強くなれると思っていた
英語で恋をしたことはありますか?
日本語では言えないのに、
英語だと素直になれてしまう瞬間。
これは、そんな恋の話です。
彼と出会ったのは、友達の紹介だった。
「優しい人だよ」とありきたりな言葉と一緒に魅せられた写真。素直に「かっこいいなぁ」と思った。
時々英語は、ずるいと思う。
I miss you. You mean so much to me.
日本語よりも柔らかくて、素直になれる気がする。
英語を話すときの私は、少し違う。
臆病じゃなくて、感情を隠さないような感じ。
彼と過ごす時間、デートは、どれも初めてだった。
何度もデートをして、夜が長くなって、手をつないで眠った。 彼を友達に紹介したとき、私は誇らしかった。
恋愛経験なんてほとんどなかったけれど、
一月から始まった私たちは、不思議なくらい穏やかに続いた。
六月の私の誕生日。
“You wanna be my girlfriend?”
彼は少し照れたように笑いながら言った。
もうとっくにそうだと思っていたのに、それでも嬉しくて、胸の奥がじんわり熱くなった。
「お昼、何食べたい?」
彼はそう聞いた。
私は、彼がお金に余裕がないことを知っていた。
彼と一緒にいられれば何でもよかった。
「サイゼリアが食べたい。」
それは本心だった。
彼は「もっといいところ行こうよ」と言ったけれど、
安くて、いつも通りの安心する場所が、私は好きだった。
何度目かのデートの夜。
「こんなに誰かを好きになったのは初めて」
英語でどう言えばいいかわからなくて、
翻訳アプリに気持ちを書き、翻訳した文章を、
その画面をそのまま彼に見せた。
彼はきょとんとした顔で固まり、
鼻を赤くして、涙をひとつだけこぼした。
その後の彼の涙はしばらく止まらなかった。
目尻が少し垂れていて、
何度も「thank you (name)」と言った。
“No one has ever told me something this beautiful.”
あの時のお店や彼の表情は、今でも忘れられない。
しばらくしてまた数カ月後、
日本に居る為の彼のビザの期限が切れてしまい、彼の仕事は無くなってしまった。
だけど彼は、日本にいても結局は英会話の先生として働くしかないし、将来性もお金もない人生になるのは嫌だと笑って言った。
でもその笑顔は、少し無理をしているように見えた。
私は何も言えなかった。
応援したいのに、置いていかれるのが怖かった。
前の自分に戻る想像すらできなかった。
貯金が尽きるまで彼はしばらく日本に居る事が決まったが別れの日が来るまで長くはなかった。
今でも、別れの日を覚えている。
空っぽになった彼の部屋を。
段ボールだけが積まれた部屋は、
私たちの時間や思い出まで
片付けられてしまったみたいだった。
彼がアメリカへ帰る朝、私は先に自分の家へ帰った。
見送る勇気がなかった。
帰りの電車で、ふと前にお気に入りだった曲が流れてきた。
彼と出会った頃によく聴いていた曲。
その一曲だけで、
出会った頃の気持ちが一気に蘇る。
まだ何も知らなかった、愛なんて知らなかった頃の、
無邪気な私たち。
家に着いて数時間後、彼から電話が来た。
私が彼の部屋を出たあと、
彼はお母さんと電話をしながら川辺で泣いていたらしい。
「ちょっと恥ずかしかったけどさ」と彼は笑った。
その声を聞きながら、私はまた泣いた。
空港での別れは、思っていたより静かだった。
“Long distance is hard, but we’ll be okay.”
そう言って抱きしめられたとき、
私は強くなったはずなのに、少し震えていた。
こんなにさみしい夜だと感じたのは人生で初めてだった。
彼が旅立っても互いのメッセージは毎日欠かさず続いた。
時差を計算して、
「おはよう」と「おやすみ」を送り合う。
そのまた数ヶ月後、私は彼に会いたくて唯一の宝物を売り、
彼に会いにアメリカへ行った。
彼の家族や友達に会い、彼の育った街を歩いた。
日本でデートをするとき割り勘をしていた私達。
アメリカでは私に財布を出させようとすらしなかった。
コンサートやビーチいろんな場所に連れて行ってもらった。
そこには、私の知らない彼がたくさんいた。
新しい体験が出来たしすごく楽しかったけど、
未来を見せられているようで、少し怖かった。
帰りの飛行機で17回泣いた。
日本に着いた時、私の目はカラカラしていた。
日本に戻ったあと、私は彼が恋しくてたまらなかった。
再びアメリカへ行く為、日本語教師の検定を調べた。
私は大学に行っていなかった。それが理由でアメリカで働くのは難しいという現実にぶつかった。もちろん現地の大学に行く手段もあったが学費や生活費は現実的では無かく諦めるしかないかと彼に相談していた。
そんなとき、オペアという道を知った。
子どもが好きな私には向いていると思っ。
でも、ホストファミリーは見つからなかった。
「ホストファミリーは見つからなかった。
それを彼に伝えた夜。
いつも無邪気な彼の声のテンションは、
その日だけ少しおとなしかった。
電話の向こうの彼は、静かだった。
“Maybe it’s too much pressure.”
その一言で、
私たちは終わった。
私は毎晩泣いた。
でも彼は、悲しい素振りをあまり見せなかった。
むしろ、私には彼が少し軽くなったように見えた。
それが、いちばん苦しかった。
趣味や仕事に集中することができるようになってきていた
数ヶ月後。
私は元気になりつつあった時。
通知が鳴った。
画面に彼の名前。
“Miss you. Sorry shouldn’t say that.”
前なら胸が締めつけられていたはずの言葉。
でもそのとき、私は何も感じなかった。
画面を見つめたまま、静かに気づいた。
ああ、もう終わっていたんだ。
彼は何度かデートをしたらしい。
“You are the best.”
そう言われても、心は動かなかった。
英語で恋をした私は、
強くなれたわけじゃない。
でも、弱いままではなくなった。
彼は私の初めての彼氏だった。
私も、彼の初めての彼女だった。
不器用で、まっすぐで、
二年間、ちゃんと恋をした。
あの恋があったから、
私は将来なりたいものを見つけられた。
誰かの言葉を支える人になりたい」と。
そして最近。
昔、少しだけ気になっていた男の子から連絡が来た。
画面に映る、その彼の名前を見て、私は少しだけ微笑んだ。
また、いい出会いがあるといい。
また、ちゃんと縁があるといい。
今度は、日本語でも、英語でもなく、
ただ素直な私で。
これはフィクションです。、
アプリも小説も初めてなので甘めに見てくださやと助かります!




