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日本橋心霊スポット

作者: 神崎玄

実話です。

 ここの場所は心霊スポットめぐりの界隈ではちょっとは知られている所なので、あえてぼやかしておく。

 知っている人は知っているし、知らない人が興味本位でのぞきに行くのは避けたいからだ。


 そのビルは一階にメイド喫茶が入っていて、そこは結構な人気店だった。

 上の階にはメイドリフレが入り、私はそこの常連だった。

 あるとき、うちの近くのコインランドリーで、リフレメイドのHちゃんとばったり出会った。

 見れば、エプロンが籠にたくさん入っている。

「お洗濯? 大変だねえ」

「はい。結構重いんですよ」

 リフレからコインランドリーまでは大きな通りをはさんでいる。歩いて五分はかかる。女の子には重労働だ。

「お店に洗濯機はないんだ」

「いえ。ないわけじゃないんですけど」

「別の人が使っている?」

「いえ。……実は、ビルの屋上に洗濯機があるんです。ただ、あそこ、呪われそうで怖いんです」

「何それ」

「行ってみたらわかりますよ」

 そして、Hちゃんは不思議なことを言い出した。

「屋上に行くための階段の壁に、呪いの詩が書かれているんです。噂では、一階のメイド喫茶の病んだ子が自殺する前に書き残したって。だからあそこは誰も使いたがらないんです」

「はあ」

 にわかには信じられない話だった。

「本当なんですって。一度、見てきて下さいよ」


 というわけで、後日私はリフレに寄るついでに、『稲荷心経』一巻をかばんにしのばせて上の階へと向かった。 階段の「関係者以外立入禁止」の大きな札が怖い。誰かに見つかったら「お祓いに来ました」で通す作戦だ。

 最後の階段を登っていくと、確かに壁に真っ赤な文字が書かれていた。

 一文字が掌大だろうか。結構大きく、壁にじかに書かれている。ハシゴがなければ書けない感じだ。そして、結構達筆だ。

 踊り場の壁には「防犯カメラで録画しています」の札もあった。しかし、カメラらしい物は見当らなかった。

 私は、証拠として携帯で何枚か写真をとり、おそるおそる屋上の扉を開けた。

 そこは、何の変哲もない、コンクリートの屋上で、屋根がついた一角に何台か洗濯機が並んでいた。古い型の洗濯機で、コインを入れて動かすヤツだった。物干し場もあったが、誰も使っていなかった。

 特に何か気配を感じるというわけでもなく、ただ、あの鬼気迫る詩だけが人の流れを止めている感じだった。私はお祓いをすることもなく、その場をあとにした。


 のちに、ある人に撮った写真を見せたところ、とある歌手の名前を出した。その詩は、オリジナルではなく、誰かが作詞した歌詞だったのだ。


 そのビルの屋上に入ったのは一回きりである。

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