追放された最高の罠師《トラップマスター》が、新人冒険者向けの店を開いたら。
途中で疲れた(正直かよ
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追記:連載版始めましたので、続きが気になる方はそちらも応援よろしくお願い申し上げます。
「お前の罠なんかなくても、俺たちは一流のパーティーなんだよ!!」
「そうよ! むしろアンタの罠のせいで、怪我しそうになったのよ!?」
「それはお前たちが説明を聞かないからだろ!? こっちが罠を設置したのに、何も考えず魔猪みたいに突っ込んでいくから――」
「うるさい、黙れ! 今日限りでお前は、このパーティーから追放だ!!」
ある日のクエスト終了後。
俺はリーダーから、追放を言い渡された。その理由というのも、事の発端は『俺が設置した罠に気付かず、負傷しかけた』から。だけどこちらにも言い分はあって、そもそも事前の説明でどのようなものを使うかは進言していた。
そのことをマトモに受け取らなかったのは、彼らの方だ。
生返事ばかりで、不安を抱えたままに戦闘が開始されてこの結果である。
「分かった。こんなパーティー、こっちからも願い下げだ!」
そして、売り言葉に買い言葉。
仮にもSランクパーティーであるここを抜ければ、役立たずの烙印が押されても仕方がなかった。だけどそれ以上に、馬鹿の一つ覚えのように突撃する相手に辟易としていたのだ。俺はリーダーたちにそう告げて、場を立ち去った。
後方から恨み言が聞こえてきたがもはや完全に無視。
俺は大きくため息をつきながら、住まいとしている宿に向かった。
「はー……でも、これからどうするかな」
到着後、部屋に入った俺は疲労からベッドに思い切り倒れ込む。
天井を見つめて、今後について考えた。
「別のパーティーに入るにしても、罠作りしかできない雑用係なんて……どこも拾ってはくれない、か」
今までSランクパーティーに所属していた分、蓄えはそれなりにある。
しかし、日々の食い扶持は稼がなければならなかった。そうなると新規メンバーを募集しているパーティーを探すのが基本だが、俺のような特殊技能の居場所は少ない。
そうなってくると、自分の判断が正しかったか不安にはなった。
しかし、きっと遅かれ早かれ喧嘩別れになっていたに違いないだろう。そう思い直して身を起こしつつ、ふと窓の外へと目を向けた。
「ん……新しい店ができたのか」
すると、いつもと違う明かりに気付き興味を惹かれる。
どうやら宿の程近くに、新しい飲食店ができたようだった。新装開店ということもあって、物珍しさからもそこそこ繁盛している様子。
俺も気晴らしに顔を出そうかと考え、しかし――。
「……ん、店を開く?」
そこでふと、もう一つの新しい案が浮かんできた。
それというのも、自分が作った罠を冒険者に販売する、というもの。
「まだ駆け出しの新人冒険者なら、罠はそれなりに入り用だよな」
冒険者の花形といえば、剣士や魔法使いといった攻撃を主とする者たちだ。
しかし、そこまで至るには長い研鑽の日々が必要であり、とりわけ新人冒険者には何かしらのアイテムが必須となってくる。そう考えれば、罠売りというのは意外にアリだった。
もっとも、新人相手の商売なら儲けは期待できないが……。
「でも、馬鹿にされながら雑用するよりはマシだな」
結局のところ、そんな簡単な理由で踏ん切りがついた。
資金については十分だろう。
そう思い俺――カイスは早速、明日から準備を始めようと決めたのだった。
◆
そして、数週間後。
簡素ながら、俺の店【トリック&トリック】は始まった。
店名については何も考えつかなかったので、適当に決めたものである。しかし語呂も不思議と悪くはないし、なんとなくだが気に入っていた。
――で、肝心の客足はといえば。
「あの! これって、どのように使えばいいのですか!?」
「あー……それは、魔物の脚部を拘束するんだけど……」
物珍しいこともあってか少ないものの、狙い通りの顧客層は来店しているようだった。店を訪れる冒険者たちは誰も彼もみな、一様に目をキラキラと輝かせている。
いま声をかけてきた少女だって、分かりやすいほどに新人冒険者だった。
アリスという名の彼女は、まだ十二歳だという。
詳しくは知らないが家族を養う必要があるらしく、先日ギルドに申請して冒険者になったらしい。銀色の髪に青の瞳、腰にはやや頼りない短剣を携えていた。
このような少女が戦いに向かわなければならない、という環境が気にはなる。だが俺はあくまで外部の人間として、彼女にアドバイスするに留めるべきだ。
そう考えつつも、少しばかりサービスをすることにした。
「それだったら、同じように地面に設置する罠でもっと良いのがあるよ」
「もっと良いの……ですか?」
「あぁ、これなんだけど――」
◆
「えっと……これをこっちに置いて、あとは……」
――その後、ダンジョンにて。
アリスはカイスから貰い受けた罠を設置し、確認を行っていた。
彼曰く、この罠は誰でも簡単に上級魔法を行使することができる特別なもの、らしい。もっとも新人冒険者である彼女には、その凄みなど理解できようもなかった。
そのため、いまはとかく言われた通りに作業をしている。
「よし、これでスライムも狩れるかな?」
そして、意気揚々と頷いた。
その時だ。
「え、なに!? どうして、こんな階層に――ドラゴン!?」
地鳴りが響き渡り、現れるはずのない巨躯が出現したのは。
ドラゴンは咆哮を上げて、少女に向かって歩みを進めた。
「い、いや……!」
アリスは完全に腰が抜けて、そのドラゴンを見上げる形となる。
もはや、逃げ場などない。
絶体絶命。
ここまでか、と思われた瞬間だった。
「……え?」
――業、という音と共に。
ドラゴンの身をも上回るほど巨大な火柱が、その場に立ち昇った。
それは瞬く間に、彼の竜の身体を焼き尽くしていく。そしてアリスが思わず顔を覆った時にはもう、巨大ドラゴンは消し炭となっていたのだった。
残っているのは、魔物を倒した証拠として残る魔素の結晶だけ。
「す、すごい……!」
少女はそれを手にして、呆気に取られたように立ち尽くすのだった。
◆
――一方その頃。
「くそ、どうして俺たちがこんな魔物に……!?」
「あり得ない、どうして!?」
カイスがかつて所属していたパーティーは、危機に陥っていた。
それもそのはず。今まで彼らがSランクの地位に立っていた理由の大半は、カイスの仕掛けていた罠によるところが大きいからだった。
だが、周囲をマトモに見ようとしない彼らは知る由もない。
そして何故、自分たちの力が通用しないのかを理解しないまま。
ただただ無様に、敗走するしかないのだった……。
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