夜道
抜け出して夜道を一人、ぶらり
何か探しに行く今夜、けれど
誰のものでもない満月に、ちょっと気を取られて
道に迷ってしまったらしい、なんて悪くないな
星を眺めるなんて、とても似合わない
夜風をあびることも、慣れてはいない
それでも、いいじゃないか
こんな夜があったってさ
今、このときくらい、忘れさせてくれよ
昼間のざわめき、苛立ち、狭苦しい社会、などなど
生きているんだからさ、生きていくんだからさ
少しだけ現実離れしたこの時間の中くらいは
想いをめぐらせて一人、ふらり
どこか宛てどもなく歩く、静か
詩のような夜空の深みなど、わかるはずもないけど
それならそれで意味があるさと、なんてつぶやいたり
自分をいさめるなんて、出来るわけもない
誰かといさかいたくても、あてがあるはずもない
それなら、いいじゃないか
ひとりごとでも呟けば
今、このときこそ、思い出させてくれよ
流された日々と、はかなさ、いたはずの人たち、などなど
生きてきたんだからさ、生かされてきたからさ
あたかも夢の続きのようなこの時間の中くらいは
今、このときだから、話をさせてくれよ
誰かが聞いていなくとも、夜風にさらわれて、飛んでく
きっと届いてくれよ、きっと届けてくれよ
いつか描いた未来と違うこの時間の中くらいは
(-simplex.269g.net-、未発表、2017年6月22日)