると、既にかなりの勇者達が集まっていた。

そして暫くして勇者全員が集まり、ウォルレアンス王から告げられたのはーー。


「エターナル王国のピルニス街から更に辺境で魔族が現れた」


勇者としての戦いが始まるという合図であった。



次回から戦闘パートです。

というより何で戦闘モノなのに戦闘よりも推理っぽいのが先に来たのやら。


それと、爆弾…じゃなくて手榴弾の作成も成功しました。


一応、居ないとは思いますが悪用する方がいると怖いので説明は最低限にしましたが。


それと、感想や批判などありましたら

よろしくお願いします。


2014年10月19日。修正を加えました

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