[第十話]稀血と協力者
蓮は今、大昌達にやられた場所へと来ていた。地面には多少血があったが殆ど固まっていて使い物にならないのが見て分かる。
「ザフィードさん。よく見てて下さい。それと紫苑。俺の携帯でこれから彩葉にやってもらう事、録画しておくから間違い無いと証言くれたら嬉しいです」
「分かったわ」
現在この場所には、蓮、紫苑、チャールズさんが信用出来ると連れてきたザフィードさん。最も重要な人物である彩葉の4人だけが居る。
そして、これからやること。
それは、彩葉の自然記憶で地面に流れた血の記憶を読みとり、その時の血だけを取り出すというものだ。流石にこんな場所で自分以外の血が流れているとは思えないし、あったとしても蓮の血液型的に、ほぼ百%証拠になる。
何せ蓮はーーー。
「稀血だから……な」
日本に11名程しかいない稀な血液型の持ち主。その中でも俺は、ABO型の稀血のボンベイ型という血液型だ。
人を100人そこら集めた所で、ほぼ百%自分以外に稀血はいない。
だが、それ故に大怪我して血を流しすぎたらほぼ確実に死亡してしまう。
理由は自分に合う血を持っている人が少ないから。
今まで健康診断などでバカにされたり、珍しがられたりしていたのだが今回はそれが役に立った。
すると彩葉が前に出た。そして座って地面に手を触れる。
そのまま真剣な表情で、
「……いきます」
と言った。その言葉に頷く蓮達。
そして、彩葉が詠唱を始めた。
「空よ、大地よ。万物を司る自然よ。
我が声に耳を傾けたまえーー。
自然記憶!!」
その宣言が終わると同時に、地面が光り輝く。
そして大地から赤い液体が浮かび上がった。浮かび上がった血は、彩葉が持っているビンの中に吸い込まれるように入っていく。
「なっ!!?」
その様子に、蓮は驚きの声を上げた。
……やはり自分に使えないことだからどうしても慣れない。
「よいしょっ…と。これで血の7割といったところです。…残りはどうしますか?」
彩葉がビンに血を入れて手渡ししながら言う。そのビンを受け取りながら
「あぁ、残りはまだここにおいておくよ。もし、これが俺の身体から採った血だろうとかいちゃもん付けられた時の為にね」
とりあえずはそう言っておいた。
そして携帯の録画終了ボタンを押す。
「よし…これでこっちの準備はOKだ。
とりあえず集合場所に向かおう」
「分かった(わよ)」
紫苑と彩葉が頷く。
そして蓮達は部屋へと戻って行った。
ーーーーー
「とりあえず…兵士長にでも話入れて置くべきだよなァ」
蓮達が血を採っている間グラビティは瑠花、チャールズと共に廊下を歩いていた。
「ブライアス兵士長?協力をお願いするの?」
「あァ…。王は謁見出来ねェだろォし、ヒカルは話を聞いてくれなさそォだからなァ……」
そう言ってグラビティは溜息をついた。
すると、瑠花がポンと手を叩いてこう言った。
「ヒカル君かぁ…私が説明すれば信じてくれるかもしれないよ?だってヒカル君、頭良いからどっちが悪いかは良く考えたら分かると思う」
瑠花のその言葉に、
「俺の予想だと瑠花さんは騙されてるんだァ…みてェな事を言いそォな気がするがなァ…」
と言った後に「どォせ頭固い野郎だからなァ」と呟いた。すると瑠花も納得したように頷く。
「じゃあ、まずは訓練場だね?
そろそろ訓練も終わると思うし、丁度良いと思うよ」
そうして二人は訓練場へと向かったのだった。
訓練場では勇者達が訓練を行っていた。ちなみに、勇者達は現在4つのグループに分けられている。
1つ目が、近接戦闘タイプ。
これはそのまま槍スキルなど、近接で戦う勇者達が行う訓練だ。
2つ目が、魔法タイプ。
これもそのまま、魔法を得意とする勇者が行う訓練。ちなみに瑠花はここで訓練を行っている。
3つ目が、能力タイプ。
強力なフォーチュンスキルを持つ勇者が行う訓練だ。グラビティはここに属しているが、一度も訓練には参加していないらしい。
そして4つ目、万能タイプ
これは、近接も魔法もフォーチュンスキルも全てが強力だったりスキルを持っているエリート勇者達が行う訓練だ。
ここに王国は一番力を入れており、紫苑やヒカルもここに属している。
そしてブライアス兵士長は、総監督という立場にある。分かりやすく言うならば、全てを見回り、何か訓練でいらない所は無いか。それぞれの能力を伸ばせているのかを見て回る仕事らしい。
当然、ブライアス兵士長は王からもかなりの信頼がある。
その人に協力を要請すればより確実に無罪が獲得できると考えての行動だ。
訓練場は基本白いタイルのような床で出来ている。
そこでは日夜、勇者達が剣をぶつけ合い。魔法を使い、能力を行使しているのだ。
そこに参加していない勇者は二人だけだ。
一人は、蓮。
どのタイプにも適性が無いので訓練のしようがないと言うのが理由だ。
本人にはやる気はあるのだが…いかんせん上手くいかず足手まといになる。それ故に参加資格が与えられていない。
そしてもう一人。グラビティだ。
彼は、恐らく勇者達の中でも1位2位を争うほど強力な能力を持っている。だが、その能力はたった一度行使しただけで完全に使い方を理解したらしく自分から無駄な事はしないーーと言って訓練をしないようになった。
もとよりブライアス兵士長はその二人に頭を悩ませていたのだが、今回の件を聞いてそれに拍車をかけた。
(…どうして…こう。次から次へと問題を持ってくるんだ……)
段々ベテランと呼ばれる年になり、後退し、薄くなってきた髪の毛が更に後退し、減ってきているように感じる。
(仲間を殺そうとするとは……。流石の俺でもここまでの件は……。…ハァ…。憂鬱だ)
内心、溜息を吐くブライアス兵士長。
そんなブライアス兵士長に一人の勇者が近付く。
「ブライアス兵士長。俺の動きどうですか?」
「ん…?あぁ、もう少し剣の振りに身体が持っていかれないように身体作りが必要だな」
考え事をしながらでもしっかり周りを見ている事を考えると、やはり城一番の戦士というものだろう。
するとーーー。
「ん……あれはグラビティと…立花か?」
少し遠めに、二人の姿が見えた。
そしてその二人は真っ直ぐ自分の元へ近付いて来ている。
「……反省したから口添えして欲しいとかか?」
良くありそうな予想を立てるが、早合点するのは良くないだろう。
とにかく先に話を聞くべきだ。
そしてブライアス兵士長は二人が此方に来るまで周りの様子を見ながら待っていた。
ーーーーーー
「ブライアス兵士長。」
ブライアス兵士長が居る場所に着くと同時に瑠花が声をかけた。
「なんだ?」
ブライアス兵士長が反応する。
すると瑠花は「詳しくはグラビティ君から聞いてください」と言ったので、ブライアス兵士長がグラビティの方を向く。
するとグラビティはニヤリと口元を歪めると、とある事を話し始めたのだった。
やばい、証明編がなかなか終わらない。
と、少しやばめに思っているゆうポンです。
…これ、なんの小説だっけ?
戦闘だったのにな…。
まぁこれが終わったら普通に戦闘にするのでご安心を。
感想待ってます!
2014年10月19日。修正を加えました