[第十一話]グラビティ
「お、戻ってきたか」
蓮は先程寝ていた医務室で訓練場からもどってきたグラビティ達の姿を目にして呟く。
横にはブライアス兵士長の姿も見える。
「意外と早かったな」
蓮が帰ってきたグラビティに声をかける。
「まァな…説明は問題無く済んだ。ブライアスに場所作りとあいつらに証拠を出させる役割をやらせる。」
そしてグラビティがチラリとブライアス兵士長を見た。するとブライアスは面目なさそうに答える。
「彼の能力は知っているからな。本来であれば隠蔽すべき事なのだが、そうも言ってられんだろう。グラビティ君から事は聞いたが、本当に証明出来るんだな?」
ブライアス兵士長が尋ねてきた。
蓮はそれに頷いた。
「はい…既に証拠は押さえてます。
証人もいますから。後は…あいつらの証拠を偽物だと証明し、俺が証拠を提出する。そうすれば…この件は終わりです」
「そうか……。にしても、私とした事が耐性が無いからとは言え幻惑に掛けられていたとはな…。歳は取りたく無いものだ……。」
そう言って自身の髪を触るブライアス兵士長。何だか、切なげに見える。
「ブライアス兵士長……」
思わず蓮は声を上げたが、
グラビティが口を開いた。
「まァそりゃどォでもいい。
それよりも、エターナル王から許可をもらってこい。
王を味方につけりゃもれなく周りの奴らも来るんでなァ。」
先程からブライアス兵士長に対するグラビティの反応が傲慢な気がするが、ここは放置しておくべきだろうか?
「分かった。やってみよう」
まぁともかく、ブライアス兵士長は引き受けてくれるらしい。寛大な人で本当良かったと思う。
ーーーーー
「……いよいよだね」
瑠花が小声で話しかけてくる。
ここは、パーティ会場。あの後、ブライアス兵士長からのエターナル王への報告は上手く行ったらしく、協力を約束してくれたそうだ。
…『勇者』がそんな事をしたというのは
本来は隠蔽すべきなのだが、どうやらグラビティが脅しを入れたらしい。
「これを受けなかったら俺はこの国と敵対する。幸い、俺の能力は強力だしなァ…。全員殺せる自信がある。」
流石にそれは許容出来なかったウォルレアンス王は協力を受諾し、今日の夕食で大昌達に証拠を見せるよう尋ねてくれるらしい。
そして今、蓮と瑠花は普段通りに夕食に参加している。
周りからチラチラと視線が来ているのが分かるが気にしない。
どうせ、仲間を殺そうとしたとでも思われているのだろう。だが、今からその疑いも晴らせる。
そんな風に考えていると、
奥からウォルレアンス王が出てきた。
やはり、王の登場の時は皆静かになる。
シーンとなる会場に居ると、何となく空気が重くなったようにも感じた。
そんな中、玉座の前に立ったウォルレアンス王が口を開く。
「では、勇者様方。本日も鍛錬お疲れ様…ゆっくりお食事をお取りなされ……と、言いたい所だが今回聞きたい事があるので少し話を聞いて欲しい。」
そう言ってウォルレアンス王が話を始めた。
「今日皆も知っていると思うが、とある事件が起こった」
王のその言葉に、勇者達が一斉に蓮の方を見る。グラビティは、準備がどうとか言って、今この場にはいない。
「私としてもこの件は重要だと考えている。よって、今。本当に彼らがやったのかどうかを審議しようと思うのだが。皆様方…よろしいか?」
すると、ヒカル君が挙手をする。
「ウォルレアンス王。審議は不必要です。何より、既に怪我を負わされた者がいるのです!!よって審議よりも罰を決めるのがよろしいと思います。
ですが、彼らも勇者です。出来れば罰も少なくして欲しいというのが僕の考えです。」
そう言ってヒカルが下がる。
「ふむ…するとヒカルは審議の必要は無く、あまり大き過ぎない罰を与えるべきと考えているのだな?」
王が尋ねる。それに頷くヒカル。
「はい、…彼らは才能があったらきっとこんな事はしなかったと思うんです。
僕らの中で、彼らだけがステータスに恵まれませんでしたから」
そう言って少し俯く。
それを見た勇者達がーー。
「そうだ!審議は必要無い!」
「ヒカル君がそこまで言うなら少しの罰で許してあげるわ!」
各々声を上げる。
相変わらず凄い人気だ。だが、そのせいで俺達はあらぬ罪を被せられている。
だが、その刹那であった。
会場に凄まじい重圧が充満した。
バーティーテーブルが縦にグシャッと音を立てながら木の破片が飛ぶ。
テーブルに載っていた食べ物は地面に落下し、食器もことごとく割れていく。
恐らく……重力だ。俺達に掛かる重力が増しているのだろう。
「グッ……!!」
「あっ……がっ……!」
蓮以外のほぼ全員の勇者達も地面に叩きつけられる。息が詰まり、起き上がろうとするが起き上がれない。
「なっーーー!!」
そんな中で数人の勇者達。そして瑠花達や蓮。ヒカルだけが立っている。
玉座の方を見ると王様はなんともなっていないようだ。ブライアス兵士長も踏ん張っているように見える
そこにーーー。
コツ…コツ…。と、足音が耳に届いた。
だが、次の瞬間。
ドッガシャァァァン!!という凄まじい音を立てながら扉が粉々になった。言っておくが
これは比喩ではない。
実際に粉々になったのである。
そしてその先にいたのはーーー。
「さっき言ったことォ……。
取り消してもらうぜェ?大勇者様ァ?」
ポケットに片手を突っ込み、口の端を吊り上げて笑うグラビティの姿であった。
実は、昨日投稿しようとしたのですが、普段投稿に使っている機械がぶっ壊れ投稿出来ませんでした。
今、タブレットで執筆しているのですが、如何せん速く書けず、量が少なくなりました。
申し訳ありません。
それと、感想、批判などありましたらお待ちしております。
2014年10月19日。修正を加えました




