[第十三話]証明編2
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「じゃあ…始めるぞォ」
そう、グラビティが声を上げて動画をスタートさせた。そして再び映像が流れ始める。
そして暫く流していたグラビティだったが、とあるシーンで一時停止させた。
ちょうど蓮達が襲いかかっている時だ
蓮が大昌にナイフを奪われて殴られている映像が映っている。
「何処もおかしいところはねぇじゃねぇか!!」
大昌が声を上げる。
声こそ張り上げて、怒気を含んでいるものの顔は不安そうだ。
「大アリだ。まず、てめェがこの映像を録画してたんだよなァ?」
グラビティが大昌に尋ねる。
「あぁ、そうだよ!それがどうかしたのかよ!」
しかし、グラビティはそれを無視して
「そりゃ、間違いはねェんだよなァ?」
再び尋ねた。その顔は真剣そのものだ。
「あぁそうだよ!!俺以外の誰が撮ったってんだ!!」
グラビティの質問を肯定する大昌。
その瞬間、グラビティが口の端を吊り上げたのを蓮は見逃さなかった。
そして、グラビティが口を開く。
「じゃあ…言わせて貰うが…。
撮影してるって事は当然今、画面の中で蓮と交戦してるのは大昌な訳だ。…じゃあなんで、その撮影してる筈のてめェはナイフを奪い取りながら逆の手で蓮をぶん殴れたんだァ?んな事したら、この携帯は地面に落ちる筈だろォ?」
そう言ってグラビティがニヤリと笑った。その言葉に大昌が動揺するそぶりを見せる。
「あっ……。えっと……それは……。
俺の手じゃなくて森山の」
「黙れクソ野郎。言っておくが、これは頼みじゃねェ。命令だ。最初からてめェらに情状酌量なんざ無ェんだよ。」
必死に言い訳をしようとする大昌。
しかしグラビティはそれを許さなかった。そしてグラビティはゴミを見るかのような目で大昌を見つめている。
静寂に包まれる会場。
もはや、周りの夕食なんて雰囲気では無い。そこにあるのは、疑問と糾弾。
そして、侮蔑の感情だけであった。
「じゃあ、次の矛盾だ。これを見ろォ」
次にグラビティは、血を流す橋下と、ただ気絶している俺の姿が映った場面で動画を停止した。
「血が流れてる場面……?」
勇者の誰かが疑問の声を上げた。
「そォだ。じゃあ聞くぞ。この血は本当ォにそこの橋下のモノだったかァ?
本当にそいつの血なのかァ?」
「ッッ!」
誰かの声に肯定した後に三人に尋ねるグラビティ。
橋下の方はあからさまに動揺しているようだ。
しかしその横では大昌がーーー
「当たり前だろ!!それ以外の誰の血に見えるんだよ!!」
と答えていた。
その言葉にグラビティは溜息をつくとポケットからとあるモノを取り出した。血の入ったビンである。
「コレは、その画面の場所で花風 彩葉の自然記憶で自然の記憶の中から取り出した血だ。証人はそこにいるザフィードだ。」
グラビティの言葉に、周りの人が一斉にザフィードさんの方を向く。
するとザフィードさんは頷いて。
「はい、確かに確認致しました。
確実のその場所にあった血です」
と答えた。
「「「ッッッ!!?」」」
城で王から信用を勝ち取っている使用人の一人であるザフィードさん。
大昌達ではその言葉を撤回させる事は不可能だ。
「ありがとよォ。じゃあ、問題だ。
もし、この血が本当に橋下。
てめェのモノだってんなら血液型は同じの筈だよなァ?だからーー。」
そう言ってグラビティがビンの口を開けて何も入っていない皿にビンの3分の1だけ中の血をブチまけた
「血液型検査だ。なァに、方法は簡単だ。この血液の中に、てめェの血液を垂らして濁らなかったら同じ血液型だ。
濁ったら違う血液型って事だ。」
そう言ってグラビティが大昌達の方に皿を近付けた。
「ほらァ。こりゃてめェの血なんだろォ?なら血を垂らせェ。これがてめェの血だってんなら簡単だろォ?」
そう言って口の端を吊り上げながら催促する。
「う……くっ……」
大昌が一歩下がった。
「やれよォ」
しかし、グラビティが更に皿を近づける。
「うっ……」
森山が一歩下がった。
その様子を見てグラビティが声をあげる。
「やれよ、オイやれよォ…。
やれっつってんだろォがァァァ!!」
叫びに近い雄叫びだ。
大昌達もビクッと身体を震わせている。
顔には、恐怖がありありと浮かんでおり、ブルブルと震えていた。
その様子を見てグラビティはハァ…とため息をついた後に焦れたように言った。
「チッ……遅ェ。
仕方ねェなァ……俺がやってやるよ。
指を出せ。切断してやるから」
指を切断すると言われて誰が指を出すのだろうか。蓮はそう思いつつも橋下を見る。顔が真っ青だ。しかし、諦めたのか分からないが
おもむろに橋下は自分の指の皮を噛んだ。
ブチッ…という小さな音と共に血が手からトロッと垂れる。
「は…橋下……」
森山が橋下に声をかける。
だがーーー。
「あぁぁぁぁあぁ!!」
橋下は叫びながら皿の中に血を垂らした。
ポトッーーー。
そしてその血が皿の中にある血と触れーー。
皿の中の血が濁った。
「あ……あぁ……」
その様子を見た大昌が呻き声に近い声を上げる。するとーーー。
「これは……どういうことなんだ…!」
ヒカル君が驚きの声を上げた。
その質問には蓮が答える。
「この映像が偽物だって事だ。
俺達はこの三人に有りもしない罪を被せられたんだよ!」
蓮の叫びに勇者達がザワザワと驚きの声を上げている。俺の耳にも幾つか聞こえてきた。例えば、「私あの二人が犯人だと思ってた」や、「あの三人…許せん!」とか、「詐欺師だったのかよ…!」とかだ。
「ち…違う!お…俺は知らないぞ!
こんなの知らん!!知らない!!」
周りの反応に、慌てて大昌が大声で否定した。しかし、蓮達からみたらバカみたいな行動にしか見えない。
「往生際が悪いんだよォ…!
素直に認めたらどォだ?クソ野郎」
ポケットに手を突っ込んだグラビティが口を開ける
「し…知らないんだ!!俺は知らない!
全部こいつらが悪いんだ!!」
しかし、大昌が否定する。
往生際が悪いにも程があるだろう。
いや…それよりも、見ていて腹が立つ。
自分の罪を蓮達にかぶせられないと分かれば、直ぐに取り巻きの二人にかぶせようとするその行動に。
そして、流石に我慢の限界がきたのだろう。グラビティが人を殺す時のような、
凡そ一般人が出来ないような表情で大昌に近付く。
「く…来るな!!俺は知らない!!
く…来るんじゃない!!この化物め!」
怯えた様子を見せながら大昌が後ずさる。しかし、グラビティはただ無言で大昌へと近寄って行く。
「ひ…ひぇっ!!く…来るなぁぁぁぁぁ!!!」
すると、ヤケになったのか大昌が短剣を取り出してグラビティへ向かって走り出した。
「「「「きゃぁぁ!!」」」」
その至近距離からの攻撃に避けれないと思ったのか女性陣から悲鳴が上がる。
しかしーーー。
「てめェごときにやれると思ってんじゃねェよ。」
グラビティが呟くと同時に、大昌の持つ短剣がグラビティに突き刺さった。
かのように見えた。
「あ……あ…!!」
グラビティに短剣が突き刺さったように見えた瞬間、短剣が消滅した。
比喩では無く、文字通りである。
「な…何をした…!!」
大昌が驚きの声を上げる。
しかしグラビティはーーー。
「てめェごときに教える程、
俺のフォーチュンスキル(能力)は安くねェ」
そう言って大昌に向かって手を伸ばして。
ーーー触れた。
瞬間、大昌が地面に倒れこむ。
「これが実力の差ってヤツだ。脳筋」
そう言ってグラビティは口の端を吊り上げて笑った。
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その後、蓮はビンに入っていた血液の残りに自分の血を垂らして、あそこにあった血が俺のものであること。
そして、蓮は襲われた側。
つまり、被害者である事を立証したのだがーーー。
「では、壊したテーブルはキチンと直してくれ」
ウォルレアンス王が蓮にそう言って工具だけ渡して皆去って行った。
勿論グラビティ達もである。
蓮が家具を作れることは瑠花が話していたので、直せないという逃げ場は無い。
「…もう…嫌だぁぁぁあああ!!」
蓮は誰もいなくなった夕食の会場で一人、そう叫んだのであった。
やっと証明編が終わりました。
次回から冒険です。
そして、感想や批判などありましたら
よろしくお願いします!
2014年10月19日。修正を加えました




