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怒りについて
世界はその歩みを遅めたままだった。
ゆっくりと、まるでコンマ送りの映像を見るかの様に、アニエスの身体が倒れ込んで来る。
「……アニエス?」
受け止めた手に、温かな液体が触れる。荒い呼吸が首元を湿らせる。震える身体が、俺の指先を揺らす。
「アニエス!!?」
斬られた!? 俺を庇って!?
「アニエス!!! おい!!! 返事をしてくれ!!!」
身体をずらして顔をこちらに向けるが、彼女の口からは呻き声が聞こえるだけだった。
「アニエスっ!!!」
「……ぅっ」
ごボリと、そんな音が聞こえそうな程、彼女の口から血が溢れて来る。