4
仕事したり創作したりしているうちに、5月11日になる。文学フリマ東京当日だ。私は始発の新幹線に乗り、京都駅から東京駅まで向かう。朝4時起きだったので完全に目が覚めているわけではないけれど、フォロワーさんやお客さんに会えることが楽しみだった。
始発の新幹線に揺られながら東京駅に行き、会場である東京ビッグサイト行きのバスに乗る。出店者入場開始30分前に到着したけれど、すでにちらほら出店者と思われる方がいた。
ふと、ある若い男性の姿が私の目に留まる。彼は身長180cmくらいで背が高く細身の体型をしていた。サラッとした水色の無地のシャツを着ていて、リヤカーに本が入った段ボールと特大サイズのポスターを入れ、スマートフォンを見ながら歩いている。なんとなくだけれど、相互フォロワーの愛輝人さんではないかと思いながら彼を見ていた。あの水色のシャツは彼のnoteで見たことがあるものだし、特大ポスターを持っていくとXで言っていたからだ。
予定より早く出店者入場が始まり、私は男性スタッフから出店者証と引き換えに赤いリストバンドをもらった。リストバンドを左腕につけ、私は自分のブースがある4階を目指す。ブースを見つけてからは設営を始めた。什器を持ってきていたのもあり、今までよりは少し設営に時間がかかってしまう。事前に家で什器の組み立ての練習をしてきたけれど、それでも当日は組み立てに手間取ってしまったのだ。
どうにか設営を完了させ、Xでも設営完了とポストする。私のポストを見てくれていたのか、着いた時に見かけた若い男性がこちらに向かってくるのが見えた。
「しおざきさんですか? こんにちは。愛輝人です」
彼は少し緊張した様子で挨拶する。私が見かけた男性は愛輝人さん本人だったのだ。私は頼まれていた商品を愛輝人さんに渡し、代金を受け取った。合計500円だったけれど、愛輝人さんは律儀にも
「100円玉5枚で良いですか?」
と聞いてくれる。私としては500円玉1枚でも良いのにという気持ちだった。それから私と愛輝人さんは少し立ち話をする。
「どこから来たんですか?」
と聞かれ、私が京都ですと答えると、愛輝人さんは目を丸くしていた。私は彼が埼玉県から来ていることを知っていたのであえて聞き返さなかったけれど。もう少し話をした後、私は愛輝人さんと別れた。
それからは愛輝人さんの小説を買いに行き、女性フォロワーさん2人のブースに行って取り置きをお願いしていた本を買いに行く。帰りの新幹線で読むのが楽しみだ。