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竜王に拾われて魔法を極めた少年、追放を言い渡した家族の前でうっかり無双してしまう~兄上たちが僕の仲間を攻撃するなら、徹底的にやり返します〜  作者: こはるんるん
4章。王立魔法学校、開校

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55話。人魚姫から結婚を申し込まれる

「か、海竜王に勝てたのか……?」


 僕は輝く粒子となって散っていく海竜王を、呆然と見送った。


 欠陥品と蔑まれてヴァルム家を追放された僕が、七大竜王の一柱を倒すなんて、信じられない心境だった。


『海竜王リヴァイアサンを倒しました。ドロップアイテム【海竜王の霊薬】を入手しました!』


 海竜王が崩れ去り、ポンッとドロップアイテムが出現して僕の手に収まった。

 コンバットブルーの液体に満たされた小瓶だ。


「はっ、【海竜王の霊薬】……?」


 さすがに度肝を抜かれる。

 今まで手に入れた竜の霊薬は、猫耳族を進化させたり、僕の魔力量(MP)を増大させる効果があったけど……

 【海竜王の霊薬】にはどんな効果があるのか、見当もつかない。


「やはり、カルはわらわの見込んだ通りの男だったのじゃ! それにしても、今の一撃はなんじゃ? わらわたち竜王のブレスを取り込んで力に変えていたようじゃが?」


 アルティナの弾んだ声で、僕は我に返った。


「……さあ、僕にもまったくわからない」


 この魔剣グラムには、何か恐るべき秘密が隠されているようだった。


「まさか……ヴァルム家の伝承にある【根源の刃】!? 扱える者が現れようとは……!」


 父上が息を切らせて、駆け寄ってきた。どうやら、僕たちの戦いを見届けていたらしい。


「……父上、何か知っているのですか?」


「ヴァルム家当主のみに伝わる言い伝えがあるのだ。魔剣グラムには、『竜王の力を取り込み、竜王を滅することのできる【根源の刃】』が隠されているとな……」


「わらわの母様が300年前にカイン・ヴァルムに破れたのも、この力が関係しておるのか?」


 アルティナが父上を見下ろした。

 父上はドラゴンとなったアルティナの威容に圧倒される。


「お、俺も詳しくはわからぬ。【根源の刃】を出現させた者は記録に残っておらず……単なる伝承だと思っていたのだ」


 そして、僕に向き直って眩しいモノでも見つめるように目を細める。


「まさか大海の支配者、海竜王リヴァイアサンを滅ぼしてしまうとはな。カルよ、お前は俺などには理解の及ばぬ才能の持ち主であったようだ。

 ……今さらながらだが、お前のような息子を持てて誇りに思う。今まで、すまなかった」


「いえ、父上。僕がここまでこれたのは、アルティナやシーダ、ティルテュ、みんなの力添えがあったればこそです。僕ひとりでは、到底、海竜王にはかなわなかったと思います」


「……そうか。才に恵まれながらも才に溺れず。お前こそ、心技体が揃った真の戦士と言えよう。俺やレオンのような愚か者とは正反対だな」


 父上は自嘲気味に笑った。


「おっ!? ぬぬぬぬぬぅっ、これはどうしたことじゃ!?」


「うわぁっ!?」


 その時、アルティナの身体が急激に縮み、元の少女の姿へと戻った。

 アルティナの背に乗っていた僕は、彼女を下敷きにして、倒れてしまう。しかも、アルティナは全裸になっていた。


「ぶぅううううっ! なぜぇ!?」


「まさか聖竜王の呪いが、完全には解けておらぬのか!?」


「おわわわわっ!? こ、これを早く着てくれ!」


 僕は慌てて目をつぶって、上着をアルティナに被せる。


「助かるのじゃ。意図せずして、人の姿に戻ったために、服の再構築ができなかったのじゃ」


 アルティナはいそいそと服に袖を通した。ホントに心臓に悪いんで、やめて欲しい。


「ごめんなさい冥竜王! 至宝でも、あなたの呪いは完全には消せなかったみたいだわ!」


 人魚姫のティルテュが、父王と共に駆けつけてきた。


「なぬっ!?」


「どうやら、一時的に聖竜王の呪いを無効化しても、5分程度で呪いが再構築されてしまうようであるな」


 オケアノス王の見立てに、僕たちは肩を落とした。

 聖竜王は2000年以上前から生きているという最強最古の竜王だ。その力はやはり人知を超えている。


「……それじゃアルティナを呪いから完全に解放するための方法はひとつしかないな」


 僕は冷静に考察して、結論に達した。


「僕が聖竜王を倒せば良いわけだ」


「おおっ! さすがは、わらわの旦那様、頼もしい限りじゃ。そうじゃ、わらわとカルが力を合わせれば、怖いもの無しなのじゃ!」


 アルティナが僕に抱き着いてくる。大きくて、柔らかな双丘が押し付けられて、思わず赤面してしまった。


「ところで、カル殿……我が娘ティルテュの唇を奪ったと、先程、聞き及びましたぞ」


 オケアノス王に怒気のこもった声で呼びかけられて、僕はギクリとした。


「それはエクスポーションを飲ませるためでして……」


「口づけは、人魚族の姫にとって、永遠の愛を誓う神聖な行為。ティルテュと結婚していただきたいのですが、よろしいですかな?」


「ちょっとお父様!?」


 僕とティルテュは、そろって仰天する。ティルテュは顔を真っ赤にしていた。


「ええ!? いくらなんでもティルテュの気持ちを無視して、一方的にそんなことを決めるのは横暴では?」


「そうじゃ! カルとはわらわが結婚するのじゃぞ!」


 僕とアルティナの反論は、横から上がったティルテュの歓声にかき消された。


「はぃいいい! 喜んでカル様の元へお嫁に行かせていただきます! 海竜王を倒した英雄との婚礼となれば、国を上げてのお祝いですね!」


「はぃいい?」


 喜色満面で飛び跳ねるティルテュに、僕は心底呆気に取られた。

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