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竜王に拾われて魔法を極めた少年、追放を言い渡した家族の前でうっかり無双してしまう~兄上たちが僕の仲間を攻撃するなら、徹底的にやり返します〜  作者: こはるんるん
3章。海竜王リヴァイアサンの討伐

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52話。アルティナの竜の力が解放される。

【アルティナ視点】


「おぬしら、退くが良い!」


 わらわは立ち塞がった海竜を、【冥火連弾ヘルファイア】の黒い火球で、焼き尽くした。

 オケアノス王に導かれて、わらわたちは至宝が眠る隠し部屋へと向かっていた。


 カルの才能は底知れぬが……ひとりでは海竜王リヴァイアサンに勝てる可能性は低いと思う。

 わらわが力を取り戻して、1秒でも早くカルの元に駆けつけなくては……

 ひりつくような焦燥が胸を焦がす。


「冥竜王……お前は力を温存しておけ、露払いは俺が引き受けよう」


「なぬっ? おぬしがか……?」


 わらわに助力を申し出てきたのは、ヴァルム家当主ザファルじゃった。


「海竜王に対抗できるのは、カルを除けば、お前しかいないだろう。俺では悔しいが、たとえ魔剣グラムがあったとしても力不足だ」


 わらわの愛するカルを無人島に追放した鬼のような父親。タダの嫌なヤツだと思っておったが、なかなか殊勝なことを言うではないか?


「冥竜王、お前には……感謝している。お前と出会ったことで、カルはその才能を開花させたのだからな。まさか俺の息子が、海竜王と渡り合うまでに成長するとは……」


「おぬしがカルにした仕打ちは許せぬが、わらわもカルとの出会いには感謝しておる。カルと出会わなければ、わらわは今も穴蔵で聖竜王の影に怯えて、引きこもり生活をしていたことじゃろう」


「そうか……どうか息子を、カルをよろしく頼む。ヴァルム家は滅びても、英雄カイン・ヴァルムの高潔な血と魂は、アルスター男爵家に受け継がれていくだろう。俺はもはや、それが見届けられれば満足だ」


 ザファルは複雑な笑みを浮かべた。

 聖竜王の手先なんぞにたぶらかされる前にその結論に達していたら、良かったのにの。


 ……いや、今からでも遅くないと、喜ぶべきか。

 どのような処罰がヴァルム家に下されるにせよ、もうカルは父親と対立せずに済むのじゃからな。


「ふん! 言われなくても大丈夫じゃ。わらわとカルの結婚式には、おぬしも父として列席させてやろう」


 わらわは鼻を鳴らした。

 すると、行く手を半魚人の大部隊が阻んだ。

 くっ、めんどうじゃの……


「この程度であれば、造作もない。いでよ【焔鳥】(バーンバード)!」


 ザファルが超火力の炎の魔法で、一撃で蹴散らした。悲鳴を上げる間もなく、魔物どもは消滅する。


「さすがは、カル様のお父様だわ。すごいわね!」


 ティルテュが歓声を上げた。

 わらわも楽ができて、良い。魔力の消耗が抑えられる。


「ここだ! ここから至宝のある隠し部屋に入れるのだ!」


 オケアノス王が、巨大なレリーフの刻まれた壁の前で足を止めた。

 王がなにやらキーワードのような言葉を呟くと、壁に入り口ができる。


「……これは古代エレシア文明の遺跡じゃな?」

 

 中はすり鉢状の部屋だった。

 わらわの隠れ家にあった治療カプセルに似た機械類が、部屋中を覆っていた。


「ここは、本来なら人魚の王族以外は、絶対に入ってはならぬ禁断の領域……残念ながら、冥竜王殿の質問には一切、お答えできませぬ」


 オケアノス王は、顔をしかめて告げた。

 なるほどの。わらわのことを完全には信用してはおらぬということか。

 じゃが、ある程度の察しはついたのじゃ。


 この海底都市そのものが、おそらく古代エレシア文明の遺跡なのであろう。

 海底にこんな高度な都市を作るなんぞ、オーバーテクノロジーも良いところじゃ。

 とすると、ここは海底都市の中央制御室といったところかの?


「ティルテュよ、これを……」


 王は部屋の中央に安置された青く輝く宝珠を手に取って、ティルテュに渡した。片手に収まる程の大きさの宝石じゃ。


「この【オケアノスの至宝】は、人魚族の王家の者にしか使えぬ。万が一にも、われらに仇なす者に悪用されぬためにな」


「はい、お父様! それで、これはどうやって使えば良いのですか? 早くしないとカル様が!」


 ティルテュは切迫した様子で尋ねた。

 すると、爆音と共に大地が大きく揺れた。

 危うく転倒しそうになって、壁にしがみつく。


「むっ! こ、これは海竜王がドラゴンの姿に……!?」


 部屋の壁に設置された大型スクリーンに、雲を突くような海竜王の巨体が映し出された。

 ヤツの放つ魔法の余波で、海底都市に甚大な被害が出ているのじゃ。


「なんてこと!? このままではオケアノスが壊滅してしまうわ!」


「カルが戦っておるのじゃ! 早くして欲しいのじゃ!」


 わらわも焦りを抑えられなかった。


「わかった。ティルテュよ、至宝にありったけの魔力を流し込むのだ! さすれば半径100メール以内の、人魚族以外の者が使った魔法が無効化される」


「わかりましたお父様! 【オケアノスの至宝】よ。お願い、冥竜王の呪いを解いて!」


 ティルテュが目をつぶって大量の魔力を流し込むと、【オケアノスの至宝】から、爆発的な蒼い輝きが溢れ出した。


 それが、わらわの身を縛る見えない呪いを消滅させていくのがわかった。

 おおっ、ようやく、ようやく……聖竜王の呪縛から解き放たれることが、できるのじゃな。


 これも、すべてカルのおかげじゃ。わらわひとりでは、絶対にここまでたどり着けなかった。

 ありがとう。おぬしに深き感謝を……


「者ども! 人魚族の王女を 【オケアノスの至宝】を探せ! この俺に献上するんだぁああ!」


 海竜王の追い詰められた絶叫が都市中に轟いた。

 あやつめ、今になって至宝を欲するだと?

 よくわからんが、そうはさせんのじゃ。


「待っておれよ、カル。今、わらわが行くからの!」


 わらわは外に飛び出すと、冥竜の姿へと変身した。黒い爆発的な力が全身から溢れ出した。

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